フルサイズ対応ながら200-800mmの幅広いレンジをカバーするキヤノンの超望遠ズームレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」が登場し、EOS Rシリーズ以外のユーザーからも注目を集めています。“へそ曲がり”な視点で知られる落合カメラマン、描写性能の高さやエクステンダー対応などを高く評価しつつも、ズームリングの操作性が気になったことから、「状況によっては200mmまで広げて撮れる800mmの単焦点レンズ」として使うべし、との結論に至ったそうです。

  • キヤノンが2023年12月8日に発売した新機軸の超望遠ズームレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」。実売価格は32万円前後だが、発表直後から大きな話題となり、現在は納品までに約4カ月かかるほどの人気を集めている

“L”ではないが白い、ちょっと細い超望遠ズーム

流行りの超望遠ズームレンズ界に、いよいよ大御所のダメ押し本格参入である。キヤノン「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」は、競合レンズと明らかなる差別化が可能なテレ端の焦点距離や、短焦点側でも控えめにまとめている開放F値など、RFレンズらしいこだわりと割り切りが息づく、待望のニューモデルだ。

既存の一種エキセントリックな(←ホメてます)超望遠単焦点レンズ「RF800mm F11 IS STM」の存在を知り、なおかつ同レンズ「ならでは」の魅力をしっかり感じ取ることのできるユーザーにとって、このRF200-800mm F6.3-9 IS USMは、どこか似通ったニオイと誘因力を感じる恐れが大。いや、別に恐れるトコロじゃないのだけれど、なんかこう、“同類テイストの危うい魅力”みたいなものが備わっているように感じられる超望遠ズームレンズというのが個人的な第一印象だった。ちなみにワタクシ、RF800mm F11 IS STMは、けっこう好きです。

  • 絞りをF11固定にするなどして圧倒的な小型軽量化と低価格化を図った新機軸の超望遠レンズ「RF800mm F11 IS STM」(2020年7月発売)。実売価格は143,000円前後

特にヒネりのない真っ直ぐなデザインで結果、“筒”感モロ出しの仕上がりになっている外観は、まぁ決してカッコイイというタイプではない。さらに「黒いと格好悪さが際立っちゃうので白くしておこうか」みたいな裏のやりとり(?)を勝手に想像しちゃいたくなる「白レンズ仕上げ」には、さすがに過度の妄想癖は引っ込めておきなさいという自戒の念が生じるワケなのだけど、確かに黒いよりはコチラの方が数段、印象は良いと思う。おかげで、手元でチープさを感じることもない。これは、ズームリングの操作感にも同様のことがいえる。

  • 丸ボケがあると口径食が気になることがあるかもしれないけれど、ボケのテイストそのものは上々(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO25600、1/1000秒、F9)

ズームリングが重いうえ、回転の角度が大きい

焦点距離の変更に伴って全長が変化するタイプだ。しかし、そもそもが「ちょっとズシリ」(2,050g)なレンズであることと、開放F値を頑張りすぎていない(前ダマが極端に大きくはない)レンズ構成により、ズーミングによる重心の変化をことさらに感じることはない。

それよりも、使っていて少々、気になったのは、ズームリングの回転角と重さ。操作の重さは調整できるようになっており、また操作感そのものは非常に良いのだが、他社の同種レンズが、どちらかといえば「指1本で操作できるズームリングの軽さ」と「ワンアクションですべての焦点距離を行き来できる小さな回転角」を重視しているように見えるなか、本レンズの使いこなしには「ズームリングは重め」「大きな画角変更には多くの場合、持ち替えが必要」という独特な使い勝手に、まず慣れなければならない。とはいえ、他社同種レンズの使い勝手を知らなければ、特に気になるところではないとも思うけれど。

  • 最短撮影距離は200mm時に0.8m、800mm時に3.3mと、けっこう頑張っている。テレ端が800mmもの超望遠でありながら200mmまで“引ける”ことを含め、本レンズのスペックには撮影対象を格段に増やしてくれる余裕が備わる(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、200mm、ISO800、1/2000秒、F6.3、-1.3露出補正)

  • ズームリングの操作設定「スムース」だと、レンズを真下に向けたときにゆーっくりレンズが延びる程度の締まり感。素早く画角調整をしようとする場合には、ズームリングのみならずボディ側でもヒネリを加えたくなる程度の重さがあると感じる、ズームリングの操作感ではある(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、672mm、ISO4000、1/800秒、F9)

つまり、他社同種レンズとはキャラクターが異なるということなのだが、このサイズ感とこの価格でテレ端800mmを実現しているからこその“縛り”であるという理解を持てば、その点が不満点につながることはないハズだ。逆に、「他と同じようなもの」ではなく「ひと味違う」ことにこだわった姿勢を評価すべきであるようにも思う。

そんなこんなを考えると、本レンズは「アグレッシブに画角を替えながら連写する」とか、「いったん200mmに引いて被写体の存在を確認した後に素早く800mmで寄って撮る」といったフットワークの軽い使い方より、どちらかというと「焦点距離決め打ち」の単焦点レンズ的な使い方がしっくりくるんじゃないだろうか。その上で「必要に応じ画角の微調整ができる」と認識しておけば万全だ。

何をどう撮るかにもよるけれど、「最大200mmまで引ける800mmレンズ」だと思っておけば、利便性の爆上がりだけを真っ直ぐ享受できることは間違いない。

  • 遠くのものを引き寄せるのみならず、近くの被写体を大胆に切り撮ることも容易にできるテレ端800mmの画角。手持ちで容易にそれが活かせることを一度でも体験すると、望遠好きの心は確実に揺さぶられるだろう。手ブレ補正は5.5段のスペック(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO16000、1/800秒、F10)

  • 予想できない被写体の動きに備え、テレ端よりもチョイと引きながら撮った。エクステンダーRF1.4×併用で、焦点距離1,039mmでの撮影だ(1.4×エクステンダー使用時のテレ端焦点距離は1,120mm)。1,000mmオーバーの画角が手持ちでホイホイ扱えちゃうなんて、イイ時代になったモノである(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、1,039mm、ISO4000、1/4000秒、F14、-1露出補正)

  • エクステンダーRF1.4×使用のテレ端撮影。ピントさえ抜かりなく合わせれば、ご覧の通り想像以上に繊細にしてシャープな仕上がりが得られる。悪くない。いや、こりゃかなりイイ。この場合、瞳認識の発動がピント精度に好結果をもたらしたともいえそうだ(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、1,120mm、ISO640、1/1000秒、F14、-2.3露出補正)

  • ちょっぴりフワッとした仕上がりなのは、手前の枝葉を透かしての撮影であるため。エクステンダーRF1.4×併用のテレ端=1,120mmの手持ち撮影だ。エクステンダーRF1.4×使用時、AF関連の制限はほぼないが(全域AF以外で被写体非検出時、測距可能範囲が横:約90%、縦:約100%となるのみ)、エクステンダーRF2×使用時は「全域AF、全域AF以外とも、横:約40%、縦:約60%」(フルサイズ機の場合)と、測距可能範囲の制限が一律に大きくなるので留意が必要だ。EOS R7/R10/R50などのAPS-C機では、エクステンダーRF2×使用時の測距可能範囲は横:約60%、縦:約80%となる(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、1,120mm、ISO12800、1/1000秒、F14、+1.3露出補正)

600mmとは明らかに違う「テレ端800mm」の余裕

今回、テレ端600mとテレ端800mmには、容易に埋めることのできない決定的な差があると再認識することにもなっている。例えば、鳥の飛翔を撮ろうという場合、400mmクラスだとトリミングのことがどうしても頭を離れないもの。600mmクラスでは、そのあたりにほんのちょっぴり余裕が出てくるのだけど、これが800mmになると、いきなり「これノートリでイケるじゃん!」的なカットが撮れる確率が劇的に向上するからだ。人物撮影やスナップ撮影以外の撮影ジャンルであれば、そのあたりの“効能”は同じように感じられるように思う。

しかも、エクステンダーRF1.4×との相性がいい。これを併用すれば、テレ端は1,120mm! 身近に存在する自然風景(ちなみに、ここに掲載の作例は、すべて近所の公園で撮影したもの)を望遠レンズで切り撮ろうという場合、RF200-800mm F6.3-9 IS USM+RF1.4×のコンビがあれば、およそすべての事象は捉えきれるんじゃないか・・・そんなふうに思わせる、きわめて良好な使用感だった。

宿命的に存在する「レンズの暗さ」に対しては、ボディの高感度画質でフォローするという割り切りで乗り越えるがヨシ。EOS Rのフルサイズモデルであれば、どれを選んでも大きな不満にはつながらないだろう。ただし、動体に対する適応力を相応のレベルに維持したい場合は、連写速度やAFの被写体認識能力などに余裕が必要だ。その点を求めると、どうしても上位機種が欲しくなってくるというのもシビアな現実ではある。

というワケで、テレ端を他社と横並びの600mmに留めず800mmまで伸ばした英断は大正解。んまぁ、ぶっちゃけ、他社に存在する60MPオーバー機を使えば、ざっくり「600mm+トリミングで補えちゃう」領域であると言えないこともないけれど、でも、そこはホレ、「光学」にこだわる心意気が違うってぇハナシよ。そして「画角を200mmまで広げられる800mmレンズ」が備える心理的、かつ実務的な余裕は、一度実際に味わってみないと分からないと思う。機会があればゼヒ!

  • 都会の片隅にある小さな自然を切り撮るのに、おあつらえ向きのズームレンズだった。RFエクステンダー1.4×使用でテレ端1,120mm撮影(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、1,120mm、ISO8000、1/4000秒、F14、-1.3露出補正)

  • テレ端600mmのズームレンズとの比較では、「うーん、ホンネを言えばもうちょっと引き寄せたいところなのだが・・・」と思うことが格段に少なかった。“テレ端800mmの余裕”は、数字が見せる差よりも大きいと感じた次第(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO10000、1/2000秒、F9、+0.7露出補正)

  • ズーム比の大きさを感じさせない、安定した描写が心強い。ただし、それをしっかり引き出すためには、微少なピンボケや不要な被写体ブレを完全に排除する必要がある。繊細な描写のためには、繊細な撮影姿勢が不可欠だ(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO6400、1/4000秒、F10、-1.3露出補正)

  • 逆光耐性はさほど高くない印象だった。付属のフードでカットできる光線状態であれば、ご覧の通り美しい仕上がりが得られるのだが、前ダマに少しでも光が飛び込む状態だとフレアーの発生が顕著。気をつけたいポイントだ(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO4000、1/4000秒、F9、-1.3露出補正)

  • ズームリングの操作感は少々重めの印象に終始する。重さ調整を「スムース」設定にしても「チョイ重」の印象は変わらず(その代わり持ち運び中に不用意に伸びることもほぼないが)、もう少し軽い操作感が欲しいところではあった。もっとも、そこは使い続けるうちに、おそらくはだんだんユルくなってくる部分。不平不満を述べる前に、まずは徹底的に使い込むべし!ってところですかね?(EOS R3+RF200-800mm F6.3-9 IS USM使用、800mm、ISO6400、1/4000秒、F10、-1露出補正)

  • 異色の超望遠ズームレンズに「画角を200mmまで広げられる800mmレンズ」として唯一無二の価値を見いだした落合カメラマン。トリミングに甘えることなく野生動物の一瞬をアップで切り取れる醍醐味をぜひ味わってほしい、と力説する