1839年に初めて市販され、今日まで急速な進化を遂げたカメラ。その進化の途中で、さまざまな革新的な技術やユニークなデザイン、驚くべきアイデアなどが生まれ、生活を豊かにする文化的なツール、あるいはデバイスとしての地位を確立するに至りました。東京・半蔵門の日本カメラ博物館で、特に“スゴイ”と思わせる国内外のカメラを集めて一堂に展示した特別展「なにがスゴイのこのカメラ」が7月1日から開かれ、注目を集めています。

  • 「なにがスゴイのこのカメラ」展示会場内の様子。国内外のすごいカメラを身近に見ることが可能です。隣の常設展会場も見応えあるもので、カメラ好きにはたまらない展示となっています

展示では、14もの“スゴイ”が展示されています。「複合製品がすごい」のコーナーでは、カメラとラジオを組み合わせた「ラメラ」、携帯電話とデジタルカメラを組み合わせた「シャープ J-SH04」などを展示。「JCII PASSEDがすごい」では、日本写真機検査協会(Japan Camera Inspection Institute =JCII)が日本製カメラの輸出検査をし、合格した製品に「PASSED」と書かれたシールを貼り付けたもののほか、日本製と偽りその模倣シールを貼り付けた海外製カメラも展示されており、興味深いところです。「先端技術がすごい」では、世界初の電子スチルビデオカメラ「ソニー マビカ」なども展示しています。

  • プレスプレビューで特別展の開催趣旨などを説明する日本カメラ博物館・谷野啓館長。本展は国内外のスゴイと思われるカメラを一堂に展示したもので、カメラの魅力を掘り下げてみたとのこと

  • ティンタイプカメラ。1900年ごろにオランダで製造されたカメラ。メーカー名は不明。乳剤を塗布した円形の金属板が装填されており、撮影後その金属板を下部の薬品タンクに落とすと、その場で現像し画像を得ることができました。「複合製品がすごい」のコーナーに展示

  • 「コダック アンサンブル」。1929年に発売された127フィルムを使用するフォールディングカメラ。口紅などが入った化粧ケースに入れて持ち運べるようになっていました。淡いピンクのカラーがオシャレ。「複合製品がすごい」のコーナーに展示

  • 「トム・サム・カメラ・ラジオ」。127フィルムを使用する北米製のカメラ。その名のとおりラジオを内蔵しており、駆動には小型の真空管を使用していました。カメラ上部には大きな反射式ファインダーを搭載。「複合製品がすごい」のコーナーに展示

  • 「シャープ J-SH04」。市販初のカメラ付き携帯として2000年にシャープから発売されました。キャリアはJ-PHONE。画素数は11万画素と今の常識からすれば驚くほど少ないですが、それでも当時は画期的で、これ以降携帯にカメラ機能は必須となりました。「複合製品がすごい」のコーナーに展示

  • カメラの好きな方にはお馴染み「ラメラ」。トランジスタラジオに小型のカメラを仕組んだもので、16mmフィルムを使用しました。製造は、コーワの前身である興和光器製作所で、1959年の製造となります。「複合製品がすごい」のコーナーに展示

  • 「紅旗 20」。1971年に中国の上海照相機工厰で製造されたレンジファインダー機。交換レンズは35mmF1.4、50mmF1.4、90mmF2の3本を用意。「ライカM4」を模したとされるボディ以上に、レンズ鏡筒のつくりはまんまライカと同じです。「海外のカメラもすごい」のコーナーに展示されています

  • 「コダック プロフェッショナル デジタルスチルカメラシステム DCS100」。1991年にコダックが製造した世界初のレンズ交換式デジタルカメラ。ベースとなったカメラはニコンF3。130万画素のCCDを搭載し、撮影後、画像データはケーブルで接続された電送装置兼用のHDに記録されました。「先端技術がすごい」のコーナーに展示

  • 「ニコンF3」。F3は、クルマをはじめ多くの工業デザインを手掛けるイタリアのインダストリアルデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がデザインしたカメラ。展示された個体には、白い油性のペンで同氏のサインが入っています。「かっこよくてすごい<デザイナー>」のコーナーに展示

  • 「ズノー」。ズノーの外装は泣く子も黙る日本のデザイン会社、GKデザインによるもの。同社のデザインはヤマハの楽器やオーディオ、ヤマハ発動機のオートバイ、キッコーマンの醤油瓶、JR東日本の車両など多岐に渡ります。「かっこよくてすごい<デザイナー>」のコーナーに展示

  • 「キヤノン T90」。T90はドイツのインダストリアルデザイナー、ルイジ・コラーニのデザインをベースにした外装を持つカメラ。曲線と曲面によるデザインテイストは現在まで続き、最新のEOS Rシステムにも強く影響しています。「かっこよくてすごい<デザイナー>」のコーナーに展示

  • アサヒフレックス IIB、ミランダT、ズノー、ニコンF。日本機械学会による機械遺産に選ばれた4モデル。機械遺産は同学会の創立110周年を記念して始まったもので、歴史に残る機械技術関連遺産を保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的としたものです。「各種機関に認定されたすごいカメラ」コーナーに展示

  • 時事通信社で使用されたデジタルカメラ黎明期のモデル。1990年代中頃に時事通信社で使用されたデジタル一眼レフ。左手前より時計回りに、ニコンE2S(140万画素/1996年)、キヤノンEOS D2000(200万画素/1998年)、コダックNC2000e AP(130万画素/1996年)、キヤノンEOS DCS 3c(1995年/130万画素)。「仕事に従事したすごいカメラ」のコーナーにて

  • 「オリンパス 35 EF(不正商標)」。日本製と偽り海外で売られていたコンパクトカメラ。もちろんオリンパス製ではなく、JCII PASSEDのシールも偽物。南米で発見されたものとのこと。「JCII PASSEDがすごい」コーナーに展示されています

  • ソニー マビカ試作機「JW-C7」。1982年にソニーと朝日新聞社が共同で開発したモノクロ専用のスチルビデオカメラ。レンズの交換を可能にしていました。どことなくフルサイズミラーレスのα7に似ています。「市販されていないけれどすごい<試作機>」コーナーに展示

今回の「なにがスゴイのこのカメラ」は、9月21日(日)までの開催となります。日本カメラ博物館ではこの特別展のほか、常設展でも多くの国内外のカメラが展示されているほか、ベトナム戦争を写真で記録しピュリッツァー賞を受賞した報道写真家・沢田教一氏に関する展示もあります。同博物館の隣には、同じJCIIの運営するギャラリー(JCIIフォトサロン)もありますので、この機会に訪れてみることをおすすめします。

  • 日本カメラ博物館の入り口。同博物館の入るビルには、出版社の宝島社も入っており、それを目印とするとよいでしょう

日本カメラ博物館特別展「なにがスゴイのこのカメラ」

  • 開催期間:2025年7月1日(火)~9月21日(日)
  • 開館時間:10~17時
  • 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
  • 入場料:一般300円、中学生以下無料
  • 所在地:東京都千代田区一番町25 JCII一番町ビル地下1階