ボーズが、人気シリーズ「QuietComfort」(クアイアット・コンフォート)に新しいノイズキャンセリング搭載ワイヤレスイヤホン「Bose QuietComfort Earbuds」(第2世代)を加え、10月10日に発売します。コンパクトな本体に強力な消音機能や、独自のハンズフリー音声操作機能を加えた最新機種の実機レビューをお届けします。

  • ボーズの新しい完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds」(第2世代)

同名だけど内容一新! 新生QuietComfort Earbudsの特徴

ボーズは2020年10月、新機種と同名のQuietComfort Earbudsを発売しています。当時、一度鳴りを潜めていたQuietComfortシリーズが、左右独立型ワイヤレスイヤホンとして久しぶりに復活を遂げたことで話題をさらいました。

新旧製品を並べてみると、新しいQuietComfort Earbudsはイヤホン本体、ケースともにかなりコンパクトになったことがわかります。音質も比べてみると、前世代のフラグシップ製品だったQuietComfort Earbudsよりも、いま価格が3万円を切るスタンダードクラスの製品として生まれ変わったQuietComfort Earbudsのほうが低音の肉付きがよく、起伏にも富んだチューニングになっていると感じます。

※編注:2020年発売の初代QuietComfort Earbudsは、2023年に販売終了している。

  • 左が新しい「QuietComfort Earbuds」(第2世代)、右が初代「QuietComfort Earbuds」。イヤホンと充電ケースがかなりコンパクトになった

現在、ボーズのワイヤレスイヤホンのフラグシップとして頂点に立つのは「Bose QuietComfort Ultra Earbuds」(2023年10月発売)です。音質と消音性能はともに文句なしのプレミアムグレードですが、価格もまた39,600円とプレミアムです。

新しい第2世代のQuietComfort Earbudsはボーズのサウンドがより気軽に楽しめるよう、直販サイトで26,400円という価格設定を実現しています。まだ高価だと感じられるかもしれませんが、新しいモバイルアプリ「Bose QC Earbuds」に追加されたいくつかのユニークな機能など見どころは充実しています。

  • モバイルアプリ「Bose QC Earbuds」を一新。QuietComfort Earbudsの各種設定に対応する

ボーズ独自の音声操作「Hey Headphones」。日本語対応してほしい

注目したい新機能のひとつがボーズ独自の音声コントロールです。イヤホンを装着した状態で「Hey Headphones(ヘイ・ヘッドフォンズ)」と話しかけると音声コントロールモードに切り替わります。

ボーズのワイヤレスヘッドホン・イヤホンにはGoogleアシスタント、Amazon Alexaと連携してペアリングしたスマホを音声で操作できる製品がありました。上位のQuietComfort Ultra Earbudsはイヤホンにいったんタッチしてから音声コントロールを呼び出す仕様です。それに対して新しいQuietComfort Earbudsは、Hey Headphonesと発話した後に、続けて「play」「pause」「next」「volume up」のように話しかけると、イヤホンによる音楽再生や音声通話の基本的な操作がハンズフリーで行えるのが特徴です。

ボイスコントロール操作からできることはシンプルにまとまっています。ところが「Hey, Headphones」以下の音声コマンド入力が、今のところ英語にしか対応していません。フレーズを覚えてしまえば特に問題はないのですが、いずれは日本語による操作に対応してほしいです。

  • 新設されたボイスコントロール機能。「Hey Headphones」と発話したあとに、続けて英語で音声コマンドを入力します。ユーザーの声の認識精度を高めるためのボイスIDの機能もある

なお、スマホのデジタルアシスタントを呼び出す際には「Hey Headphones, Assistant」と発話します。イヤホンのリモコンボタンからデジタルアシスタントを呼び出す場合と同じ、つまり待機状態になります。以降、たとえばiPhoneの場合はSiriが起動するので、音声入力の方法は言語設定を含めてスマホ側に準じます。

音声コマンドに対する感度については使用環境によっても変わるはずですが、筆者は少しにぎやかなカフェや屋外で試したところ、やや大きめな声で「Hey Headphones」と発話しないと反応しないことがありました。周囲に人がいる場所での音声入力はハードルが高めです。

  • ペアリングしたスマホのカメラのシャッターをイヤホンから音声で操作するリモートシャッターの機能もある。スマホのデジタルアシスタントは、いったん「Hey Headphones, Assistant」と発話して呼び出してから音声で操作する

新生QC Earbudsと上位機Ultraとの違いをチェック

ボイスコントロールのほかにも、QuietComfort Earbudsはアプリから低遅延オーディオモードをオンにするとゲーム音声などが快適に聴けます。上位機のUltraは同じaptX Adaptiveコーデックに対応するスマホやデバイスに限定されますが、低遅延オーディオモードが使えます。

上位のUltraにはボーズ独自の「イマーシブオーディオ」の機能があります。またノイズキャンセリング効果の強さを11段階から選び、ユーザー独自の設定を保存できます。

新しいQuietComfort Earbudsには強く効くノイキャンしかないため、使用環境に合わせた消音効果をカスタマイズができる上位機はやはり便利だと思います。

  • 右が上位機種のBose QuietComfort Ultra Earbuds。安定した装着感も魅力

ノイズキャンセリング機能のチューニングも、上位機であるUltraのほうが洗練されていると感じます。消音効果の“網の目”がきめ細かく、あらゆるタイプのノイズをピタッと抑える精度の高さを実感します。機能をオンにして音楽を再生するとディティールが自然に浮かび上がってきます。ただ強くノイズキャンセリングをかけるのではなく、コンテンツの聞こえ方を優先しながらていねいに最適化を図っていることがわかります。

音楽再生も、Ultraは低音から中高音域までスムーズにつながる一体感が際立っています。低音の重心が低く、立体的な音場の広がりが感じられます。たとえばApple Musicなどで配信されている、幾田りらが歌う『SWEET MEMORIES』(松本隆トリビュートアルバム「風街に連れてって!」から)を聴くと、ボーカルは声の質感がきめ細かに再現され、なおかつ音像定位も力強く感じられます。バンドの楽器も音色が鮮やかです。

Ultraと比べながら聴くと、新しいQuietComfort Earbudsのチューニングはやや低音のバランスが強めに感じられました。アップテンポなロックやポップス系の楽曲と、とても相性が良いイヤホンだと思います。ちなみに、対応するBluetoothオーディオのコーデックはAAC/SBCです。

そのまま「Awareモード」に切り替えて、外音取り込みの性能も比較しました。新しいQuietComfort Earbudsの実力は、Ultraに拮抗していると思います。マイク由来のノイズっぽさがなく、クリアに周囲の環境音を聞くことができました。屋外やスポーツジムなどで、安全に“ながら聴き”が楽しめそうです。

  • イヤーチップとシリコン製のスタビリティバンドで耳に固定する

シンプルに楽しめるボーズ新イヤホン。上位機を選ぶのもアリ

QuietComfort Earbudsは、シリーズの新しいファン獲得を狙った意欲的な新製品です。安定したボーズサウンドと、QuietComfortシリーズの伝統を受け継ぐ効果の高いノイズキャンセリングを継承し、さらに多彩な機能を追加しています。とにかくコンパクトサイズでシンプルに楽しめるボーズのイヤホンを探している人は要チェックです。

ボイスコントロール機能が今のところ日本語に未対応だったり、少し荒削りな部分はこれからのソフトウェアアップデートなどにより改善される可能性がありそうです。ただ、毎日使うワイヤレスイヤホンに老舗のボーズらしい安定感の高さを求めるのであれば、QuietComfort Earbudsよりも約1.3万円ほど高価になりますが、がんばってフラグシップのQuietComfort Ultra Earbudsを手に入れて長く楽しみ尽くす、という選択もアリだと思います。まずはぜひ近くのショップなどに足を運んで、ふたつの製品を吟味してみてください。