シャープは2月18日、法人向けの議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」を3月中旬に発売すると発表した。本体価格はオープンで、導入台数やオプションの有無、5年間の保守/サポートを利用するかどうかなどで変わる。シャープでは、1台あたり月額4万円前後での運用を想定している。

  • eAssistant Minutesの本体とオーディオアダプター

    「eAssistant Minutes」の本体(左)とオーディオアダプター(右)

エッジAIを使用してクラウドを使わずに議事録の文字起こしや要約を実現

会議の文字起こしや要約を自動化する議事録作成ソリューションでは、クラウドAIを活用したサービスが多い。しかし、機密情報を扱う会議の内容をクラウドにアップロードすることにセキュリティ上の不安を感じて導入をためらうケースも少なくない。月間の利用時間やデータ容量などの制限が気になって使いづらかったり、ライセンスやグループ設定などの初期設定が手間だったり、企業ユースでの導入に踏み切れない事情はさまざまだ。

シャープの「eAssistant Minutes」は、こうしたクラウド型の議事録作成支援ソリューションの抱える課題に解決策を示す製品だ。

  • 「eAssistant Minutes」の利用イメージ

    「eAssistant Minutes」の利用イメージ。ホストのPCや音声デバイスはパッケージに含まれない

「eAssistant Minutes」はシャープ独自のエッジAI技術「CE-LLM(Communication-Edge - Language Model)」を搭載した専用端末と専用アプリケーションがセットになったソリューションだ。すべての処理を本体内のエッジAIで行うため、本体をネットに直接つなぐことなく使えるところがポイントだ。

「eAssistant Minutes」の本体は会議室に据え置きで使うことを想定しており、会議を始めるときに本体をホストとなるPCと、オーディオアダプター経由でUSB接続して利用する。ホストPCにはコントロールのための専用アプリケーションをあらかじめインストールしておく。この専用アプリケーションの名称も「eAssistant Minutes」となる。

会議中はPC上でリアルタイムの文字起こしと自動要約が表示される。会議参加者はホストが発行するユニークなURLに個別のPCからアクセスすることで、Webブラウザ上でホストと同じ内容の議事録と自動要約を閲覧できる。個々のPCに議事録ビューアをインストールする必要はなく、オンライン会議ツールとの併用も可能だ。

  • 利用画面

    議事録閲覧URLと閲覧コードを発行して会議の参加者にメールやメッセンジャーで共有する

話者は声紋登録をしなくても自動識別されるため、会議に一度きりのゲストが参加していてもスムーズに利用可能だ。発言は話者ごとに分離してテキスト表示され、話者名を登録すると自動的に話者名と発言が紐づいた表示になる。センテンスごとに音声データをピンポイントで再生する機能も備えており、議事録のエクスポートはPDF/DOC(Word)/TXT形式に対応する。

  • 議事録のエクスポート

    議事録のエクスポートはホストが行う

ホストがコントロールアプリを終了すると、議事録や音声データはホストのPCのみに残され、「eAssistant Minutes」の本体からは自動的に消去される。後から誰かが本体に接続しても会議のデータがそこからもれる心配はない。

本体は「Dynabook」のデスクトップPCを利用しており、本体サイズはW100×D310×H325mm、本体の重さは約5.2kg。インタフェースとして、USB3.2(Gen2) Type-A×2、USB2.0 Type-A×2、LAN×1を備える。NVIDIAのGPUを採用。OSにはWindows 11を利用しており、OS用にSSDを搭載。SSDやメモリーの記憶容量などスペックの詳細は非公開だ。

  • 本体背面

    本体背面。LANコネクタはソフトウェアアップデートのときだけ利用する

  • オーディオアダプター

    オーディオアダプター

商品パッケージとして、本体のほか、双方向音声伝達オーディオアダプター、導入時設置/設定サービス、本体5年保証、ヘルプデスク/オンサイトハード保守(5年)、ソフトウェアアップデート(5年)などのオプションが用意されている。

ショールーム等でのデモのほか、トライアル利用にも対応予定

発表会のデモンストレーションでは、男女の社員が業務の報告と相談をするシーンを演じ、話者を識別してリアルタイムで文字起こしする様子や、会話がある程度進んだところで自動要約する様子を見ることができた。

  • デモンストレーションの様子

    デモンストレーションの様子。リアルタイムで発言が画面上に表示されていく

  • 聞き直したい場所を再生するところ

    議事録上で聞き直したい場所を直接再生できる

デモでは演者が交互に発言していたが、実際の会議では言い淀んだり、訛ったり、発言がかぶったりするものだ。そのあたりをどの程度きちんと識別して文字に起こせるのかが少し気になった。

エッジAIは、クラウド上のAIと比べるとリリースから時間がたつほどAIの学習能力に差がついてしまうが、「eAssistant Minutes」ではソフトウェアアップデートによって学習能力を高めていける。アップデート時は端末に備え付けのLANコネクタを使用してインターネットに接続することになる。

担当者によれば今後は識別の正確さを向上させるため、企業で使われる専門用語などを登録できるようにアップデートする計画があるという。また、ショールームやオンラインでのデモンストレーションも整備していくほか、二週間ほどのトライアル利用にも対応するとのことだ。