ドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショー「IFA 2024」のMSIブースでは、同イベントに先駆けて発表されたIntel Core Ultraシリーズ2搭載のPC群を中心に、最新プロセッサを搭載したノートPC・デスクトップPCが数多く展示されていた。ここではMSIが開催したブースツアーで担当者が注目と語った3つのトピックを紹介しよう。

  • IFA 2024のMSIブース。Intel Core Ultraシリーズ2を前面に打ち出した展示となっていた

注目のPrestigeにCore Ultraシリーズ2搭載の新モデル

1つ目は同社定番の高性能ノートPC「Prestige」シリーズ最新モデル。Intel Core Ultraシリーズ2を新搭載し、省電力かつ長時間駆動に加え、AI処理をローカルで行える“AI PC”となる。

最大48TOPS(CPUのモデルにより異なる)のAI処理向けのNPUだけでなく、CPU・GPU・NPUなどプロセッサ全体で最大120TOPSの高い処理性能を備え、11月にはライブキャプションやWindows StudioエフェクトといったCopilot+ PC機能も加わる予定だ。

Prestigeシリーズとしては13/14/16インチの3モデルを用意。いずれも「軽量かつ薄型でパワフルに動く」ことが特徴とアピールされた。

  • 13.3型ノートPC「Prestige 13 AI+ Evo(A2VMG)」。小型でそれなりに重みもあるが、十分片手で持てる990gの製品だ

中でも2,880×1,800ドット解像度の13.3型モデル「Prestige 13 AI+ Evo」(A2VMG)は75Whの4セルバッテリーを載せつつ1kgを切る990gの軽さで特に持ち運びしやすくなっている。

Prestige 13 AI+ Evoは最上位構成でIntel Core Ultra 9 288Vを搭載でき、32GBのメインメモリをSoCパッケージ上に統合。搭載ポートはThunderbolt 4ポート2基やHDMI 2.1ポート、USB 3.2 Gen1 Type-A 1基、microSDスロットなどで“少数精鋭”の印象だ。

バッテリー駆動時間は20時間以上の動画再生が可能といい、65W急速充電もサポート。「1日中使えるPC。あなた方(メディア)にとって完璧なソリューションでしょう」との補足もあった。カラーはStellar Gray。

実際に持ってみると小型ながら密度感があり、他のモデルと比べても楽に持てる軽さだった。タッチパッドが広く取られていることも好印象。展示機のキー配列は英語配列でカーソル周りがやや詰まっている。EUなどでは9月末から販売開始といい、日本への投入を楽しみに待ちたい製品だ。

  • Prestige 13 AI+ Evoの天板。マットな質感でロゴが中央に配置されたシンプルなデザインだ

  • 横から見たところ。厚みは仕様値で16.9mm、全体のサイズはW299×D210×H16.9mmとなっている

  • カーソルキー左側にCopilot+キーを装備。キーボード右下周りはキーがやや詰まっている印象

  • 本体右側面。USB 3.2 Gen1 Type-AとmicroSDカードスロットを装備

  • 本体左側。こちらにはThunderbolt 4(PD 3.0)ポート2基やHDMI 2.1ポートを装備。搭載ポートは厳選されている

ローカルで動くAIがPC操作やファイル参照も可能に

AIに関する最新機能も紹介された。MSIではすでにインターネット接続なしで動作する画像生成AIアプリケーション「AI Artist」を提供しているが、それに加えて、ユーザーがAIの支援を受けながら自分のコンピューターを操作したり、コンピューターにあるファイルを見たりできるようにする機能追加を進めている。

IFAでは、ローカル動作するAIエンジンに尋ねたい情報を入力すると、内容に応じて必要な操作や情報が提示される機能のデモンストレーションが行われた。例えば「音楽の音量が小さすぎる」と送ると音量を上げたり、「マイクのノイズキャンセレーションを開いて」と送るとこのドキュメントに載っていると返したり、あるいは「MSIのPCの中で最も軽いPCはどれ?」と尋ねると、AIがファイル内容を解析して「0.99kgのPrestige 13 AI+ Evoです」と、資料付きで返してきたりする。

この新機能はすべて(ネット回線不要で)ローカルベースのAIを使って動くという。現在は初期のベータ状態で、完成版は2025年1月のCESの頃を見込んでいるということだ。

  • ローカルAIの新機能デモンストレーション。PC内をファイルを参照し、例えばMSIのPCの中で最も軽いPCはどれ、と尋ねると、0.99kgのPrestige 13 AI+ Evoです、と参照資料付きで返す

MSIのClaw 8 AI+実機チェック、USB-Cが2ポートに増えたワケ

最後はMSIのハンドヘルド型ゲーミングPC「Claw 8 AI+」だ。既に販売開始している同形状の7型モデル「Claw」(A1M)には前世代にあたるMeteor Lakeプロセッサが内蔵されているが、Claw 8 AI+ではCore Ultraシリーズ2を搭載し、画面サイズに加え性能や電源効率が向上している。

  • Claw 8 AI+。両側から本体を両手でホールドするタイプのミニゲーミングPCだ

  • 前世代の7型モデル「Claw」(A1M)

  • 2機種を並べてみたところ。Claw 8 AI+は全体のデザインがやや丸みを帯びた柔らかい形に変わっている

「Claw 8 AI」はその名の通り、8型フルHD(1,920×1,080ドット)・120Hzの高速駆動ディスプレイを搭載した、手持ちタイプのゲーミングPC。“世界初のCore Ultraシリーズ2搭載Windows 11ゲーミングハンドヘルド”をうたっている。

最上位構成でCore Ultra 7 258Vプロセッサ(8コア、メインメモリ32GB)/Arc 140Vグラフィックスを搭載でき、従来から画面サイズやバッテリー容量(最大80Wh)を拡充。

担当者は「Lunar Lakeを搭載していることもあり、駆動時間はとても長い」と強調。なお7型モデルにもアップデートが適用され、当初から性能が向上しているともした。

ただし今回展示されているのは「エンジニアリング・サンプル」(試作機)で、これも2025年1月、米国で開催されるIT展示会「CES」あたりでの登場を見込んでいる。

  • 手に持ったところ。ゲーム「Hi-Fi RUSH」がヌルヌル動いていた

「Claw 8 AI+」では、従来は1つだったUSB Type-Cポートが2つに拡充されている。この理由を担当者に聞いてみたところ、市場のニーズがあったこと、そしてCore Ultraシリーズ2搭載で内部スペースに余裕ができたことが理由という(画面サイズの拡大にもつながっている)。

特にゲーミング用マウスや拡張用ディスプレイなどの外付けデバイスを使いたいとき、これまでは別途USBドングルを買うか、あるいは本体の充電を諦めなければいけなかった。が、2つのUSB Type-Cポート(いずれもThunderbolt対応だそう)を備えたことで、ユーザーは追加ドングルを買わなくても、充電しながら周辺機器も使えるよう進化したとの説明だった。

  • 持ち手の裏側にふくらみがあり、手に馴染むちょうどよい持ち心地。表面はマットな質感だ

  • 本体裏側。冷却機構は2ヒートシンク2ファンの「MSI Cooler Boost Hyperflow」を内蔵する

  • 展示機ではCore Ultra 7 258Vを搭載。チップ上に32GBのメインメモリ、Intel Arc 140Vグラフィックスが統合されている

  • Claw 8 AI+のインタフェース周り。USB Type-Cポートが2基に増設されている