今年は、瞬く間に梅雨の時期が過ぎ、突如として夏本番が訪れてしまいました。心待ちにしてきた夏の味覚と夏休みを楽しみながら、猛暑の時期を涼しく乗り切りたいものです。今回は、ソニーが発売する“着るエアコン”の最新モデル「REON POCKET PRO」(レオンポケット プロ)を紹介します。シリーズのフラグシップであるPROが、より強力な冷感が得られるようになった理由を、本機の開発者に聞きました。

今回の取材に協力していただいたのは、REON POCKETシリーズの生みの親でありソニーサーモテクノロジー代表取締役の伊藤健二氏、REON POCEKTのデザインを担当するソニーグループ クリエイティブセンターの八木橋達也氏と横山寛明氏です。

  • 左端は、ソニーサーモテクノロジーの伊藤健二氏。もとはソニーのカメラ製品の設計に関わるエンジニアとして活躍してきました。最新モデルのREON POCKET PROも、筐体の設計、内部の部品配置などを手がけています。右端がソニーグループ クリエイティブセンターの八木橋達也氏、中央は同社のデザイナー横山寛明氏

パワフルな冷却効果が長持ちする「PRO」が誕生

はじめに、REON POCKET PROを紹介します。本機は、2020年にソニーが発売したウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET」シリーズの最新モデルであり、初めてPROの名前を冠したフラグシップです。

  • 最上位モデルの「REON POCKET PRO」。REON POCKETストアでは27,500円から販売中です

身に着けると冷感が得られるウェアラブルデバイスであることを分かりやすく伝えるために、筆者もREON POCKETのことをあえて“着るエアコン”と表現することもありますが、実際にはハンディンファンのような「空冷」タイプのデバイスではありません。電圧をかけると接触面の熱を吸収する「ペルチェ」という半導体素子が本体に内蔵されています。本体外装のメタルプレートを介して、ペルチェの吸熱効果を直にユーザーの肌に伝えて冷感を得る、という仕組みがREON POCKETシリーズの基本です。

筆者は、マイナビニュースでシリーズの歴代モデルをレポートしてきました。昨年発売の「REON POCKET 5」は好評につき、2025年も販売を継続しています。

  • 2024年に登場した「REON POCKET 5」

REON POCKET PROは、シリーズの従来モデルに比べてクーリング効果、装着感、バッテリーの持続時間などが大きく進化しています。

冷温パネルの面積が約2倍に拡大しました。本体のサイズとデザインを変えて、DUALサーモモジュールという2枚の独立したペルチェ素子を組み込む構造としています。冷感モード時には、2枚のペルチェ素子の動作に強弱の変化を付けて、交互に動かすことで“冷たさ慣れ”を防ぐ工夫も盛り込まれました。

  • 本体に内蔵するふたつのペルチェ素子で効率よく冷感効果を生み出す「DUALサーモモジュール」を採用しました

ペルチェ素子に電圧をかけ続けると、素子が発する熱によって本体の内部に熱がこもってきます。この熱を散らすために、REON POCKETシリーズは本体に放熱ファンを組み込んでいます。最新モデルのPROは、風量が従来モデルの2倍出せるファンとヒートシンクなど内部の放熱機構にも改良を加えています。2枚のペルチェ素子を効率よく冷やすことで、冷感効果も長続きします。大型のファンなのに通常の動作音はとても静かです。

  • 左がREON POCKET 5、右がREON POCKET PROの空冷ファン。PROでは、より大きく静かなファンを採用しています

REON POCKET PROは、内蔵バッテリーで動かせるウェアラブルデバイスです。マニュアルモードの際、冷感モードのレベルがマニュアルでは全5段階から選択できるのですが、弱冷感モードの「レベル1」では従来モデルのおよそ2倍となる約34時間の連続動作が可能です。「レベル5」でも約1.5時間長く持ちます。

冷感効果を高める「くの字」のデザイン

最新モデルのREON POCKET PROは、新しいDUALサーモモジュールと大型のバッテリーパックを搭載しています。従来のREON POCKETよりも中のパーツが大きくなることから、伊藤氏と横山氏は「できるだけ本体を小さくすることに腐心した」と口を揃えながら語ります。

  • ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター インキュベーションデザイン部門 スタジオ3 チーム 4 デザイナーの横山寛明氏。REON POCKET PROのプロダクトデザインを担当した横山氏は、4Kビデオカメラ「FDR-AX100」、ミラーレスカメラ「α7C II」「α7CR」、ハイレゾ対応ウォークマン「NW-WM1」シリーズなど、数々のソニー製品のプロダクトデザインを手がけてきました

丸みを帯びたプロダクトデザインにすると、内部に不要な空間が生まれやすいため、PROは直線と平面を活かしたストレートな印象のデザインとして、限りある内部のスペースに美しく各部品をレイアウトしています。

本体は、特徴的な「くの字」形状を採用しています。REON POCKETは、冷感・温感を得るためのパネルを首もとの肌に直接当てて使うデバイスです。パネルを肌により密着させた方が冷たさも効率よく伝わることから、身体に接する背面のパネル部分は極限まで横幅を狭くして、背骨のラインに沿うデザインを意識したと横山氏は振り返ります。伊藤氏がPROのモックアップ(模型・サンプル)を用意して、何人もの有志の協力を得て集めた装着データをもとに、最適な形状をブラッシュアップしてきました。横山氏と一緒に3Dプリンターによる試作を何度も繰り返しながら、可能な限り無駄を削ぎ落とすデザインを突き詰めたそうです。

  • 首もとから背中の中心線にベストフィットする「くの字」のデザインを採用しています

  • 背面パネル部は横幅を可能な限り細くして、背中の中心線のくぼみにフィットする形状を追求しました

冷却効果アップの秘訣は「正しく装着すること」

REON POCKET PROの冷感効果を最大化するために大事なポイントのひとつは、専用ネックバンドを使ってデバイスを首もとの正しい位置に装着すること。柔軟に曲がるバンドの形状を丁寧に整えると、デバイスが首もとをしっかりと捉えながら最大の冷感効果を発揮します。

ソニーサーモテクノロジーでは、専用ネックバンドを使ったREON POCKET PROの正しい装着方法のビデオガイダンスをYouTubeで紹介しています。購入した方は、使用を始める前に参照することをおすすめします。

【動画】REON POCKET PROの正しい装着方法のビデオガイダンス

REON POCKET PROの専用ネックバンドは、従来のREON POCKETシリーズよりも太くなり、フレキシブルに動かせます。シリコン製の被覆による柔らかな肌触りも実現しています。さらに先端キャップを設けて、鎖骨のあたりに先端が長時間触れた時の痛みを軽減します。「従来モデルよりも質量が増えたPROを、長時間快適に装着できるようにすべての箇所に工夫を凝らした」のだと八木橋氏が説明しています。横山氏も「ネックバンドを使って首もとに装着した際、上下左右のバランスが最も安定するように内部のパーツのレイアウトについて、伊藤氏と一緒に検討を重ねてきた」といいます。

  • しなやかに曲がるネックバンド。太めのバンドとしたことで装着時の安定感がさらに増しています

目立ちにくいデザインがPROの冷感効果も高めている

先述した通り、REON POCKETシリーズはペルチェ素子の熱を効率よく逃がすため、内部にファンを持っています。本体の下部に吸気、上部に排気のためのスリットを設けて、ユーザーがデバイスの上から衣服を着た時に塞がれないように場所や形状を工夫しています。なお、REON POCKETの冷感効果を高めるためには、パッケージに同梱する専用のエアフローパーツを活用して、排気口から効率よく熱を逃がすことが大切です。特に、襟付きのシャツやジャケットを上から羽織る時には、2種類あるエアフローパーツからロングの方を選ぶと効果的です。

ユーザーが衣服を着た状態で、REON POCKET PROの本体左右に「空気の通り道」になる空間が生まれるように、側面はシャープなデザインにしています。REON POCKET 3までは、本体が薄くフラットなデザインでした。八木橋氏は、REON POCKET 4をデザインする際に伊藤氏と検討を重ねて、より側面のエッジを立たせたデザインに変更したところ、吸気のための「空気の通り道」ができたと振り返ります。この時に生まれた知見が、のちに商品化されたREON POCKETシリーズにも活きています。

  • ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター インキュベーションデザイン部門 スタジオ3 チーム 4 統括課長の八木橋達也氏。ソニーのオーディオ製品を担当したのち、スマートフォン「Xperia 1」シリーズ、ポータブルプロジェクター「Xperia Touch」、ソニーネットワークコミュニケーションズのインターネット通信サービス「NURO光」など、さまざまなプロダクトをデザインワークの面からプロデュースしてきました。REON POCKETシリーズは、2020年に誕生した第1号機からかかわっています

  • 本体側面をシャープなデザインとして、上から覆い重なる衣服との間に「空気の通り道」になるすき間を作り出しています

本体側面をシャープなデザインにすると、装着時に「服の突っ張り」が解消され、背中にデバイスを身に着けていることが周囲から目立ちにくくなる効果もあるそうです。横山氏にREON POCKET PROのデザインについて、さらに詳しい説明を聞きました。

REON POCKET PROを装着していることが目立ちにくくなるように、本体の色は少しグレーがかったホワイトに、ネックバンドはそれよりも濃いめのグレーを選んでいます。横山氏は「空に浮かぶ雲の色」に着想を得て、合わせる衣服の色と自然に調和するバランスの良い色を選んだと話します。

  • 白いシャツの下にREON POCKET PROを装着した状態で目立ちにくい色合いにしています

本体はホワイトに近い色合いにすることで、熱を吸収しにくくしています。さらに表側のパネルには、細かな縞模様のテクスチャーを加えています。「濃色の服は夏の直射日光にさらされると表面の温度が50度前後まで高くなることがあります。REON POCKETの本体と衣服が直接触れる面積を可能な限り小さくして、熱が伝わりにくくするためにテクスチャーを加えた」のだと、伊藤氏が説明を補足しています。

REON POCKETシリーズは、専用のモバイルアプリ「REON POCKET」による設定・操作に対応しています。PROは本体の側面に配置するボタンからも、電源のオン・オフやモード変更など大半の操作がダイレクトに行えます。横山氏は「本体のボタンをブラインドタッチで操作しやすいようにそれぞれの形を変えた」と語ります。

  • 本体に搭載するボタンから電源やモード切替の操作が直接できます

暑い夏を涼しく過ごすために「本質」を徹底追求した

「ソニーのプロダクトやサービスが先駆けになるため、私たちはいつも原型を創ることを意識している」のだと八木橋氏は語ります。ソニーグループのクリエイティブセンターでは「原型を創る」という思想から、あらゆるプロダクトやサービスのデザインに取り組んできました。先駆的に「他がやらないことをやる」という基本姿勢もまた、ソニーが創業した当時から受け継がれています。

REON POCKETは、商品の企画そのものが「原型」に近かったと八木橋氏は振り返ります。新製品のPROでは、製品の構成が大きく変わったことから「新しい原型」をつくることを意識してきたそうです。

ソニーでは「課題に誠実に向き合い、精錬を重ね本質をデザインする」という哲学を掲げています。本質とは「ユーザーから必要とされる機能を突き詰めた時、必然的に生まれる美しさ」でもあると、八木橋氏は言葉の意味を説いています。筆者はひとりのユーザーとして、REON POCKETの本質とは心地よい冷感と温感が得られることだと考えます。今回、開発者である各氏の話を聞いて、筆者はREON POCKETシリーズがユーザーの健康と豊かな生活を真摯に追求したウェアラブルデバイスであることを改めて実感しました。

REON POCKETシリーズはソニーストア、または全国の家電量販店などに実機が展示されています。REON POCKET PROは少しサイズが大きいので、首がやや細い方には十分にパワフルな冷感効果が得られるREON POCKET 5もおすすめです。自分の体格に最もフィットするREON POCKETを見つけてください。