Googleの新スマートフォン「Google Pixel 9」シリーズが登場しました。まずスタンダードモデルの「Google Pixel 9」とハイエンドモデルの大画面版となる「Google Pixel 9 Pro XL」が8月22日に発売され、ハイエンドモデルの「Google Pixel 9 Pro」とフォルダブルの「Google Pixel 9 Pro Fold」は9月4日から販売がスタートしています。

  • 9月4日に発売されたばかりの「Pixel 9 Pro」を用いて、カメラ性能を試した。なお、カメラ周りの仕様は先に発売された「Pixel 9 Pro XL」と同等となる

    9月4日に発売されたばかりの「Pixel 9 Pro」を用いて、カメラ性能を試した。なお、カメラ周りの仕様は先に発売された「Pixel 9 Pro XL」と同等となる

Google Pixelシリーズの強みといえばAIを活用した機能です。今回も様々な便利機能に注目が集まっていますが、特に利用頻度も高いカメラ関連機能の実力はやはり気になるところ。

今回は実際にGoogle Pixel 9 Pro(以下、Pixel 9 Pro)を使って、カメラの写りや機能をチェックしてみました。

カメラの仕様をおさらい

早速作例を元にPixel 9 Proのカメラの実力を紹介していきたいのですが、その前にPixel 9 Proのカメラ仕様をおさらいします。

Pixel 9 Proの背面カメラは「超広角」「広角」「望遠」のトリプルカメラです。広角カメラは約5,000万画素、それ以外の2つのカメラは約4,800万画素で、望遠カメラの画角は5倍ズーム相当です。

  • 「超広角」「広角」「望遠」のトリプルカメラを搭載

    「超広角」「広角」「望遠」のトリプルカメラを搭載

どのカメラもQuad PDとして、通常時は4画素を1画素として受光量を高め、約1,200万画素のカメラとして撮影を行う仕様になっています。もちろん撮影時は設定から約5,000万画素のカメラとして使用するようにもできます。

また先代「Google Pixel 8 Pro」と比較した場合、公称スペックでは超広角カメラのレンズがF1.95からF1.7と僅かに明るくなっているのもPixel 9 Proでの進化点として挙げられます。

実際には2~3年ぶりの買い替えとなる人の方が多いと思いますので、2世代前のGoogle Pixel 7 Proとも比較した場合、すべてのカメラでレンズは明るくなっています。特にGoogle Pixelシリーズの評判が高い「暗所での撮影性能」についても、スペック上ではレンズが明るくなったことでより得意になったと言えます。

見たまま重視のチューニングとなったPixel 9 Proのカメラ

ここからは実際にPixel 9 Proで撮影した写真を作例として取り上げながら、カメラの実力をご紹介していきます。

まず日中の作例から。

青空が映える風景を超広角、広角、望遠で撮影してみました。透明感のある青空の雰囲気はしっかりと捉えつつ、山の木々のディテールや色味も忠実に捉えてくれています。

もちろん都市部で撮影した場合も同様に、空の色をビビッドにすることもなく、また彩度の高い色に引っ張られ他の被写体までも色が破綻してしまうようなことはありません。

  • 自然のなかでの昼間の風景(超広角)

    自然のなかでの昼間の風景(超広角)

  • 自然のなかでの昼間の風景(広角)

    自然のなかでの昼間の風景(広角)

  • 自然のなかでの昼間の風景(望遠)

    自然のなかでの昼間の風景(望遠)

  • 都会の昼間の風景(超広角)

    都会の昼間の風景(超広角)

  • 都会の昼間の風景(広角)

    都会の昼間の風景(広角)

  • 都会の昼間の風景(望遠)

    都会の昼間の風景(望遠)

続いて確認するのは夕方~夜間など、暗くなってからの撮影性能です。

夕方、日が沈み始めてからの撮影ですが肉眼で見るよりは明るく、風景の細部のディテールはもちろん、夕焼けのグラデーションも鮮やかに捉えることができています。

少し気になるのは3つのカメラでそれぞれ色味が異なることで、センサーやレンズの違いはあれど、仕上がりには差がないようなチューニングを行ってほしいと感じます。

  • 夕方の作例(超広角)

    夕方の作例(超広角)

  • 夕方の作例(広角)

    夕方の作例(広角)

  • 夕方の作例(望遠)

    夕方の作例(望遠)

夜間の撮影性能の高さに定評のあるGoogle Pixelシリーズの最新モデルらしく、湖畔のキャンプ場というとにかく暗い場所でもくっきりと撮影することができました。

写真ではかなり明るく、バンガローや焚き火の明かりも白飛びせずに写っていますが、肉眼では暗さに慣れると明かりは眩しくここまで照らされた場所をハッキリ見ることも難しい暗さだったのでGoogle Pixle 9シリーズも「暗所に強いGoogle Pixel」は健在です。

もちろん都市部の夜の撮影も優秀です。照明のゴーストなどが写り込むようなこともなく、また照明が白飛びしてしまうようなこともありません。

  • 夜間の作例(バンガロー)

    夜間の作例(バンガロー)

  • 夜間の作例(焚き火)

    夜間の作例(焚き火)

  • 夜間の作例(都市部)

    夜間の作例(都市部)

では風景以外ではどうか。スマートフォンのカメラで撮影する機会の多い「メシ」の写りもチェックします。

ここまでの作例の通り、キャンプに出かけながらPixel 9 Proのカメラを試していたのでバーベキューの醍醐味の「肉」が今回の被写体です。焼かれたことでついた編み目やジューシーな脂のテカリ具合はもちろんのこと、火の通った場所とそうでない場所のグラデーションまで捉える事ができる描写性能があります。

また日常的なメシ写真としてラーメンにも被写体になってもらいましたが、こちらもスープの脂や大量に乗ったネギなどもディテールが潰れることなく写真におさめることができました。

ただ「メシウマか」と聞かれると、Pixel 9 Proは見たままの色味を重視する色作りになっているため、思い出として振り返って写真を見たときのシズル感はイマイチ不足しています。

メシマズとまではいきませんが、SNS映えするような写真を撮影するには少々不向きかもしれません。どちらかといえばレンズ交換式カメラなどを使う写真愛好家向けの素直な写りといえるでしょう。

  • メシ撮りの作例(バーベキュー)

    メシ撮りの作例(バーベキュー)

  • メシ撮りの作例(ラーメン)

    メシ撮りの作例(ラーメン)

デジタルズームとAIを活用した「ズーム画質向上」を比較する

Google Pixelシリーズのカメラといえば、AIを活用しデジタルズームでも高精細な望遠写真を撮影できることも以前より高く評価されています。

Pixel 9 Proの場合、5倍ズームの望遠カメラからさらにデジタルズームで30倍相当までズームしての撮影が可能です。また、新たな機能としてAIを活用する「ズーム画質向上」が写真編集機能に追加されています。

実際にカメラアプリで通常撮影→30倍のデジタルズーム撮影と、通常撮影した写真を編集で「ズーム画質向上」を使いトリミングしたものを比較して効果や写りの違いを比べてみました。

結果としては30倍のデジタルズームの方がまだ細部のディテールが残るためキレイなのですが、撮影後に拡大してトリミングしたいものを写真の中に見つけた際に「意外と見られるもの」が出力されるのはなかなかに便利でおもしろい機能といえます。

もちろん30倍のデジタルズームでも寄り切れない場合に、後から「ズーム画質向上」を使って撮影後に被写体にさらに寄って切り出すといった賢い使い方も覚えておくといいでしょう。

  • 通常撮影

    通常撮影

  • デジタルズーム

    デジタルズーム

  • 撮影後の編集で「ズーム画質向上」を適用

    撮影後の編集で「ズーム画質向上」を適用

  • 通常撮影

    通常撮影

  • デジタルズーム

    デジタルズーム

  • 撮影後の編集で「ズーム画質向上」を適用

    撮影後の編集で「ズーム画質向上」を適用

  • 写真アプリの編集メニューに追加された「ズーム画質向上」機能

    写真アプリの編集メニューに追加された「ズーム画質向上」機能

  • トリミング範囲を指定し、画像を解析しながら画質向上を行います。数秒間の待ち時間がありますが解析中のアニメーションを見ていると一瞬です

    トリミング範囲を指定し、画像を解析しながら画質向上を行います。数秒間の待ち時間がありますが解析中のアニメーションを見ていると一瞬です

天体撮影モードで満点の星空を撮影

最後に試したのはGoogle Pixelシリーズのカメラ機能の中でも売りになっている「天体撮影モード」です。

暗所での撮影時、手持ちの夜景モードでも意外と星空の撮影を行うことができるのですが、三脚などに固定した場合に利用できる天体撮影モードでは最長4分間の連続撮影を行うことでさらにキレイな星空の撮影を行うことができます。

実際の撮影結果ですが、肉眼で見る以上に満天の星空を撮影することができました。以前からある機能ではありますが、写真だけでなく撮影中の星の動きをタイムラプス動画として同時に保存してくれるので、星の動きも確認できるのはなかなかおもしろい機能といえます。

  • 天体撮影中の様子(三脚を使用)

    天体撮影中の様子(三脚を使用)

  • 天体撮影モードによる作例

    天体撮影モードによる作例

オールマイティに活躍できるカメラ、課題はUIか

写りや編集機能に不満はないものの、撮影体験としては少々残念な点もあります。

多機能化が進む中でカメラアプリのUIはかなりごちゃついていて、撮影設定の中にあってほしいものがカメラアプリの設定の中にしかないなど、設定変更や機能変更の導線に少々難ありだと感じました。

ですがその難点の分を差し引いてもPixel 9 Proのカメラは優秀です。イマドキのスマートフォンのカメラのビビッドな色味ではないあたりは好みが分かれそうですが、そのおかげでどのような被写体であっても苦手なしに撮影していけるのは強みといっていいでしょう。

また編集の手間はありますが、ビビッドな色味が好みであれば編集機能から容易に写真の色味を変更する方法にも富んでいます。売りのAIを活かした様々な編集機能も含め、スマートフォンカメラとしては万能機のポジションに収めていい完成度といえるでしょう。