カギやカバンなどの持ち物に取り付けておくだけで、持ち物の位置をスマホで確認したり、うっかり置き忘れた際にスマホに通知を届ける「忘れ物防止タグ」(スマートトラッカー)。実用性の高いアップルの「AirTag」がダントツの人気を誇っていますが、AirTagも「分厚い」「取り付け用の穴がなく、何かに固定するのにケースが必要」「電池交換が手間」といった欠点があります。

そのようななか、「カード型」「ストラップ穴あり」「ワイヤレスで手軽に充電できる」という特徴を持つカード型の忘れ物防止タグがロジテックから登場し、話題になっています。AirTagと比べて欠点はないのか、いち早く試してみました。

  • iPhoneと組み合わせて使える「探す」ネットワーク対応のカード型忘れ物防止タグ(右下)がロジテックから登場。忘れ物防止タグではスタンダードな存在となったAirTagと比べて実用性や満足度はどうなのか、チェックした

人気のAirTagだが、不満もある

いわゆる忘れ物防止タグは、スマホの普及に合わせるように、2010年代から「Tile」などさまざまな製品が登場しました。しかし、もし持ち物をどこかに置き忘れた場合、自分の忘れ物防止タグが同じ製品のネットワークに接触しないと位置情報が把握できないため、同じ種類の忘れ物タグを持っている人が少ない状況では実用性に欠けたのが実情でした。

しかし、2021年4月に登場したAirTagは、iPhoneを含むアップル製品の「探す」ネットワークを位置情報の把握に利用できる仕組みにしたのが革新的でした。iPhoneを手にしている人がAirTagを付けた持ち物の近くを通れば位置情報が更新できることから、これまでの忘れ物防止タグの欠点を一気に解消。実用性の高さが多くの人に響き、発売以来ヒットを続けています。

  • 幅広い世代にヒットしたおなじみAirTag。1人で複数のAirTagを使っている人も多い

そんな人気のAirTagですが、欠点もあります。

まず、多くの人が指摘しているのが「分厚い」こと。碁石のような形状は見た目には美しいのですが、厚みは8mmほどもあり、サイフなどの小物には入れづらいのが欠点です。

  • AirTagをクレジットカードの形状にするアダプターがサードパーティーから発売されているが、AirTag特有の厚さは変わらないので財布には入れづらい

形状面では「キーホルダーなどを取り付ける穴がなく、別途ケースなどを購入しなければ何かに固定できない」のも欠点です。カバンの中にポンと入れておくだけなら問題ないものの、キーホルダーやカバンの持ち手などに固定するには、何かしらのケースやホルダーを用意する必要があります。

  • AirTagにはストラップ穴などがないので、カバンなどの固定にはケースやホルダーが必須になる

さらに、AirTagは「内蔵のボタン電池を一定の間隔で交換する必要がある」のも欠点といえます。ボタン電池自体は一般的なもので交換も簡単ですが、電池の買い置きがなかった場合は100均などに買いに行く必要があるのが不便。使い切りの電池を消費するのもイマドキではありません。

極薄なのにワイヤレス充電対応、UWBの非対応だけが玉にきず

そのような点に不満を感じている人を狙い撃ちしたかのように登場したのが、ロジテックINAソリューションズのカード型忘れ物防止タグ(実売価格は3,800円前後)。AirTagと同じく「探す」ネットワークに対応した製品ながら、前述のAirTagの欠点をことごとくつぶした仕上がりになっています。

本体はクレジットカードと同じサイズで、厚みはわずか1.7mmと極薄。端にはストラップホールを設けており、ストラップやリングを用意すればさまざまな場所に取り付けられます。

  • 本体はぴったりクレジットカードサイズ。前面右下に電源ボタンを用意する

  • 背面には、ワイヤレス充電部の目安が描かれている

  • 本体の厚さは1.7mmと極薄。ここにバッテリーやワイヤレス充電部が入っているとは思えない

  • 右がクレジットカードを2枚重ねたところ。ほぼ同じ厚みだ

これほど薄いのに、内部に100mAhのリチウムイオンバッテリーとワイヤレス充電機能を搭載しており、手持ちのQiやQi2規格のワイヤレス充電器にポンと載せるだけで充電できるのもポイント。1回の充電で最大6カ月使用でき、最大で300回の繰り返し充電が行えるため、ざっくり150年は持つ計算です。

唯一、「UWB」には対応しない点がAirTagに対する欠点です。UWBは「超広帯域無線通信技術」(Ultra-Wide Band)と呼ばれる技術で、UWBに対応するAirTagは持ち物の位置を高い精度でiPhoneの「探す」アプリ上に示すことができます。このカード型忘れ物防止タグはUWB非対応のため、その機能が利用できません。この点が実用性をどう左右するか、気になっている人も多いでしょう。

  • UWBに対応するAirTagは、地図上で場所を示すだけでなく(左)、無線を利用して距離や方向をかなり正確に表示できる(右)。今回試用したカード型忘れ物防止タグは、地図上に表示する機能はあるが、正確な距離や方向の表示には対応しない

実用的に使えるかをチェック

このような特徴や注意点を持つカード型の忘れ物防止タグ、早速使ってみました。

手にした感触は「ちょっと厚いクレジットカード」でズッシリとした重さもなく、ここに電子回路やバッテリー、ワイヤレス充電部、スピーカーが詰め込まれているとは思えないほど。厚みはクレジットカードの2倍ほどありますが、多くの財布やカードケースに問題なく収まります。収納しても財布がふくらむことはなく、財布の形が崩れるのを嫌う人も満足できるでしょう。

  • クレジットカードよりは厚いが、全体にフラットで突起などはない

  • 財布やカードケースにも問題なく収納できる

まず便利だと感じたのが充電です。手持ちのQi充電器に載せるだけで充電ランプが点灯し、そこそこ厚みのある本革製カードケースに入れた状態でも問題なく充電できました。充電が始まるとカード表面のLEDが点灯するので、充電ポイントを探し当てるのも苦労しません。バッテリーは6カ月ほど持つので、季節ごとに充電すればバッテリー切れになることなく運用できそうです。ワイヤレス充電に対応したことで一切の端子がなく、本体は防水仕様なのも評価できます。

  • ワイヤレス充電器に置くだけで充電できる。表面のLEDで充電状況が確認できるので、位置合わせも面倒ではない

  • ワイヤレス充電器はQiやQi2対応のものが利用できる

  • このようなしっかりとした本革製ケースに入れたままでも充電できた

カード型の忘れ物防止タグはいくつかのメーカーから出ていますが、内蔵バッテリーの交換や充電ができず、電池が切れたら改めて買い直さなければならない製品がほとんど。エコの観点からも、“使い捨て”ではない充電式の本製品は評価できると感じます。

「探す」アプリの操作で音を鳴らすと、パワフルな単音が音の高さを変えつつ10秒ほど鳴り響きます。サイフやカバンなど、ある程度音を遮るものの中に収めた場合でも、音はしっかり確認できました。本機はUWBには対応していないため、カギのありかを自宅内で探す、といった用途は音に頼るしかありませんが、よほど周囲が騒々しい状況でなければ発見につなげられそうです。

【動画】前半がカード型の忘れ物防止タグの音で、後半がAirTagの音。カード型の忘れ物防止タグの音はエレガントではないが、音量が大きいうえに音の高さがいろいろ変化し、耳に留まりやすくなる

【動画】カード類が詰まった分厚い財布に入れてみたが、高い音が通りやすく、音はしっかり確認できた

持ち物がBluetoothの接続範囲を離れた場合、アプリから通知が届く機能もAirTagと同様に利用できます。昨今、キャッシュレス決済の普及で財布を家に置き忘れて外出する人が増えており、財布に忍ばせておけばウッカリの際に活躍してくれそうです。

それぞれの長所を踏まえ、AirTagとの“二刀流”で使いたい

気になったのは「音を出すのがためらわれる状況では位置が把握できない」「本体が薄いので折り曲げや破損がないよう留意して扱う必要がある」という点です。特に、100mAhのバッテリーを内蔵していることから、うっかり折り曲げてバッテリーを破損すると発熱や発火の危険性があります。3Vのボタン電池1つで動き安全なAirTagよりもいくぶん留意して扱う必要があり、子どもには持たせない方がよいかもしれません。

このような注意点があるものの、やはり「極薄のカードサイズ」「ストラップ穴あり」「充電できる」というAirTagにはない点はやはり魅力的。UWBに対応しない欠点はあるものの、持ち物の種類に応じてAirTagと使い分ける“二刀流”で忘れ物を防ぐのがよいでしょう。実売価格は3,800円前後で、実売4,480円前後のAirTagよりも安いのもポイントです。