Samsungの最新折りたたみスマートフォン「Galaxy Z」シリーズから、今年も横折りの「Galaxy Z Fold6」と縦折りの「Galaxy Z Flip6」が登場しました。先に掲載した「Galaxy Z Fold6」のレビューに続き、フリップスタイルの縦折りスマートフォン「Galaxy Z Flip6」のレビューをお届けします。

  • Galaxy Z Flip6

    Galaxy Z Flip6

ディスプレイサイズは前モデルと変わらず。デザインはシャープに

開くと大画面スマートフォン、閉じるとコンパクトな折りたたみ端末となる「Galaxy Z Flip」シリーズ。タブレットを折りたたむ「Galaxy Z Fold」シリーズに比べると、普通のスマートフォンだけど持ち歩きに便利……ということで人気となっています。

  • 折りたたんだ状態

    閉じれば手のひらに収まるコンパクトなサイズ

複数のメーカーから同様のスマートフォンが登場しており、ライバルの多いジャンルですが、今回のGalaxy Z Fold6は、ハードウェア面というよりもソフトウェア面での進化が中心となっています。

  • 開いた状態

    開いた状態では一般的な大画面スマートフォンに見えます

  • カバーディスプレイの表示

    真価を発揮するのが閉じた状態。カバーディスプレイにさまざまな情報を表示できるので、閉じた状態でもある程度そのまま使えます

外観に関しては、Z Fold6と同様、四隅の角が直角になってより直線的なデザインとなり、側面もつや消しになってよりシャープな印象になりました。とはいえ、Z Flip6のサイズはZ Flip5とまったく同等。特に縦折りタイプはライバルが多いため、少し残念なところではあります。

  • 開いた状態の左側面

    開いた状態の側面。これを見るだけならよくある薄型のスマートフォンです

  • 開いた状態の右側面

    ボタンは電源ボタン一体型指紋センサーとボリュームキー

  • 開いた状態の天面

    天面はシンプルなデザイン

  • 開いた状態の底面

    底面にUSB Type-Cポート

  • 閉じた状態の側面

    閉じた状態の側面

  • 閉じた状態の天面・底面

    つや消しと直線的なデザインでよりクールな印象になりました

Z Flip5 Z Flip6
本体サイズ(閉じた状態) 85.1 x 71.9 x 15.1mm 85.1 x 71.9 x 14.9mm
本体サイズ(開いた状態) 165.1 x 71.9 x 6.9mm 165.1 x 71.9 x 6.9mm
重さ 187g 187g
画面サイズ(閉じた状態) 6.7型(2640×1080) 6.7型(2640×1080)
画面サイズ(開いた状態) 3.4型(720×748) 3.4型(720×748)

次表はZ Flip6と他社モデルのディスプレイの比較。Z Flip5はZ Flip6とサイズ・解像度とも同じです。他社はZ Flipに対して特にサブディスプレイを大型化するなど、Samsungに対して色々な工夫をしているようです。各社の競争が激化して、今後もさらに魅力的な端末が増えそうです。

Z Flip5/Z Flip6 motorola razr 50 ultra Xiaomi MIX Flip
メイン画面 サイズ 6.7型 6.9型 6.86型
解像度 2,640×1,080 2,640×1,080 2,912×1,224
アスペクト比 22:9 22:9 21.4:9
サブ画面 サイズ 3.4型 4.0型 4.01型
解像度 720×748 1,272×1,080 1,392×1,208
アスペクト比 8.7:9 10.6:9 10.3:9
  • 本体裏面

    ツートンカラーで下半分はさらにシンプルなデザインに。おサイフケータイロゴもなくなりました

ハイエンドな性能でゲームもAIも

Z Flip5から外観の変化は少ないZ Flip6ですが、SoCは順当にバージョンアップ。Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを搭載したことで、ゲームを含めたあらゆる作業で快適に動作します。

Z Flip6 Z Flip5
3Dmark Wild Life Extreme 4,024 3,730
PCMark Work 3.0 19,200
GeekBench Single-Core 1,544 2,023
Multi-Core 6,366 5,113
GPU(OpenCL) 11,678 9,365
GPU(Vulkan) 12,694 8,411
GFXBench マンハッタン3.1 4,685 4,756
マンハッタン3.1オフスクリーン 7,868 5,825
Aztec Ruins OpenGL High Tier 4,811 2,245
Aztec Ruins Vulkan High Tier 3,792 2,514
  • 3Dmarkのテスト結果

    3Dmarkのテスト結果

  • GeekBenchのテスト結果

    GeekBenchのテスト結果

GeekBenchのシングルコアの結果が逆転していますが、これは外れ値かもしれません。また、一部ほとんど差がないテストもありますが、おおむね順当な性能向上となっているようです。

普段、ゲームをしないような人であれば、ハイエンドのスマートフォンが必要ないと感じるかもしれませんが、後述するAIを端末内で処理するオンデバイスAIが広がると、SoCの性能がダイレクトに効いてくるようです。

今後、各社が端末へのAI搭載を重視してくることになると、AI処理性能の高いハイエンド端末が有利になりそうです。

Galaxy AIが新たな使い勝手を実現

ソフトウェア面では、Galaxy AIを搭載した点が最大の特徴です。Galaxy AIは、Samsung独自のAI機能をまとめたもので、オンデバイスとクラウドの処理を組み合わせることで、スピードと機能のバランスを取ってサービスが提供できるようになっています。

  • Galaxy AIの機能1
  • Galaxy AIの機能2
  • Z Flip6に搭載されているGalaxy AIの機能。基本的にZ Fold6と同じ機能が搭載されています

オンデバイス処理に限定すれば、プライバシーを担保した状態でAI処理ができます。その代わり、一部の高性能なAI処理は使えなくなる、という形です。こうしたハイブリッドを選択できる点は好感が持てます。

搭載されているのは、通話アシスト、通訳、ノートアシスト、文字起こしアシスト、スケッチアシストなど10種類。これらの機能は同時発売のZ Fold6だけでなく、既存のZ Flip5やGalaxy S24などの端末でも利用できます。

  • 通訳機能
  • 会話モード
  • 左は海外で役立つ通訳機能の設定。リスニングモードは録音をしておけば、あとで文字起こしアシストを使ったテキスト化も可能です。右は会話モードの画面で、しっかりはっきりと話せばそれなりに認識してくれます。右上のアイコンから、相手側にはカバーディスプレイに通訳結果を表示することができます。対面でやりとりするのに分かりやすい表示になります

そのため、Z Flip6独自機能というわけではないのですが、例えばレコーダーアプリで録音した音声の文字起こしをする場合、旧機種よりも新機種の方が処理時間は短く済むなど、最新のハイエンド機種の方が快適に使えます。

  • イラストを描画
  • 生成された画像
  • Z Fold6のようにSペンは使えませんが、指で手書きしてイラストなどを生成することもできます

なお、Galaxy AIの機能については、前述のZ Fold6のレビューで詳しく紹介しています。そちらもあわせてチェックしてください。

Z Fold6と同等のハイエンドカメラを搭載

Z Flip5までのZ Flipシリーズが搭載するカメラは、Z Foldシリーズよりも性能の劣るものになっていました、それがZ Flip6が搭載するは、Z Fold6と同等の性能に引き上げられ、レンズも刷新されています。結果として、Z Flip5のメインカメラに比べると、確かにZ Flip6は画質が改善されているようです。

  • カメラ部

    5,000万画素のメインカメラと1,200万画素の超広角カメラを搭載

Z Flip5 Z Flip6
有効画素数 12MP+12MP 12MP+50MP
焦点距離(35mm判換算) 13mm、24mm 13mm、23mm
F値 F1.8、F2.2 F1.8、F2.2

Z Flipシリーズは、途中まで折りたたんだ状態で自立するため、三脚を使わずに本体を固定して撮影できるというメリットがあります。折りたたみスマートフォンの大きな特徴の1つで、カメラを重視するユーザーにとっては撮影の幅が広がります。

  • 置き方1

    様々な置き方でカメラを固定できます

  • 置き方2

    角度を自由に変えられるので、撮影ではとても便利

メインカメラの下にあるカバーディスプレイをファインダーとして使えば、インカメラではなく高画質なメインカメラで自撮りができる、折りたたみスマートフォンならではの撮り方もできます。

  • 置いた状態で撮影

    こんなふうに置いた状態で撮影できるのは便利。カバーディスプレイをファインダーとして利用することができるので、構図を確認しながら撮影できます

このあたり、すでに6世代目として完成されてきた感がありますが、画質面でもハイエンドにふさわしいカメラとなって、より使い勝手がよくなりました。

  • 20メガピクセルの撮影例

    12MPでの撮影。細部まで安定した描写です

  • 50メガピクセルの撮影例

    50MPでの撮影も可能。特に周辺画質などトータルでの画質は落ちますが、2億画素クラスに比べれば実用的なレベルです

  • メインカメラの撮影例

    メインカメラは、ピクセルビニングによってハイライトからシャドーまで安定して描写してくれます

  • 超広角カメラの撮影例

    超広角カメラはピクセルビニングに非対応なのでシャドーを持ち上げるとノイズが出やすいですが、中心部の画質は良好です

  • デジタルズーム3倍の撮影例

    デジタルズーム3倍。高画素を生かしたデジタルズームは、このぐらいであれば実用的なレベルになっています

  • デジタルズーム2倍の撮影例

    こちらはデジタルズーム2倍。積極的に使っても問題ないでしょう

  • 食事の撮影例

    食事の写真。Z Fold6と同等の画質です

AIとカメラで進化したZ Flip6

Z Flip6は、カバーディスプレイの機能が端末の使い勝手を左右します。大画面化や機能強化で順次使いやすくなってきましたが、相変わらず自由にアプリを追加できない点は気になるところです。

  • 複数のウィジェットを利用

    複数のウィジェットを1画面に登録することができるため、視認性が向上しています

  • ロック画面

    ロック画面右下のアイコンからカメラの起動が可能。折りたたんだまま自撮り撮影ができるので、スピーディーです

とはいえ、カメラの高画質化やパフォーマンスの向上といった順当な機能改善だけでなく、Galaxy AIによって新たな使い方を実現しているのがZ Flip6です。通訳機能のように自分側の通訳結果をメインディスプレイに、相手側に見せる翻訳結果にはカバーディスプレイを使う……というZ Flipに適した機能もあるのがよく考えられているところです。

  • サブディスプレイからの操作

    端末の設定を素早く変更したり、メールや電話などの通知をそのまま確認したり、本体を開かなくてもある程度の操作ができます。折りたたみは便利なのですが、開いたり閉じたり一手間必要なので、こうした機能は利便性の向上に繋がります

  • さまざまなウィジェット

    ウィジェットは複数が用意されています

初めての折りたたみスマートフォンを検討する人だけでなく、2~3世代前のZ Flipユーザーであれば、性能だけでなくGalaxy AIの快適な動作を含めて買い替えを検討すると良さそうです。前モデルとの差は大きくありませんが、カメラの画質は進化しているため、カメラ重視で検討をしてもいいかもしれません。