韓国Samsungは、フランス・パリで新しいスマートフォンなどの発表会「Galaxy Unpacked」を開催しました。例年通り、折りたたみスマートフォンの「Galaxy Z」シリーズに加え、ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds」、スマートウォッチ「Galaxy Watch」などの新製品が発表されました。韓国や米国などでは7月10日から予約を受け付け、7月24日から販売開始となります。

ここでは「Galaxy Z」シリーズのインプレッションを中心にお届けします。「Galaxy Buds」「Galaxy Watch」や新登場の「Galaxy Ring」については、もう1本のレポート記事をご覧ください。

  • Galaxy Z Fold6

    新たに発表された最新の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold6」

今回発表された「Galaxy Z」シリーズは予約開始が7月17日から、発売が7月31日からとなっています。「『Galaxy Z』シリーズ史上、最速での日本発売が決定」と同社ではアピールしており、実際、グローバルの発売からわずか1週間遅れでの発売を実現しました。

今回のGalaxy Unpackedでは、まずSamsungのMX Businessのプレジデント/ヘッドのTM Roh氏が、端末の前にGalaxy AIをあらためて紹介。「Galaxy」シリーズに搭載されているAI機能の総称がGalaxy AIで、今年1月に行われた「Galaxy S24」シリーズの発表から、この名称が使われています。

  • TM Roh氏

    冒頭に登壇したTM Roh氏

TM Roh氏は「Galaxy AIの民主化」として、今年中に市場にある2億台のGalaxy製品にGalaxy AIを展開していく計画を示しました。Galaxy AIは、インターネットに接続されていなくてもオンデバイスで動作し、16の言語をサポート。すでに一部のハイエンド端末などにGalaxy AIが提供されていますが、この対象をさらに幅広い端末に拡大します。

Galaxy AIについて「誰も取り残さないAIテクノロジー」とTM Roh氏は表現。安全性とプライバシーを確保するオンデバイスでのAI処理に加え、より豊富な機能を実現するクラウドベースのAI処理を組み合わせた「ハイブリッドなアプローチ」(TM Roh氏)をとっており、双方をユーザーが選択できるという特徴が示されました。

ディスプレイの堅牢性向上、でも少し薄くなった「Galaxy Z Fold6」

折りたたみスマートフォン「Galaxy Z」シリーズの新製品として発表されたのは、開くとタブレット、折りたたむと大画面スマートフォンになる「Galaxy Z Fold6」と、開くと大画面スマートフォンで折りたたむとコンパクトサイズの「Galaxy Z Flip6」の2機種です。

「Z Fold6」は、Foldシリーズ史上最薄となり、閉じたスマートフォンモードでの画面(カバーディスプレイ)は、従来の6.2型から6.3型へとわずかながら大型化。折りたたんだサイズは、「Z Fold5」のH154.9×W67.1×D13.4mmから、H153.5×W68.1×D12.1mmになり、高さはやや短く、幅はやや太く、厚みはやや薄くなっています。全体的に持ちやすくなりました。

  • 「Z Fold6」を折りたたんだところ

    「Z Fold6」を折りたたんだところ。薄く/軽くなり、さらに持ちやすくなりました。画面サイズがわずかとはいえ大きくなったのは嬉しいところ

  • 「Z Fold6」と「Z Fold5」との比較

    「Z Fold6」(右)と「Z Fold5」(左)の比較。四隅が鋭角になっている点も違いです

開いた状態のタブレットモードだと、画面サイズは7.6型で変わらず。本体サイズがやや小さくなった割に画面サイズが変わらないのは、ベゼルが狭くなったからのようです。また、丸みを帯びていた四隅がより四角くなりました。さらに重量は253gから239gへと軽量化も果たしています。このあたりのデザインはさらに洗練された印象です。

  • タブレットモード。より正方形に近いサイズ感になってきました

  • 開いた状態で「Z Fold5」と比較

    開いた状態で「Z Fold5」(左)と比較。四隅の丸みが小さくなっているのがよくわかります。また角度にもよりますが、折り目が目立たなくなりました

ディスプレイは従来よりも堅牢性が向上。Samsungは2008年に折りたたみディスプレイの研究を開始し、10年以上の研究の末に2019年に初代Galaxy Foldを発表しています。それから毎年新機種でディスプレイに新技術を投入してきましたが、今年の「Z Fold6」では複数のレイヤーからなる折りたたみディスプレイの一部の層を取り除いて薄型化に成功。これは、保護層のProtective Layerが強化されたことで実現したそうです。

  • 従来のディスプレイ保護層イメージ

    こちらが従来のディスプレイ保護層のイメージ

  • 1層を取り除いた保護層のイメージ

    従来の保護層から1層を取り除いてより薄くしたにもかかわらず、堅牢にもなったといいます

  • 折りたたんだ状態の「Z Fold6」と「Z Fold5」を比較

    折りたたんだ状態の「Z Fold6」(右)と「Z Fold5」(左)を比較。横幅はわずかながら長くなっており、厚みは少し薄くなっています

  • 開いた状態で重ねて「Z Fold6」と「Z Fold5」を比較

    開いた状態で重ねてみました(上が「Z Fold5」、下が「Z Fold6」)。明確に分かるほどの厚みの差はないようです

  • 「Z Fold6」と「Z Fold5」の閉じた状態の背面をを比較

    閉じた状態の背面。「Z Fold5」(右)はドコモ版で中央にドコモのロゴがありますが、「Z Fold6」(左)ではすべてデザインが共通となり、ドコモ版ではドコモロゴ/FeliCaマークがありません

  • 「Z Fold6」と「Z Fold5」のカメラ周辺を比較

    カメラ周辺のデザインも変更されています(上が「Z Fold5」、右が「Z Fold6」)

  • 「Galaxy Z Fold6」の主な特徴

    「Galaxy Z Fold6」の主な特徴

カメラ強化で死角がなくなった「Galaxy Z Flip6」

「Galaxy Z Flip6」も、同様にGalaxy AIを搭載しています。ハードウェア的には、画面サイズは折りたたみ時3.4型、開いたときに6.7型と従来通り。本体サイズもH165.1×W71.9×D6.9mm(開いたとき)、H85.1×W71.9×D14.9mm(折りたたんだとき)で、折りたたんだときの厚みだけ15.1から14.9mmにわずかに薄くなったのみで、大きな違いはありません。重さも同じ187gです。ベイパーチャンバーを搭載して放熱性能が向上。バッテリーも従来の3,700mAhから4,000mAhに大容量化しました。

  • Galaxy Z Flip6

    Galaxy Z Flip6

  • 「Galaxy Z Flip6」を折りたたんだ状態

    折りたたむとコンパクトになります

  • フレックスウィンドウ

    フレックスウィンドウには天気予報などのウィジェットや通知、カメラなどが利用できます

  • フレックスウィンドウへの複数ウィジェット表示

    複数のウィジェットをまとめて1画面に表示できるようになりました

「Z Flip」のカメラはこれまで12メガピクセル(メイン)と12メガピクセル(超広角)という構成だったのが、「Z Flip6」は50メガピクセル(メイン)と12メガピクセル(超広角)という構成になり、「Z Fold6」と同じスペックとなりました。これまで、カメラ性能がハイエンドモデルに対して劣っていた「Z Flip」シリーズですが、画像処理のPro Visual Engineも搭載し、ハイエンドモデルに追いついた形です。

  • 「Z Flip6」のカメラ部

    カメラが大幅に進化

  • フレックスウィンドウを使った自撮り

    フレックスウィンドウを使った自撮り

  • 「Galaxy Z Flip6」の主な特徴

    「Galaxy Z Flip6」の主な特徴

折りたたみスマホでより便利に使えるGalaxy AIの各種機能

続いて、Galaxy AIの機能を見ていきましょう。

標準のSamsungキーボードにはAIボタンが新設され、プロンプトを与えることでメールなどの文章を生成してくれて、簡単にメールやメッセンジャーなどに挿入できます。

  • AIによる文章の生成1

    キーボードの左上にあるのがAIアイコン。ここから文章の生成を行ってみます

  • AIによる文章の生成2

    「コンポーザー」(正式版では「文章生成」になる模様)を選びます

  • AIによる文章の生成3

    例として、「夏休みの予定を問い合わせるメール」を作成してもらうためのプロンプトを入力します

  • AIによる文章の生成4

    そして文体を選択。ここでは「丁寧」を選んでみます

  • AIによる文章の生成5

    生成した文章の利用目的も指定できます

  • AIによる文章の生成6

    生成されたメールの文章。指定したとおり丁寧な文章になっています。「更新」で再生成、「挿入」でアプリに挿入できます

  • AIによる文章の生成7

    こちらは文体を「カジュアル」、利用目的を「ソーシャルメディア」にして生成したもの。絵文字を駆使した文章になりました。年齢高めの人ががんばって絵文字を使っているようにも見えるのですが、どうでしょう

  • さまざまなGalaxy AIの機能

    他にも様々なGalaxy AIの機能があります

ボイスレコーダーアプリは、これまでも音声のテキスト化をサポートしていましたが、「Samsung Notes」アプリに組み込まれて、手書きメモを作成しながら音声を録音しつつ、さらにテキスト化することが可能になりました。

  • 「Samsung Notes」アプリの音声録音/テキスト化

    「Samsung Notes」で音声録音とテキスト化が可能に

  • 音声の再生位置と手書きメモの位置の同期

    音声の再生位置と手書きメモの位置が同期しています

手書きメモを取っている場合、メモを取っているタイミングと音声のタイミングが同期され、音声再生位置を選択するとその時のメモを取っている位置を呼び出せるようになりました。音声の要約機能も搭載し、そのままメモに挿入できます。

  • 要約機能

    要約機能も搭載

Samsung Notesはイラストを描き込むことができますが、簡単な絵からイラストを生成するAI機能も搭載されました。「海に三角形を描く」だけでAIがボートや船を生成。下書きから色や背景などを追加した完成イラストを生成するといったこともできるようです。

  • イラスト生成1

    手描きイラストを使った生成AIによるイラスト生成

  • イラスト生成2

    生成AIボタンから「AIスケッチ」を選んで、イラストを囲んで選択したうえで「生成AI」ボタンを押します

  • イラスト生成3

    自動的にイラストが生成されました。きちんとパンダという認識はしたようですが、ちょっと元の絵を生かしすぎていて期待したような絵になりませんでした

  • イラスト生成4

    イラスト風だけでなく水彩画風なども選べます

  • イラスト生成5

    これも元の絵を生かしすぎている感があります

  • イラスト生成6

    左右のスワイプで別のイラストも確認できて、面白い結果になっているものもありました

実際に試したところ、元の絵を生かした形で生成するため、多少の絵心がないと、あまりうまくいかない印象でした。

  • イラスト生成7

    きちんとした絵を描けば……

  • イラスト生成8

    きちんとした結果になるようです

  • ギャラリーアプリからAIスケッチ1

    ギャラリーアプリからもAIスケッチ機能を利用できます

  • ギャラリーアプリからAIスケッチ2

    海辺での写真に、ごくごく簡単なボート(っぽいもの)を描いてみました

  • ギャラリーアプリからAIスケッチ3

    きちんとヨットと認識してくれました。サイズも違和感のないサイズになっているのは驚きました

Samsung NotesでAIスケッチを使ってみる

ギャラリーアプリでAIスケッチを使ってみる

さらに、画像を管理するギャラリーアプリでは、撮影した人物写真を生成AIでイラスト化するポートレートスタジオ機能が搭載されており、コミック風、水彩画風と言った複数のイラストに仕上げてくれます。

  • ポートレートスタジオ機能

    人物写真を使ったポートレートスタジオ機能を搭載しています。人物の顔が写った写真を選び、スタイルを指定するだけで……

  • 作成されたアバターイラスト

    簡単にアバターが作成できます

ポートレートスタジオを使ってみた

音声の翻訳機能も強力で、音声通話のリアルタイム翻訳機能では、標準の通話アプリだけでなく、InstagramやFacebookメッセンジャー、そしてLINEなどのメッセージアプリの音声通話にも対応しました。

  • 16カ国語に対応

    音声通話のリアルタイム翻訳機能は7月末までに16カ国語に対応。年内には20カ国語まで拡大します

  • クイック設定パネルから翻訳機能を利用する

    主要なメッセンジャーアプリに対応。LINEにも対応します。クイック設定パネルから利用します

  • リアルタイム翻訳

    音声とテキストで通話をリアルタイムに翻訳してくれます

対面での会話を通訳する会話モードでは、カバーディスプレイとメインディスプレイで日本語と英語のように通訳結果を表示することで、自分と相手にリアルタイムに翻訳結果を確認できるようになりました。

  • 対面での会話を通訳する会話モード

    相手と自分の双方でテキストを見ながら対話が可能

会話モードで同時通訳機能を使う

新たに搭載された「リスニングモード」は、講演や講義などで長時間の音声をリアルタイムに通訳しながら画面に表示してくれるという機能です。

  • リスニングモード

    会議や講義で相手が長く話すシーンで、リアルタイムにテキスト化と翻訳をしてくれます

  • 日本語から英語への翻訳

    これは日本語で話したものを英語に翻訳しているところ。リアルタイムとは言え、数秒の遅れは生じますが、なかなか便利そうでした

カメラ関連のAI機能としては、オートズーム機能を搭載。撮影時に2人以上を認識して、全員が画面内に収まらない場合はズームアウトして広角に、余白が大きいようなら自動で被写体を中心にズームする機能です。

  • オートズーム機能1

    オートズーム機能のイメージ。この状態からだと……

  • オートズーム機能2

    自動的にズーミングします

  • オートズーム機能3

    一人にズームした状態で、新たに被写体が現れると、その人を画角に収めるためにズームアウトします

オートズーム機能の動作

音声の通訳機能やメッセージの作成、手描きイラストからの生成機能などが行え、Sペンこそ使えませんが、「Z Fold6」と同等の生成AI活用が行えます。

  • PDFの翻訳機能

    生成AI機能ではこのほか、標準のPDFリーダー機能の翻訳機能が便利

  • PDFの翻訳機能

    レイアウトを保ったまま翻訳してくれます。PDF内の画像の文字も翻訳してくれました

折りたたんだときのフレックスウィンドウではカスタマイズ性が向上。Galaxy AIを使ってメールのメッセージ内容に合わせた返信を生成し、折りたたんだまま1タップで返信ができます。AIが壁紙を生成する機能も搭載。例えば人物写真を選ぶと、自動的にその人物の顔を避けて時計位置を設定する、といったカスタマイズ機能を備えています。

  • インタラクティブな壁紙の生成

    インタラクティブな壁紙を生成してくれます

  • 左側面

    左側面

  • 右側面

    右側面

  • 上面

    上面

  • 底面

    底面

なお今回発表の両モデルとも、7世代のOSアップデート、7年間のセキュリティアップデートを保証します。Galaxy AIの新機能は、年末までに順次既存端末にも展開予定です。

イベントの最後にTM Roh氏は、今回もオリンピックモデルを投入することを発表。「Galaxy Z Flip6 Olympic Edition」として出場者に配布されます。その上で、TM Roh氏は、新しい「Z Fold6」と「Z Flip6」では、Galaxy AIによってインテリジェントなフォルダブル体験を提供するとアピールしていました。