ヘルメットなしで気軽に利用できる電動マイクロモビリティのシェアサービス最大手の「LUUP(ループ)」。短時間でも手軽に利用できることから、現在は日本全国で8,200以上のポートが存在する人気サービスです。

一方、ユーザー数が多くなることで事故や危険運転などの問題も起きています。そこで、同サービスを提供するLuupは「LUUPの安全・安心アクションプラン 2024」を発表。新プランでは違反者に罰則も科せられることになりました。

  • 都市部を中心に展開するLUUPのポート。特徴的な水色の車体を見かけたことがある人も多いのではないでしょうか?

  • LUUPは現在特定小型原動機付自転車である電動キックボード(写真右)のほか、電動アシスト自転車(写真左)の2モデルを利用できます。中央は今後サービスに追加予定の新モデルプロトタイプ

施行スタートから1年、信号無視や歩道走行が顕著に

昨年2023年7月に国土交通省が改正道路交通法を施行し「特定小型原動機付自転車」という新車両区分を定めました。

「最高速度20km/h以下」などの特定条件をクリアし、特定小型原動機付自転車と認められた車両はヘルメットなしでも公道を走行可能(ヘルメットの着用が推奨されています)。しかも16歳以上であれば免許がなくても運転が可能です。

そして、この特定小型原動機付自転車である電動キックボードを提供するシェアサービスとして人気を集めたのがシェアサービスのLUUPです。

  • LUUPは現在特定小型原動機付自転車である電動キックボード(写真左)だけではなく電動アシスト自転車(写真右)も利用できます

自転車のように気軽に乗れるうえ、電動なので体力も消耗しないLUUPですが、その気軽さゆえに危険運転の危険も数多く指摘されています。

実際に警察庁のデータによると改正道路交通法施行後から今年4月までに、LUUPを含む特定小型原動機付自転車の交通違反・事故の検挙件数は18,316件にものぼっているのです。

  • 警察庁が発表した特定小型原動機付自転車の交通違反・事故のデータ。ここにはもちろんLUUP以外の特定小型原動機付自転車も含まれます

データの「通行区分」とは、歩道走行違反のこと。このほか、信号無視、一時停止違反といった違反が9割以上を占めています。Luupはこれを「特定小型原動機付自転車が自転車のように気軽に乗れるモビリティだけに、軽い気持ちで違反をしてしまうのではないか」と分析しています。

  • 特定小型原動機付自転車は一部の歩道を走行することを許されていますが、このときは「最高時速が6kmになるモード」に切り替えて最高速度表示灯を点滅させるなど、一定のルールがあります

もちろん、サービスを提供しているLuupも違反を良しとしているわけではありません。LUUPを利用するには専用アプリでアカウントを取得する必要がありますが、このときに交通ルールテストを実施。全問正解しないとLUUPを利用できないようになっています。

さらに、アカウント取得後もアプリ起動画面などで交通ルールについてリマインドしたり、安全講習会を開催するといった取り組みも実施しています。しかし、残念ながらLUUPを含めた特定小型原動機付自転車の交通事故件数は、改正道路交通法以降は都内だけでも毎月平均15件ほどで推移。これは改正道路交通法以前の約5倍の数字だそうです。

交通違反は点数制度で罰則化。アカウントの永久凍結も

この問題を解決するため、Luupは6月25日、「LUUPの安全・安心アクションプラン 2024」という安全対策のアップデートを発表しました。

それが「アンケートを通した交通ルールの理解・浸透度合い、啓発活動の認知度調査」「交通違反点数制度による違反者の厳罰化推進」「ヘルメット着用推進に向けた取り組み」「安全な走行をサポートする『ナビ機能』の全国展開」の4つです。

  • LUUPの安全・安心アクションプラン 2024は4つの対策が柱に

このなかでも、ユーザーが一番気になるのが「交通違反点数制度による違反者の厳罰化推進」でしょう。LUUPは現在も飲酒運転やひき逃げ、当て逃げといった悪質な違反をしたユーザーは無期限のアカウント凍結をしています。

新ルールでは、この罰則をより軽微な交通ルール違反にも適用します。交通ルール違反を取り締まられたユーザーは違反内容にあわせて違反点数を加算。違反点数が一定以上になった場合は30日間の利用停止処分となるのです。さらに、利用停止処分後1年以内に違法走行で取り締まられた場合は無期限でLUUPの使用ができなります。

前述したように、Luupは特定小型原動機付自転車ユーザーが違反する理由について「軽い気持ち」を挙げていました。しかし、今後は新アクションプランを実施されることで、緊張感を持ってルールを厳守してくれることを期待しています。

もうひとつの注目ポイントが4つ目の「安全な走行をサポートする『ナビ機能』の全国展開」です。LUUPはキックボードや自転車利用前に専用アプリに「目的地」を指定する必要がありますが、2024年4月より都内・iOSを対象に「NAVITIME API」の自転車ルート検索機能を利用した目的地までのルート表示をするようになりました。

  • LUUPが提供する車体は全台スマートフォンホルダーを装備しています。ナビ機能の投入は、このホルダーがあるからこそともいえます

ここで重要なのが「自転車」ルート検索機能を利用しているということ。自転車用のナビなので、一般的なマップアプリのように特定小型原動機付自転車が本来走行すべきではない歩道や歩道橋を利用するようなルートはリコメンドしません。

ちなみに、Luupによると電動アシスト自転車や電動キックボードなどのシェアリングサービスのアプリ内で、ルートが表示される機能が実装されるのは国内でもLUUPがはじめてだそうです。

座って乗れる、買い物にも便利な座席とカゴ付き新モデルも登場

「LUUPの安全・安心アクションプラン 2024」の発表のほかにも、今冬からLUUPに投入予定の新車体についても発表がありました。それが、座席・カゴ付きの特定小型原付自転車である「電動シートボード」です。

  • 会場に展示されていた試作段階の電動シートボード

最大の特徴は、座席とカゴがついたこと。「電動キックボードは自走するから電動アシスト自転車より楽だけど、座れないのは疲れる」「買い物に使いたいけれど荷物を置く場所がない」というニーズに応えてくれます。Luupによると、座席とカゴがついた特定小型原動機付自転車のシェアリングサービスは日本初だそうです。

新車体の導入でますます便利になりそうなシェア電動マイクロモビリティですが、ユーザーによる交通ルール違反事例が増えればサービス自体にネガティブなイメージが付きかねません。新安全プランの導入により、皆が安心して利用できるサービスになることを願うばかりです。