2024年7月3日、サードウェーブは「法人向け新製品発表会 2024夏」を開催しました。来季からの社長交代を発表した同社。そこで法人向けである「BtoB」を強化する方針を打ち出しており、今回の発表では具体的な法人向け製品として一気に9製品を紹介しました。

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    今回発表されたワークステーション製品。ハイエンド製品の最大構成だと1100万円を超えます

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    今回発表されたデスクトップ/ノートパソコン。9製品同時発表は大規模なもので、コマーシャル市場に向けた意気込みを感じさせます

発表会ではエヌビディアとインテルの代表が登壇

冒頭、サードウェーブ 副社長の井田晶也氏は法人市場の注力エリアとして「CAD、ゲーム開発、ビジュアル・ビデオプロダクション」の3つを挙げ、業種・業態に特化したターゲットへの取り組みを強化すると改めて説明します。

「GALLERIA」ブランドで培ったハイエンドPC技術をコマーシャル市場でも展開し、自由度の高いカスタマイズで企業ニーズに対応。また、国内生産による迅速な納品体制をアピールします。

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    サードウェーブ 副社長の井田晶也氏。8月から社長になることが発表されており、実質的なトップスピーチ

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    法人向けとして、CAD、ゲーム開発、ビジュアル・ビデオプロダクションの3分野にフォーカス

続いて、いくつかの新製品をアンベールするとともに、重要なパートナーとしてエヌビディア 日本代表とインテル 代表取締役社長が登壇しました。

ステージ上でのアンベールの様子

エヌビディア 日本代表の大崎真考氏は「今回のraytrekには、コンテンツ、ゲーム、シミュレーション、AIまで処理できるRTX 6000 Adaが採用されています。これまでサードウェーブさんとはゲームの製品を多く出していたが、今回は法人市場向けに販売。このraytrek製品はAIデータセンターを使えないスタートアップや個人でAIコンピューティングを行う方々にAIの民主化を先導するでしょう」と両社の関係の深さをアピールします。

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    NVIDIA 日本代表の大崎真考氏

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    NVIDIAの製品とサードウェーブの製品群は重なるとアピール

インテル 代表取締役社長の大野誠氏は「GALLERIAは、ハイエンドデスクトップやゲーミングで先頭を走っており、ゲーミングPCの確固たる地位がワークステーションに拡大することにワクワクしています。世界中のユーザーがAIに関心を持っていると同時にAIでの機械翻訳、音声認識、文字起こし、画像生成、楽曲生成というプライベートなPCならではのユースケースにより、AIがPC利用の中心的な役割を果たすでしょう。今回のraytrekのラインナップで幅広いユースケースに対応し、インテルとサードウェーブのコラボレーションでPC市場の活性化を行いたい」とコメントしていました。

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    インテル 代表取締役社長の大野誠氏

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    フォトセッションでは三社が肩を組んでアピール。発表会に両社長を登壇させるところに強い関係性を感じさせます

ハイエンドワークステーションの最大構成は1100万円超え。サブスク提供も検討したい

次に、サードウェーブ 上席執行役員/法人企画マーケティング統括本部 統括本部長の宮本琢也氏が代表的な製品を紹介しました。

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    サードウェーブ 上席執行役員/法人企画マーケティング統括本部 統括本部長の宮本琢也氏

ワークステーションのraytrek workstation X2630は、Xeon W-2400/W-3400を使用した研究機関向けのエントリモデルという位置づけで、最大RTX 6000 Adaを二基まで搭載可能な製品(想定価格572,000円~、消費税込以下同様)。raytrek workstation N8630は、AMD Ryzen ThreadripperPro 7000WXシリーズを使用し、最大96コアのCPUに加えて最大4基のRTX 6000 Adaを搭載可能な同社のハイエンドワークステーション(想定価格1,560,000円~)です。

N8630は、最大構成時の消費電力が非常に高いため、電源を2つ(1300W+1200W)搭載して対応しているのが特徴。これにより(2系統のコンセントが必要ですが)100V電源で動作し200Vの工事が不要になるとアピールしていました。

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    raytrek workstation X2630。こちらも結構なお値段ですが、AI開発ということを考えるとエントリー機です

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    raytrek workstation N8630。お値段もさることながら、消費電力的に電源1つでは足りないド級製品

ノートパソコンは、raytrek R6-MTとA4-Mを紹介。どちらもCore Ultra 155Hを使用していますが、16インチのR6-MTは、RTX 4060 laptopを採用し、NVIDIA Studio認定を取っている製品で、Studioドライバーを使用しているのが特徴。液晶もWQXGA 240HzでDCI-P3 95%と動画作成に向いた内容だと紹介(想定価格304,960円~)します。

A4-Mは、Core UltraのARCを使用しているものの14インチのQWXGA 120HzでsRGB 95%と本格グラフィックにも対応した製品です(想定価格225,860円~)。

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    raytrek R6-MT。raytrek製品は現在法人向けのブランドなのでドスパラ店舗には陳列されていません

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    こちらはraytrek A4-M

また、mini deskPCとしてTHIRDWAVE HGシリーズも紹介。ディスプレイの裏にも設置できる小型筐体を使用した第14世代Coreプロセッサを採用しています(Core i3-14100を使用したHT3024で想定価格129,800円~)。

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    THIRDWAVE HG5024。超小型筐体ゆえに液晶の裏に取り付けも可能です。THIRDWAVEブランドは一般向け製品なのでドスパラ店舗でも見られるかも

そのほかにノートパソコンとして、raytrek R5-RL5R(想定価格199,100円~)、raytrek R5-RL6R(想定価格248,600円~)、THIRDWAVE DX-M7L-B(想定価格231,980円~)、THIRDWAVE F-14MTL-B(想定価格200,480円~)の4製品も今回リリースされています。

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    raytrek R5-RL6R

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    raytrek R5-RL5R

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    THIRDWAVE DX-M7L-B 法人モデル

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    THIRDWAVE F-14MTL-B 法人モデル。個人モデルはドスパラ秋葉原本店で展示中でした

製品は、ほかのサードウェーブ製品同様に綾瀬工場での国内生産。平塚物流センターが使われるため、最短翌日出荷と短納期なのが魅力です。また、蛯名事務所による開発と品質検証が行われています。

サポート体制は、基本センドバックでオンサイト対応もオプションで用意されるほか、24時間体制のコールセンターを用意。ワークステーションのオンサイト保証(3/5年)は対応レベルに応じて、ブロンズ(平日営業時間受付、翌営業日対応)、シルバー(平日営業時間受付、翌営業日4時間駆け付け目標:時間は拠点のある札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の拠点から30km圏内における数値)、ゴールド(24時間受付、当日4時間駆け付け目標)と3段階を用意しています。

最後にソリューションとしてPCサブスク、レンタル、中古販売・買取、XR、GPUクラウドサービス、BI構築と既存の対応を紹介するとともに、次は“AIもBTO”とサービス部門での対応を強化していきたいと抱負を語りました。

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    raytrek workstation N8630を使用し、機密データを入れた生成AIが動くオフライン環境での生成AIデモです

質疑応答では、現在の法人営業体制と今後の対応に関して、「現在の法人営業の8割がハイタッチ営業で、大学研究室をはじめとして地方では東京から派遣しており、(大阪にも数名を配備しているものの)東京に集中している」と回答。地方に関しては、「地方自治体の入札権を持っているパートナーの力を借りたい」と語るとともに、「全国のドスパラ店舗を法人の窓口にすることを検討し、BtoBの展示会でのタッチポイントを増やしたい」と回答していました。

法人市場への参入は来季から本格化するため、現在はまだ準備不足という感がありますが、「BtoB」の展示会でサードウェーブのブースを見る機会は増えているので、今後多くのビジネス展示会でサードウェーブブースを見ることになるでしょう。

現在、ドスパラ店舗でraytrek製品を見ることができるのは(おそらく)法人営業窓口のある秋葉原本店3Fのみだと思います(秋葉原のサードウェーブ本社にも展示がありますが、誰もが気軽に見に行ける場所とは言えないでしょう)。

日本全国にあるドスパラ店舗は、面積が広いものの、raytrek製品を多く展示できるかというと、やや疑問です。しかし、「展示機は個人向けですが、法人向けモデルもあります」とPOPを出すなど、アピールはできそうなので、夏以降のショップでの対応に期待したいところです。

また、「事前検証として短期的に独自AI生成を行いたいが機材を購入するのは難しく、一方で機密性の高い生データを外部に出したくないのでクラウドはNG」というニーズに対して、「要望が多ければワークステーションのサブスクも検討したい」と回答していました(N8630の価格は156万円~ですが、NVIDIA RTX 6000 Ada 48GB×4枚で670万ほどすることもあり、最大構成だと1100万円を越えるため、即購入できない企業もあるでしょう)。