一昔前までは冷蔵庫といえば食材を冷やすシンプルな家電でした。しかし、最近はどのメーカーも上位モデルに「美味しく」保存する高度な技術を投入しています。

日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)の家庭用冷蔵庫上位モデルも、さまざまな「美味しい技術」を集めた製品。とはいえ、以前からある機能はなかなか注目されにくいもの。ここではその保鮮技術の秘密をひも解いていきましょう。

  • 日立の最新冷蔵庫2モデル。左が外出先から冷蔵庫内をチェックできるカメラ搭載の「R-HXCC62V」、右が真ん中に野菜庫を配置した「R-VW50V」

  • 冷蔵室、野菜室、冷凍室それぞれに特徴的な保鮮機能を搭載しています

野菜が驚くほど長持ちする野菜室

日立の冷蔵庫といえば、野菜を長持ちさせる「新鮮スリープ野菜室」は絶対に知っておいてほしい機能。10年前から登場している機能ですが、今も「この機能があるから日立の冷蔵庫を買う」というファンも多い注目機能です。

その理由は一目瞭然。劣化が早い野菜といえば葉野菜ですが、新鮮スリープ野菜室に保存した小松菜は10日経過しても葉の先までピンとみずみずしいまま保たれています。

  • 新鮮スリープ野菜室対応の野菜室。一見すると普通の野菜室に見えますが……?

  • 新鮮スリープ野菜室非搭載の冷蔵庫で保存した小松菜と、新鮮スリープ野菜室で保存した小松菜。どちらも10日間保存したものです

野菜が長持ちする理由は「酸素」と「湿度」にあります。冷蔵庫は「冷やす」過程で湿気が排除されてしまうため、冷蔵庫内は通常かなり乾燥しています。

しかし、野菜が乾燥でしなびないためには、野菜庫は高湿度であることが重要です。そこで、新鮮スリープ野菜室は仕切りと浅型トレーで野菜庫の一部を密閉。この密閉した空間に水分を閉じ込めて高湿度な空間を作り出すのです。

  • わかりやすいように野菜室をカットして横からみたところ。浅型トレーでフタをすることで、野菜室の一部を密閉していることがわかります

  • ブロッコリーや白菜が入っている空間が新鮮スリープ野菜室。トマトやピーマンのある浅型トレー部は一般的な野菜室なので注意

  • 高湿だと結露が発生してビチョビチョに濡れることも。そこで新鮮スリープ野菜室奥側には余分な湿度を溜める「うるおいユニット」を配置。写真ではスリット状になっている場所の奥に水を排出します

生野菜は保存しているときも呼吸をして成長しています。ただし、成長するということは老化することでもあります。そこで、一部の農家は酸素を減らした「CA貯蔵」という技術で野菜の保存期間を延ばしています。

新鮮スリープ野菜室も、野菜から出るエチレンガスやニオイ成分を、プラチナ触媒で炭酸ガスと水に分解。密閉された新鮮スリープ野菜室の炭酸ガス割合を増やすことで、酸素の割合が少ない空間をつくりだします。ちなみに、野菜から発生するエチレンガスは野菜の老化を早める性質があります。このため、エチレンガスを分解することも「野菜長持ち」の理由のひとつです。

手間ナシで素早い冷凍ができる冷凍室

冷凍技術で注目したいのは「デリシャス冷凍」。これは食材を素早く冷凍させる機能です。肉などの食材は冷凍すると細胞内に氷の結晶ができ、細胞を傷つけることがあります。この傷のために解凍時にドリップ(肉汁)が流出。ドリップには肉の旨みなども入っているため「冷凍した肉は美味しさが落ちる」などと言われます。

冷凍庫内の温度は-18度前後ですが、食材は凍る途中の-1度から-5度までの温度帯で氷の結晶ができやすいことがわかっています。日立のデリシャス冷凍は、この-1度から-5度の温度帯を素早く通過するための急冷技術。具体的には、アルミトレーで食材の熱を素早く奪い、食材の温度に反応して冷風を自動制御します。

  • 冷凍室一番上の浅いトレーが「デリシャス冷凍」のエリア。食材をアルミのトレーにのせることで素早く熱を奪います

常温あるいは温かい食材を素早く冷凍する技術は他メーカーの製品にもあります。しかし、デリシャス冷凍が便利なのは、冷蔵庫が自動的に温度コントロールをするところ。ほとんどの他社製品は、急冷機能をスタートするのにボタン操作が必要なのです。じつは日立も以前は急冷機能にボタン操作を必要としていました。

しかし日立が調査をしたところ、操作が必要になるとユーザーの8割が急冷機能を利用しなかったそうです。そこで、現在のデリシャス冷凍は冷凍室天井部に温度センサーを配置。食材の温度のあわせて自動的に急冷機能を動作させています。

ラップなしでもOKの冷蔵室、美味しさを保つ技術とは

最後の特徴的な機能が、メイン冷蔵室の「まるごとチルド」です。

ほとんどの冷蔵庫は冷蔵室の下側に引き出し式の「チルド室」を備えています。冷蔵室の温度は約2~5度なのに対し、チルド室は約0~3度の温度帯。このため、チルド室は肉や魚などを凍らせずに保存するのに向いています。

ただし、チルド室は前述した浅い引き出し式のため、あまり多くの食材は保存できません。そこで、冷蔵室全体をチルド温度帯にしたのがまるごとチルドなのです。

ちなみに、まるごとチルドは冷蔵室全体の湿度が高いのも特徴。冷蔵庫内は基本的に湿度が低くなりますが、まるごとチルドは湿度を保ったまま温度を下げることができます。このため、食材にラップをしなくても乾燥しにくいという大きなメリットがあります。

  • まるごとチルドは冷蔵室全体が2度前後のチルド温度。一般的な冷蔵庫だとチルド室に当たる引き出し部分はチルドよりさらに低い約-1度の「特選氷温ルーム」になっています

  • まるごとチルド非搭載冷蔵庫で保存したハム(写真左)とまるごとチルドで保存したハム(写真右)。いずれも24時間保存しています。まるごとチルド非搭載冷蔵庫で保存したハムは若干縮んでおり、色もやや濃く変色。触ると硬くなっています

  • 冷蔵庫内が乾燥するのは、冷蔵庫を冷やすための「冷却器」と呼ばれるパーツが庫内の水分を結露させてしまうから。そこで、まるごとチルド搭載機は必要以上の除湿をしない冷蔵室専用の冷却器を内蔵しています

以上、日立のプレミアム冷蔵庫の特徴的な3つの保鮮機能でした。いずれも食材を美味しく長く保存してくれる機能ですが、注目したいのが「手間なし」というポイント。

たとえば新鮮スリープ野菜室は高湿の空間を作り出しますが、余計な水分を自動排出するので「庫内に溜まった水分を掃除する」という手間はいりません。また、デリシャス冷凍も食材の温度を検知して自動的に温度制御。さらに、まるごとチルドは保存時に食材に「ラップをかける」という手間を省いてくれます。

美味しく手間ナシな保存ができる日立のプレミアム冷蔵庫。次の冷蔵庫買い換え時は、ぜひこれらの機能についても思い出してみてください。