アップルがクパティーノの本社で開催したスペシャルイベント「Glowtime」で、9月20日に発売を迎える新しいiPhone 16シリーズの4機種、Apple Watch Series 10、AirPods 4を発表しました。現地で実機を試してきた筆者が、各新製品の“買いたくなるポイント”を解説します。

  • Apple ParkのSteve Jobs Theaterで、アップルの新製品発表会「Glowtime」が開催されました

  • イベントの冒頭に登壇したティム・クックCEO。今回は、30カ国から大勢のジャーナリストやインフルエンサー、アーティストがイベントに参加しました

ゴージャスな「iPhone 16 Pro」シリーズは画面サイズが拡大

2024年のiPhoneのフラグシップ「Pro」シリーズも2機種構成です。iPhone 16 Proは6.3インチ、iPhone 16 Pro Maxは6.9インチにSuper Retina XDRディスプレイが大きくなっていますが、ディスプレイ周囲の枠(ベゼル)をより狭くすることによって、本体のサイズアップをわずかに抑えています。内部のメカニカルな構造を最適化したことで、高い放熱性能を確保しながら本体の厚さはiPhone 15 Proシリーズと同じ8.25ミリに抑えています。

  • 左が6.3インチのiPhone 16 Pro、右が6.9インチのiPhone 16 Pro Max

  • iPhone 16 Proのナチュラルチタニウム

  • 新色のデザートチタニウム

  • 左側がiPhone 16 Proのデザートチタニウム。右は筆者が持参したiPhone 15 Proのナチュラルチタニウム

カラバリは、iPhone 15 Proシリーズのブルーチタニウムと入れ替わる形でデザートチタニウムを追加。シャンパンゴールドのようなカラーが女性ウケも良さそうです。筆者は、iPhone 15 Proでナチュラルチタニウムを選んだので、iPhone 16 Proはナチュラル以外のどのチタンにしようか迷い中です。

  • いつもより多くの来場者があったためか、ハンズオンエリアは凄まじい熱気でした

iPhone 15 Proは、大きなMaxとの間に望遠カメラの望遠性能に差があり、Proは最大3倍、Pro Maxは最大5倍の光学望遠性能を持ち合わせていました。iPhone 16 Proシリーズは、どちらのモデルも望遠カメラの光学望遠倍率は最大5倍に統一されています。

画面サイズのほかに違いがあるとすれば、Pro Maxの方が内蔵するバッテリーパックの容量が大きいため、公称で「最大33時間のビデオ再生」を実現しました。iPhone 15 Pro Maxは最大29時間だったので、ふだん使いの体感的にも差が現れそうです。

iPhoneのカメラが楽しくなる「カメラコントロール」

カメラアプリに関連する新しいユーザーインターフェースとして、本体の側面に「カメラコントロール」という感圧センサーと静電容量センサーを併せ持つ新しいフラットな形のボタンが追加されました。

  • iPhone 16シリーズの4機種に共通して搭載する、カメラアプリの新しいユーザーインターフェース「カメラコントロール」。思いのほか魅力あふれる装備でした

センサーは、押し込むクリック操作と、表面を指でスワイプする操作に対応しています。クリックすると“ククッ”という触感フィードバックが返ってきます。今年アップルが発売したApple Pencil Proの「スクイーズ」の、ペンの側面をグッと押し込む操作感によく似ていると感じました。

  • 本体側面に感圧センサーと静電容量センサーを内蔵するカメラコントロールのボタンが追加されました

筆者は、iPhoneのカメラアプリのユーザーインターフェースが、とてもシンプルで直感的に操作しやすい点でとてもよくできていて、もはや新しい機能を追加する必要はないと考えいました。スペシャルイベントでカメラコントロールが発表された瞬間は「え、これって必要? またボタンが増えるし…」といぶかしく思ったのですが、実機に触れてみて180度考えが変わりました。

カメラボタンを搭載するスマホは多々あります。現行のiPhoneも、カメラアプリを起動してから側面の音量ボタンを押すと、写真・ビデオ撮影のシャッター操作になります。しかし、カメラコントロールの大きな違いは、単なるシャッターボタンではないということです。

iPhoneがスタンバイの状態からでも、カメラコントロールをクリックするとカメラアプリが起動。カメラコントロールは“強く押す”操作と“軽く押す”操作をそれぞれ認識できます。軽くダブルクリックするとズーム、露出、被写界深度などのオプションが選択でき、カメラコントロールのスワイプでアイテムを「選択」、もう一度軽く押すと「決定」になります。秋以降に予定するソフトウェアアップデート以後、被写体を定めてフォーカスと露出を自動追尾する「2段階シャッター」の機能もカメラコントロールに追加されます。

  • カメラコントロールは単なるシャッターボタンではありません。押す・指でなぞる操作でさまざまなカメラアプリの機能を呼び出して、設定変更などが片手でできる便利なユーザーインターフェースです

カメラコントロールは、iPhoneをタテ・ヨコのどちら向きに構えても機能します。従来は、例えば「フォトグラフスタイル」の機能を使ってカメラアプリで撮影を始める前に写真の色合い・トーンに工夫を凝らす機能を使いたいとき、シャッターを切る前に複数の操作ステップが必要でした。カメラコントロールは、オプションの中にフォトグラフスタイルを選ぶメニューがあります。iPhoneを片手で持ちながら写真やビデオの撮影に“映え”を意識した創意工夫が簡単に凝らせるようになると思います。

  • iPhoneを縦に構えた状態でもカメラコントロールが機能します

アップルは、サードパーティのカメラ系アプリを開発するデベロッパーに、カメラコントロールの機能を活用するためのAPIを開放しています。さまざまなデベロッパーによるオリジナリティに富んだ使い方が生まれることが期待できそうです。

カラフルで高機能な「iPhone 16」が欲しい!

  • 鮮やかなカラバリが揃った「iPhone 16」に、筆者も心奪われました

今回、筆者はProよりも「iPhone 16」に心惹かれました。鮮やかなカラバリがとてもキレイだからです。筆者は、グリーンが自分のラッキーカラーだと思い込んでいるので、グリーン系の「ティール」にビビッときましたが、実機を比べてみるとブルー系の「ウルトラマリン」も毎日iPhoneを使いながら心躍りそうな元気なカラーです。

  • 6.1インチのiPhone 16と6.7インチのiPhone 16 Plus

  • 鮮やかなブルー系の「ウルトラマリン」

iPhone 16の魅力は外見だけではありません。先述のカメラコントロールを備え、超広角カメラにはマクロ撮影の機能が追加されました。48MPのイメージセンサーを活用して、メインの広角カメラで光学2倍相当の望遠撮影を可能にする機能はiPhone 15にもありました。iPhone 16は48MP Fusionカメラを搭載しているので、ズーム撮影の画質向上が期待できます。

  • カメラは斜めにクロスする配置から、直線的に2つのレンズが並ぶ配置に戻りました。Spatial Video(空間ビデオ)の撮影に対応しています

日本でも来年からの正式導入が発表されたApple Intelligenceが快適に動作するよう、アップルが新たに設計を起こしたという、3ナノメートルの製造プロセスにより作られる「A18」チップを搭載しています。

  • 来年には日本で、日本語による操作が可能になるApple Intelligence。Siriのビジュアルがとてもキレイです。A18チップを搭載するiPhone 16でも快適動作が楽しめます

筆者は、Apple Intelligenceがスタートしたら「メモ」アプリによる自動文字起こしと要約を仕事でフル活用したいと考えています。なので、iPhone 16シリーズへの買い替えは自分的にマスト。A18チップはゲームコンテンツの表現を拡大するだけでなく、プレイ時には安定したパフォーマンスを最大限まで引き出すといいます。筆者も、仕事の合間にゲームで息を抜く時間が何より大切に感じるようになりました。だったら、画面の大きな6.7インチのiPhone 16 Plusもいいかもと思い始めています。

  • Apple Intelligenceが実現するテキストのサマリー機能にも注目です

10周年記念の「Series 10」。薄く軽くなったApple Watch

Apple Watch Series 10は、2014年にアップルが初めてのApple Watchを発表してから10年の節目に投入する、記念すべきウォッチです。

その最大の魅力はより薄く・軽くなったことです。アルミニウムケースのモデルはSeries 9と比べて約10%薄くなり、質量も最大10%軽くなっています。手首にピタッと沿うような心地よさがあります。

  • 艶が美しいアルミニウムケースのジェットブラック。ケースサイズは46ミリ

ケースのデザインは、従来のナンバリングシリーズが継承してきた優美な曲線を活かしていますが、有機ELディスプレイは四隅の表示限界を拡大したことで、46ミリケースのモデルが49ミリケースのApple Watch Ultraよりもさらに広く、見やすくなりました。

小さい方のケースは42ミリです。Series 5までの45ミリ、41ミリのApple Watchのためにユーザーが買いそろえてきたバンドは、それぞれ46ミリと42ミリのケースと互換性があります。

  • 背面にもアルミニウムを広くあしらったケース

ケースのカラーは、アルミニウムの新色「ジェットブラック」の魅力が傑出していると筆者は感じました。2016年にアップルが発売したiPhone 7/iPhone 7 Plusのジェットブラックのような艶っぽいブラックです。その高級感は、チタニウムケースの輝きに迫るほどでした。

ステンレスケースのApple WatchがSeries 10にはありませんが、チタニウムケースは軽さが魅力。発売後にApple Storeで現物をよく見比べながら、好みに合うモデルを吟味することをおすすめします。

  • チタニウムケースのApple Watch Series 10

「AirPods 4」は意表を突く開放型ノイキャンの高い効果

AirPodsは、2016年12月に発売したオリジナルモデルの系譜を継ぐ、開放型ハウジングの「AirPods 4」が発売されます。無印AirPodsでは初めて、周囲のノイズを低減するアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するモデルが用意されます。

  • 開放型ハウジングを採用する「AirPods 4」。いよいよアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するモデルが登場します

開放型ハウジングには、音が生まれるドライバーの背圧を効率よく逃がすことで切れ味鋭いクリアなサウンドを実現できるメリットがあります。代わりに、背圧コントロールのための小さな孔をハウジングに設けているがゆえに、密閉型ハウジングのイヤホンに比べると遮音性能を高めることが困難でした。

ハウジングが開放型でアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスイヤホンは、AirPods 4のほかにもさまざまな製品があります。筆者も少なからず試聴してきましたが、AirPods 4のアクティブノイズキャンセリング機能は遮音性能がとてもハイレベルだと思います。

  • ノイズキャンセリング、外部音取り込み、適応型オーディオ、会話感知などの機能が充実しています

外部音取り込みをオンにすると、周囲の環境音や目の前で話している人の声がクリアに聞こえます。開放型ハウジングのイヤホンだからといって、イヤホン本体で耳をふさぐことには変わりがないので、外部音取り込みは安全に音楽を楽しむためには欠かせない機能であるといえます。

AirPods 4のデザインは「第3世代のAirPods」と見た目には近く感じられるかもしれません。実際には、耳に乗せるイヤホン部が少し小さく、スティック部もスリムになっていると感じます。筆者はとても心地よく装着できました。

AirPods 4は、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するモデルが、非搭載のモデルよりも高価です。他の差分となるワイヤレス充電と「探す」機能への対応の有無を考えても、8,000円の価格差は型破りなほどにお得だと思います。迷わず“ノイキャンあり”の方を選ぶべきです。

  • AirPods Maxの新色も登場。デジタル端子がLightningからUSB-Cになっています

AirPods 4の発売とともに、オリジナルモデルのデザインを継承してきた第2世代のAirPodsと、ひとつ前の第3世代のAirPodsは販売を終了します。ただ、筆者はこれからアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するAirPods 4の黄金期がしばらく続くことを確信しました。それほど、本機の完成度は高いと断言できます。