Microsoftの年次イベント、今年(2023年)のIgniteでは、Microsoft Azureにおける各AI機能の強化や、NVIDIA/AMDのチップで能力を向上させたAzure仮想マシン群、Microsoft Copilotのアプリ&サービス展開が発表された。イベントの方向性はおおむね予想どおりだが、個人的にはARMベースのクラウドネイティブなAzure Cobaltや、AI学習などに用いるAzure Maiaと独自チップへの取り組みが気になる。

  • Ignite 2023で発表したAzure Cobalt

今回はDay 1とDay 2の基調講演のみ視聴したが、Windowsに関する言及は2日目に行われた。ただ、解説もデモンストレーションも短く、恥ずかしながら見落としたしだいである。Ignite 2023 BOOK OF NEWSで再確認すると、少しだがエンドユーザーにも関係する発表があった。そのひとつはWindows Appだ。

  • 現在プレビュー版のWindows App

Azure Virtual DesktopやWindows 365、Microsoft Dev Boxへのリモート接続や、別PCへ接続するために長年使用してきたリモートデスクトップと、各種プロトコルに対応するアプリだ。マルチディスプレイや動的な解像度変更への対応、Microsoft Teamsへの最適化を施している。興味があれば公式ブログ公式ドキュメントを参照してみてほしい。

さて、先の公式ブログでも説明しているように、Windows 365によるGPUサポートがついに始まった。

  • 仮想GPUをサポートするWindows 365 Enterprise

もともとMicrosoft Azureの仮想マシンはNVシリーズを筆頭にGPUをサポートしていたが、Windows 365にも同種のソリューションを展開した形だ。Windows 365 Enterpriseに4GB/12GB/16GBメモリの仮想GPUを用意し、業務内容に適したクラウドPCを選択するのだが、現時点でWindows 365 Businessは対象外。公式ブログでは「一般的に使用されるグラフィックスアプリ向けに最適化」と説明しており、GPUを利用するPCゲーム開発には不向きだという。PCゲームのプレイは可能なのか気になるところだ。

  • Windows 365 Enterpriseで動作するAdobe Substance 3D

2つの新機能に共通するのは「クラウドPCの利用推進」である。もちろん手元にクラウドPCへ接続するPCやタブレットは必要ながら、ハイエンドなGPUは不要。十分なネットワークインフラと高解像度ディスプレイがあればいい。2019年のAzure Virtual Desktop、2021年のWindows 365といったように、クラウドPCの利便性を一歩推し進めたことが印象的だ。

とはいえ、クラウドPCを主たるOSとして利用する場合のコスト増は否めない。Windows 365はエンドユーザー向けソリューションではないため、高額になるのは仕方ないだろう。

一方でローカルPCはハードウェアトラブルとの戦いとなる。筆者はこれまでも、メモリーや電源ユニット、eGPUなどの突然死を経験してきた。同様の経験を持つユーザーは多いだろう。HDDやSSDの経年劣化に伴う信頼性の低下は述べるまでもない。ローカルPCと比較したときの、クラウドPCが備える利点の1つはハードウェアの保守をせずに済むことだ。筆者がWindowsにまつわる記事を寄稿している間はローカルPCが優勢だと思うが、クラウドPCとローカルPCのコントラストはいずれ入れ替わりそうだ。