関東地方で大雪が降ったかと思えば、早々に春一番が吹き、そして寒の戻り。季節感が狂いそうになりますが、全体的に2024年の暖冬傾向。このため、しっかりと部屋全体を暖めるというよりも、人を狙って暖めるピンポイント暖房に注目が集まっています。

筆者が家電ライターとして製品のレコメンドをしてきた中で、ピンポイントの暖房器具として紹介してきたのがダイキンの「セラムヒート」シリーズです。この冬はセラムヒートシリーズに最新モデル「ハイブリッドセラムヒート(WRH134AS-H)」が登場。自宅で使ってみました。

  • ダイキン「ハイブリッドセラムヒート(WRH134AS-H)」(実勢価格は65,000円前後)

    ダイキン「ハイブリッドセラムヒート(WRH134AS-H)」(実勢価格は65,000円前後)

「輻射熱」のセラムヒートに「温風」をプラス

セラムヒートは、遠赤外線による輻射熱(ふくしゃねつ)を用いる暖房器具です。電源を入れると遠赤外線セラミックヒーターが加熱され、熱を効率的に反射。3~20ミクロンの波長による遠赤外線が体の内部に吸収されて、体内の分子を振動させることによって、体の内から暖かくなる仕組みです。

  • ダイキン「セラムヒート(ERFT11ZS-T)」(実勢価格は30,000円前後)

セラムヒートを稼働させてその前に立つと、強い熱を感じるとともに、体が暖かくなってきます。ハイパワーということで、省エネ運転でも十分な温かさを感じます。

そんなセラムヒートにも少し弱点がありました。それは暖まるのがやや遅いこと。寒いときはすぐに暖まりたいものです。そこで、体の内から暖めるセラムヒートに、温風によってすばやく暖める機能を追加した製品がハイブリッドセラムヒートです。

  • 遠赤外線セラミックヒーターが発する、体内に浸透しやすい波長の遠赤外線によって、体の中から暖まります

これまでのセラムヒートシリーズと比較して、ハイブリッドセラムヒートはデザイン面も一新。本体前面にメタルのパンチングパネルを採用し、いかにも暖房器具という雰囲気をやわらげています。

本体サイズは幅500×高さ522×奥行き226mm、重さは10kg。本体内部には遠赤外線輻射用のセラミックコーティングシーズヒーター×2本と、温風用のリボンヒーター×2本が搭載されています。

運転モードは、ハイブリッド自動、輻射、温風の3通り。ハイブリッド自動運転ではまず、フルパワーの温風運転で足元を暖め、その後は遠赤外線による輻射加熱にシフトする仕組み。温風モードは左右40度ずつスイングするため、前面80度が暖かくなります。輻射モードは温風を使わない動作です。

  • パンチングパネルを取り外したところ。横向きに赤外線輻射用のセラミックコーティングシーズヒーター×2本を配置

新しいピンポイント暖房のカタチ

では、実際にハイブリッドセラムヒートを使ってみたインプレッションです。運転モードは基本のハイブリッド自動運転。本体上面の運転/パワー調節つまみを右に回します。まずはフルパワーでスタート。

すぐに温風が出てきました。温風は優しく床を這うように吹き出してきます。足元はすぐに暖かくなりますが、立っていると体にはほとんど熱を感じません。風量もそれほど強くないため、ハッキリと温風を感じるのは本体前方の2mくらいまででした。

  • シンプルな操作パネル。つまみを回すと電源オン。自動・温風・輻射という3つのモードがあります

しばらくすると輻射加熱の割合がアップし、温風とは異なったカタチで体がぽかぽかしてきます。ハイブリッドセラムヒートの前面は安全性を考慮したパンチングパネルなので、従来モデルのようなむわっとした熱さはほとんどありません。優しく、じんわり暖めるイメージです。

ハイブリッドセラムヒートも「電気ヒーター」ということで、電気代が気になるところでしょう。省エネ機能としては、定期的にパワーを強弱するリズムモードと、人がいないと判断すると15分後に自動停止する人感センサーモードを装備。連続の輻射運転と比べて、約15%の節電ができるとしています。また、遠赤外線によって体の中から暖まるため、一般的なセラミックヒーターと比べてもパワーは半分以下でも、同等以上の暖かさが得られます。

  • ハイブリッド自動運転の場合、温風から輻射へと運転モードが切り替わります

パワーよりも安全性とデザインを優先したモデル

ハイブリッドセラムヒートは安全性への配慮も特徴のひとつ。本体上部にファンを配置し、空気を取り込んで前面パンチングパネルの温度上昇をおさえています。このため、運転中にパンチングパネルに触っても、それほど熱くありません。

通常モードでは、表面温度は85℃以下、平均50℃に保たれており、さらにひかえめモードにすれば50℃以下に。運転中でも、パンチングパネルの上部はややひんやりするくらいです。小さな子どもがいる環境でも安心して使えると感じました。

  • パンチングパネルは触ってもあまり熱くないため、安全性が高いといえます

ただし、使い方には注意が必要な点も。本体デザインがストーブのようにも見えるため、部屋の端に置いて使いたくなりますが、あくまでピンポイント暖房なので、ハッキリと暖まるのは、本体前方の3mほど範囲です。室内全体を暖める使い方には向きません。

純粋な暖房器具としてのパワー自体は、既存のセラムヒートのほうが上。これはハイブリッドセラムヒーターが安全性とデザイン性のために、前面パンチングパネルを採用したためです。大人だけの空間で、しっかりと暖まりたいと考えるなら、従来型のセラムヒートが選択肢になるでしょう。

ハイブリッドセラムヒートはピンポイント暖房としては少し高価ではありますが、安全性とデザイン性を重視した新しいタイプの暖房器具。リビングなど小さな子どもが日中過ごす空間や、お客さんが来るような空間におすすめです。