意外と知られていない新カテゴリー「Chromebook Plus」とは?
ノートPCやタブレットの選択肢として候補に挙げられる機会も増えているのがGoogleの「Chromebook」です。厳密には「ChromeOSを搭載したノートPC」をChromebookと呼ぶのですが、そのChromebookには更なるバリエーションとして「Chromebook Plus」が追加されていることは意外とまだ知られていません。
ChromebookとChromebook Plusは何が違うのか。ざっくり言えばChromebook Plusの方が高性能です。
従来のChromebookにも高性能な製品は存在していますが、Chromebook Plusでは
- CPU:Intel Core i3(第12世代以降)、またはAMD Ryzen 3 7000シリーズ以降
- メモリ:8GB以上
- ストレージ:128GB以上
- ディスプレイ:フルHD(1,920×1,080ピクセル)以上
- Webカメラ:ノイズキャンセル機能付き・1080p解像度以上
と、システム要件がChromeOSが動作するPCとしては高く設定されています。
ブラウジングやドキュメント作成であれば従来のChromebookでも性能は十分なのですが、ビデオ会議などビジネスシーンで利用するツールが増えてくると動作が緩慢に感じられるシーンも出てきました。
またオンデバイスでAIを活用する機能強化も積極的に行われていくことから、現在の市場ニーズや今後提供する新機能を満足に利用できるよう、高性能なモデルとして登場したのが「Chromebook Plus」です。
今回はChromebook Plusとして市場に投入されている中から、Acerの「Chromebook Plus 514(型番:CB514-4HT)」をお借りし、使い心地や注目のAI機能のレビューをお送りします。
Chromebook Plus 514(型番:CB514-4HT)の外観をチェック
まずは今回お借りしたChromebook Plus 514(型番:CB514-4HT)の基本仕様や外観をチェックしていきます。
その仕様ですが、CPUにIntel Core i3-N305(8コア・8スレッド、定格クロック1.8GHz)、メインメモリ容量は8GB、SSDは128GBで、ディスプレイサイズは約14インチ、解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)と、Chromebook Plusの要件を満たしています。
元々軽量なChromeOSだけあって、Chromebook Plusの要件を満たす性能ともなると各種操作にモタつきや引っかかりを感じることはなく、かなり動作は軽快です。
本体カラーのラインナップはシルバー1色のみ。シルバーといっても色味は暗めで、ガンメタリック寄りの金属感のあるカラーで高級感があります。
天板はヘアラインパターンが施されています。Chromebook Plusのロゴも印字されていますがグレーで目立ちづらく、Chromebookに多いGoogle Chromeのカラフルなロゴもないため、ボディカラーも含めかなり落ち着きのある見た目にまとまっています。
本体左右には拡張ポートが多数備わっており、左右どちらにもUSB Type-CとUSB Type-Aがそれぞれ1つずつ設けられているため、ACアダプタなど接続の取り回しがしやすい点は好印象です。
また本体左側にはmicroSDカードスロットと3.5mmステレオイヤホンマイク端子もあります。
キーボード配列はJIS配列です。Windowsなど通常のPCと異なるのは最上段のファンクションキーで、ここはChromebookの各種機能キーが割り当てられています。
またキーボード右側はキーの感覚が狭い部分もあるため、ファンクションキーがないことも含め入力には少しの慣れが必要かもしれません。
キーストロークも深く打鍵感は良好なので、慣れさえすれば快適にGoogleドキュメントで長文を作成するといったことも苦にはならなそうです。
本体重量は約1.43kg。実測では1.44kgと約14インチのディスプレイを搭載するノートPCとしては少し重たい点は気になります。
付属のACアダプタの一般的なノートPC向けの角形タイプです。充電端子側はUSB Type-Cで出力も最大65Wです。持ち運びの際はよりコンパクトなサードパーティ製のACアダプタ・USB Type-Cケーブルを組み合わせることも可能です。
Chromebook Plusで利用できるAI機能を試す
Chromebook PlusではChromebookとの差別化として、Googleが提供する様々なAI機能を利用することができます。
特にChromebook PlusではGoogleのAI「Gemini」を活用し、文字起こしや文書の生成を行えるようになっているのが従来のChromebookからの進化点です。
まず最新のAI機能である「読解サポート」を利用してみました。まだ日本語には対応していないため英語でしか利用できない機能ですが、WebページやPDFなど文章を読み取り、要約を生成してくれる機能です。
実際に使ってみると要約の制度は高く、まだ英語に限定されるものの「母国語でない言語で、求めている情報がページにあるかどうか」を要約から判断できる点では、日本語に対応しない現状であっても、利便性は高いと感じられました。
もっといえば外国語から要約をまとめ、それをさらに指定した言語に翻訳などもしてくれるようになると。欲しい情報を広いネットの海や、外国語しか載っていないマニュアルから即座に見つけることができるようになりそうです。
他の新しいAI機能としては「文書作成サポート」があります。チャットやメールなど、文章入力時にプロンプト入力が立ち上がり、そこで「こんな文章がほしい」と入力すると、要望に沿った文章を生成してくれる機能です。
今回はメール作成画面で「忘年会の招待分を作って」と入力してみましたが、違和感のない文章をあっという間に生成してくれました。
すでに似たような機能はその他の生成AIでも容易に行うことができますが、生成された文章のプレビューや、それを実際のメール画面に挿入するまでの操作が容易な点は、Chromebook Plusならではといえます。
また写真から余計なものを自然に削除することができる「消しゴムマジック」もAI機能のひとつですが、これはPlusではないChromebookでも利用することができます。
そこでChromebook PlusだけのAIを活用した画像編集機能である「編集マジック」を試しました。編集マジックでは写真内の指定した被写体の場所や大きさを変更したり、空模様を容易に曇天から晴天に変えるといった加工を行うことができます。
今回はビルの大きさを変え、位置も変える編集と、曇天から晴天に変える編集を行ってみましたが、編集結果はパッと見で違和感は少なく、ビジネスシーンであれば丁度いいイメージカットが見つからないときに「それっぽい写真」を作って利用するといいかもしれません。
高性能とAIの組み合わせで「最前線で使える1台に進化」
今回試用したAcerのChromebook Plus 514(型番:CB514-4HT)ですが、Chromebook Plusの要件として基本性能が大きく向上した恩恵は大きいと感じました。
筆者が普段利用しているWindowsのノートPCで取材時や原稿を執筆するときと同じだけのウインドウやアプリケーションを開いても動作がもたつかなかった点の満足度は高く、用途がブラウジングやYouTubeでの動画視聴、仕事や学校の課題でドキュメントやスライド作成も行いたいといったChromebookでも行える作業の範疇であれば、Chromeboook Plusなら性能・動作に多くの人は不満を感じないでしょうから、十分にオススメすることができそうです。
基本性能の引き上げと同時に筐体の仕上げも良くなり、USBポートの数なども必要十分である点も、従来のChromebookよりも価格が高くなったとはいえ、高騰化するWindowsやmacOSのノートPCよりも安価で手を出しやすく高く評価できます。
また売りであるAI機能はまだ日本語に対応しないものもありますが、文章生成や文字起こしのように今まで頭も時間も使う必要があった作業を楽にしてくれますし、シームレスにメールやドキュメントに生成した文章を流し込める点も、タイムパフォーマンスを重視する人には魅力的な機能といえます。
現時点でもAI機能はかなり快適に動作し、Chromebook Plusの引き上げられたハードウェア要件を使い切っている感もないため、さらなる機能拡張が図られた際にも不満なく使えそうです。Chromebook Plusに興味がある人は待ちではなく「買い」と判断して選んでもいいでしょう。