トランプ米大統領の一族企業Trump Organizationが発表したスマートフォンのWebページから「米国製造」の記述や「Made in the USA」のバナーが削除された。

同社は6月16日、携帯電話事業「Trump Mobile」の立ち上げを発表した。あわせて、ゴールドカラーのスマートフォン「T1 Phone」も発表し、「米国内で誇りを持って設計・製造される」と“メイド・イン・USA”を強調していた。

ところが、ここ数日に行われたWebページの更新により、「米国製造」という表現が姿を消し、「Premium Performance. Proudly American(プレミアムパフォーマンス。誇り高きアメリカン)」「American-Proud Design(アメリカの誇るデザイン)」「すべてのデバイスにアメリカ人の手が加わっている」など、アメリカ的価値観を打ち出す曖昧な表現に差し替えられた。

発表当初の「T1 Phone」は、6.8インチ有機ELディスプレイ(最大120Hzリフレッシュレート)、12GB RAM、256GBストレージ、50MPメインカメラ/16MPセルフィカメラを搭載し、米国のスマートフォン市場において価格競争力のある499ドルに設定されていた。

しかし、それを米国内で製造して提供することに対して懐疑的な見方が広がった。トランプ大統領はAppleに対し、iPhoneの米国内製造を求めてきたが、労働コスト、技術力の差、設備投資の必要性といった要因に加え、現行のiPhoneの価格競争力は中国を中心としたグローバルなサプライチェーンによって支えられている。これらをすべて米国内で再現するのは困難であるからだ。

例えば、ユーザーのプライバシーやセキュリティを重視するスマートフォンを提供している米Purismは、自社工場での基板実装および最終組み立て、供給網の完全監査で「Made in USA」を実現している。同社の「Liberty Phone」は、4GB RAMおよび128GBストレージを備え、価格は1,999ドルである。なお、SoC(オランダのNXP Semiconductors製)やディスプレイ、バッテリー、カメラなどは米国外の部品を使用している。

T1 Phoneについては発表後に、中国のWingtech Technologyが製造する「REVVL 7 Pro 5G」を、Trump Organization向けにカスタマイズし、ゴールドの外装に変更して再パッケージしたモデルである可能性が指摘された。

Webページでは「米国製造」に加えて、ディスプレイが6.25インチに変更され、メモリに関する情報が削除されるなど、仕様面でも変更が加えられており、サプライヤー変更の可能性も示唆されている。また、Trump Organizationを経営するエリック・トランプ氏は、Financial Timesの取材に対し、米国製造について「eventually(いずれ)」と述べていた。