Micronの個人向けブランド「Crucial」から、久しぶりにGen 4対応SSDが登場。Micron製の最新232層3D TLC NANDを採用するハイエンドモデルとあって性能が気になるところ。同社のGen 4対応SSDであるP5 Plusとの性能比較も含めたレビューをお届けしよう。

  • ハイエンドGen 4 SSD「Crucial T500」を試す - Micron製232層3D TLC NAND搭載の新型! 速攻性能テスト

    MicronのPCI Express 4.0 x4(Gen 4)対応NVMe SSD「Crucial T500」。参考価格は500GBが139.99ドル、1TBが159.99ドル、2TBが169.99ドル(いずれもヒートシンク非搭載モデル)

最新NANDを積んだハイエンドSSD、気になる実力

Crucial T500は、ハイエンド向けのGen 4対応NVMe SSDだ。Gen 5対応のCrucial T700と同じくMicron製の232層3D TLC NANDフラッシュメモリを採用しており、公称シーケンシャルリードは最大7,400MB/秒、シーケンシャルライトは最大7,000MB/秒とPCI Express 4.0 x4インタフェースの限界に近いスペックを実現している。同ブランドのハイエンド向けGen 4では2021年発売のP5 Plusが存在しているが、公称シーケンシャルリードは最大6,600MB/秒、シーケンシャルライトは最大5,000MB/秒なので、かなりのスペックアップと言える。

容量は500GB/1TB/2TBの3種類。近年では、コスト低減およびコントローラの性能向上もあってDRAMレスのSSDが増えているが、Crucial T500はキャッシュ用のDRAMを搭載。DRAMの存在は空き容量が減ってもランダムアクセス性能を維持できるのが大きなメリットだ。DRAM搭載のハイエンドモデルを求めている人にとってもCrucial T500は注目の存在と言える。そのほかスペックは下記の表にまとめた。

容量 500GB 1TB 2TB
フォームファクタ M.2 2280
インタフェース PCI Express 4.0 x4
プロトコル NVMe 2.0
NANDフラッシュメモリ Micron製232層3D TLC NAND
コントローラ Phison PS5025-E25
シーケンシャルリード 7,200MB/秒 7,300MB/秒 7,400MB/秒
シーケンシャルライト 5,700MB/秒 6,800MB/秒 7,000MB/秒
総書き込み容量(TBW) 300TB 600TB 1,200TB
保証期間 5年(限定保証)
  • コントローラはPhisonの「PS5025-E25」を採用。DRAM搭載SSD向けのハイエンドタイプだ

  • Micron製の232層3D TLC NANDを搭載。写真は2TBモデルだが片面実装だった

  • CrystalDiskInfo 9.1.1での表示結果(2TB版)

  • 1TB版と2TB版にはヒートシンク搭載モデルも用意

  • ヒートシンクの厚みは9.7mm。PS5にも組み込めるサイズだ

ベンチマークテスト、Gen 4の限界に迫る性能

ここからは性能テストに移ろう。まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.4」から実行する。用意したのは、Crucial T500の2TB版と、比較対象としてP5 Plusの1TB版を加えた。テスト環境は以下の通りだ。

【検証環境】
CPU AMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
マザーボード ASUSTeK ROG CROSSHAIR X670E HERO(AMD X670E)
メモリ Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカード MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC(NVIDIA GeForce RTX 4060)
システムSSD Micron T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(22H2)
  • Crucial T500 2TB版のCrystalDiskMark 8.0.4の結果

  • P5 Plus 1TB版のCrystalDiskMark 8.0.4の結果

シーケンシャルリードが7,426.56MB/秒、シーケンシャルライトが7,017.45MB/秒と公称通りの性能を発揮した。Gen 4の限界近くまで到達していると言ってよいだろう。

次は、実際のOffice系、クリエイティブ系、ゲーム系とさまざまなアプリの動作をシミュレートしてその処理性能を見るPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを実行する。アプリに対するレスポンスのよさが分かるテストだ。

  • PCMark 10 - Full System Drive Benchmark

3,678というスコアはGen 4 SSDとしてトップクラスだ。さすがハイエンド向けと言える。P5 Plusは容量が異なる1TB版なので参考程度に見て欲しいが、約24%も高いスコアとなった。

続いて、ゲームの起動やロード、録画などゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試そう。

  • 3DMark - Storage Benchmark

こちらもハイエンド向けらしい高いスコアだ。ゲーム用途でも快適なSSDと言える。詳細を見ると特にゲームロードの速度が優秀だ。

続いて、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでのローディングタイムを見てみよう。

  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

6秒台はかなり優秀な結果だ。3DMarkと同じ傾向が出ている。

続いて、連続書き込み時の速度と温度の推移をチェックしたい。TxBENCHを使って10分間連続でシーケンシャルライトを行ったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追ったときの値だ。テストはマザーボードのヒートシンクを装着し、バラック状態で行っている。

  • テストはマザーボードのヒートシンクを装着して行った

  • 連続書き込み時の速度の推移

  • 連続書き込み時の温度の推移

速度推移だが、Crucial T500の2TB版は約700GBでキャッシュが切れたとみられ、その後は速度が安定しなかったが、平均すると約512MB/秒となった。P5 Plusの1TB版は約320GBで一度目の速度低下が起こり、約45GBでさらに速度低下となった。低下後の平均は約550MB/秒だ。ここまで連続した書き込みを行う機会は少ないと思うが、キャッシュ切れ後もSerial ATA SSD並の速度は維持できるので、極端な遅さを感じることはないだろう。

■お詫びと訂正 (2023年11月29日追記):
記事初出自、速度推移のテストにてキャッシュ切れを確認したデータ量を、「Crucial T500の2TB版は約70GB」「P5 Plusの1TB版は約32GB」と記載していましたが、正しくはそれぞれ、約700GBと約320GBでしたので、該当部分を修正しました。

温度推移を見ると、Crucial T500は2分過ぎに温度が低下しているが、これはキャッシュ切れでデータ転送速度が落ちて負荷が減ったため。大きめのヒートシンクを搭載しているとは言え、ハイエンドクラスで最大50℃はかなり低め。連続した書き込みでも熱の心配はいらないと言ってよいだろう。

最後のPS5での増設を試しておきたい。PS5にSSDを増設するには、Gen 4対応であること、厚み11.25mm以下のヒートシンク搭載が必須だ。そのため、PS5での利用を考えているならヒートシンク搭載版を選ぶほうがよいだろう。

  • PS5の増設にも利用できる。ヒートシンク搭載版なら取り付けるだけなのでラクだ

  • PS5でのフォーマット時に測定される読み込み速度は6,302MB/秒だった(2TB版)

232層NAND採用のGen 4 SSDは低価格かつ高性能で人気となっているが、そこに安心感の高い“Micron製232層3D TLC NAND”を搭載するCrucial T500が切り込んできたのは大きな注目点と言える。DRAMレスが多い中、DRAMを搭載しているのもハイエンド志向のユーザーには魅力的に映るハズ。新たな定番SSDになるのではないだろうか。