今年の8月、栃木県宇都宮市に路面電車「宇都宮ライトレール」(愛称はライトライン)が開業しました。JR宇都宮駅東口を起点に、内陸の工業地帯としては日本最大規模を誇る芳賀・高根沢工業団地を結ぶ全長14.6Kmの鉄道です。形態的には路面電車に分類され、同電車が新規で開通するのは実に75年ぶり。さらに、次世代型路面電車(LRT、ライト・レール・トランジット)を導入するなど何かと話題が多く、開業初日から多くの地元住民、鉄道ファン、観光客などで賑わっています。11月15日には、開業から82日で乗客100万人を達成したと発表がありました。
そこで、以前からライトラインを見たい、乗りたい、撮りたいと考えていた私は、この機会に意を決して宇都宮まで出かけてみることにしました。フルサイズミラーレスと望遠ズームレンズを使って撮影したライトラインの写真と、おすすめの撮影ポイントを紹介します。
交換レンズはタムロンの個性派レンズを用意
まず、今回のライトライン取材で用意した機材を紹介します。カメラは、ソニーのフルサイズミラーレス「α7C II」(実売価格は290,000円前後)。ファインダーの出っ張りがないコンパクトサイズながら、最新のAIプロセッシングユニットを搭載して被写体追従性能を大幅に高めたのが特徴です。
レンズは個性的な3本を用意しました。いずれもタムロン製で、「17-50mm F/4 Di III VXD(A068)」(同99,000円前後)、「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)」(同20万円前後)、「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)」(同165,000円前後)です。A068とA058は販売が始まったばかりの最新レンズで、なかでもA058はその開放絞り値から使ってみたいと思っていました。
撮影は、すべての移動にライトラインを使い、そこから難なく歩いて行ける範囲内での撮影としました。また、移動時の負担を減らすために三脚は用いず、すべて手持ちで撮影しています。
黒と黄色のコントラストが美しいライトライン
ライトラインの始発駅である宇都宮駅東口駅で初めて見るライトラインは、ウエッジシェイプの先頭部に黄色と黒色の塗り分けが新鮮。この黄色のラインはどこかで見たことがあるな…と思ったのですが、車両をデザインしたのがGKデザインと知って納得。ヤマハの往年のオートバイ「XS650」「SR400」などのフューエルタンクの一部に見られるグラフィックとよく似ています。これらのバイクは、GKデザインによるデザインであることはいうまでもありません。もともとは、北関東で発生することの多い雷をイメージしたデザインといわれています。
まずは、ロケハンも兼ねて終点の芳賀・高根沢工業団地駅まで行くことに。全線の距離が適度に短く、便数も比較的多いので、移動がさほど苦にならないのもライトラインのいいところ。平日は、朝夕のラッシュアワーは6~8分ほどの間隔で、日中は10分前後の間隔で走っています。
ライトラインの乗り方は、Suica/PASMOなどの交通系ICカードを持っている場合、乗車時はドア横の緑色のカードリーダーにタッチし、降車時はその上にある黄色のカードリーダーにタッチします。現金の場合は、乗車する駅に設置されている整理券発券機から整理券を取り、降車時に先頭車両の運賃箱に規定の運賃を入れます。運賃は運転席の後にあるモニターで確認できます。運賃箱では両替のほか、交通系ICカードのチャージも可能。1日乗車券も発売されており、大人用は1,000円、子ども用は500円となります。大人用には、餃子の街・宇都宮らしく「餃子券」付きの1日乗車券もあり、こちらは1,300円。餃子券は宇都宮餃子会の直営店「来らっせ本店」、または「来らっせパセオ店」で利用できます。
終点まで乗った結果、駅で撮影する駅撮りや、駅からさほど歩かなくてもいい絵が撮れそうなところが多いようです。ただ、線路と道路を仕切るガードパイプやガードレールが設置されているところが多いのが難点。斜め横や真横だと足回り(車輪は構造上見えてないですが)にガードレールやその影がかかってしまいます。望遠レンズで正面寄りに撮ると、車両がすっきり収まる写真になります(実際、そのような写真ばかり撮っていました)。また、関東平野を走るライトラインを俯瞰で狙えるような場所が、歩いてそう遠くない場所に見つけられなかったのはちょっと残念に感じました。
1:宇都宮駅東口駅←→宇都宮大学陽東キャンパス駅
この区間は宇都宮駅東口駅から100mほどは専用軌道区間で、そこから先はクルマと並走する併用軌道区間で宇都宮市街を走行。街のなかを走るライトラインが撮れます。
まず、宇都宮駅東口駅から駅東公園駅まで歩きながら撮影しました。宇都宮駅東口駅から100mほどは専用軌道区間で、その先から併用軌道区間に入ります。市街地は特別目立つような建物はないのですが、それでも地方都市らしい雰囲気です。
2:宇都宮大学陽東キャンパス駅←→清陵高校前駅
この区間は専用軌道区間で、住宅地および田園地帯を走行。平石中央小学校前駅と飛山城跡駅の間には鬼怒川を渡る橋梁が、平石駅近くにはライトラインの車庫があります。
平石駅は島式ホームで上下各1面ずつの2面とし、緩急接続のできる駅となっています。現在は各駅停車のみの運行ですが、将来的には急行の運行も行う予定があるそう。近くには車庫もあり、引き込み線の踏切(ライトラインでは法令の関係上、踏切とは言わないそうです)から車庫で休むライトラインが撮影できます。周囲には田んぼもあり、今回は黄金色になった稲穂を前景にして撮影しました。
飛山城後駅は、駅の前後をつなぐ高架橋の勾配が面白く、望遠レンズで切り取りました。本来は、車両の正面と横の比率が1:1ぐらいになるようなアングルで撮りたかったのですが、ガードパイプで車両の一部が見えなくなってしまうため、アングルの工夫が必要に思えました。この駅と平石中央小学校前駅の間には鬼怒川が流れており、その橋梁を渡るライトラインを撮るのも面白そうでしたが、この間の駅間距離はライトラインのなかで最も距離があり(1.9km)、さらに橋を見渡せる場所はもっと遠い場所となりそうでしたので、今回は挑戦できませんでした。
清陵高校前駅以降の区間は後編でご紹介します。お楽しみに!