世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2023」(以下、TGS2023)が、9月21日~24日に幕張メッセにて開催。4年ぶりに幕張メッセ全館を利用した今回は、787社、2,291タイトル(2023年9月21日発表時点)が出展するなど、過去最大級の規模での開催となった。筆者とマイナビニュースのゲームジャンル担当編集部員の「ゲーム好きチーム」も参加。ふたりとも例年とは少し違う空気を感じていた。

  • 東京ゲームショウ2023

●インフルエンサーが参加することによる活気

まずビジネスデイで例年と違っていたのは、出展社による招待、もしくは事前登録したインフルエンサー・クリエイター陣が参加できたこと。毎年、ビジネスデイも多くの方が来場する本イベントだが、編集部員とも「朝からこんなにも待機列ができて、試遊120~180分待ちのブースが10、20もある印象はなかったよね」と話していた。

海外から取材・配信動画撮影に来た方たちも多く見受けられ、「ゲーム」ジャンルの注目度の高さがよく分かる。ビジネスデイではあったが、いつもとは少し違った活気があるようにも感じた。昨今、動画配信サービスでのゲーム実況や解説なども盛んで、その配信がきっかけでゲームをプレイするユーザーも少なくない。そんな時代に適したイベントの変遷を感じると共に、メディアとしてはどうしていくべきなのかを改めて考えなければいけないと、意図せず痛感することとなった。

●その場で体感できる魅力

多くの人たちでにぎわい活気あふれるなか、筆者たちは会場を一通り回った。各ゲームメーカーだけでなく、ゲーミングPC、イヤホン、アケコン(アーケードコントローラー)、ゲーミングチェアをはじめとした、周辺機器の展示も多数。家具やインテリアのメーカーとして知られるニトリのブースでは、快適なゲーム環境を実現する家具シリーズ「ゲーミング家具」を組み合わせた4種類の「ゲーミングルーム」のコーディネートが用意されていた。

こういったイベントに参加しておきながら、筆者はゲーム環境を整えてきたタイプではない。日常的にゲームをプレイするものの、ゲームプレイの環境づくりには目も向けていなかったといって過言ではない。しかし、実際にそのゲーミングルームでゲームチェアに座わったとき、「あっ、こんなにも快適にプレイできるのか」と正直驚いた。

筆者よりはゲームプレイ環境面にも配慮している編集部員は、マルチリクライニングができるタイプのゲーミング座椅子に感動していた。試遊も含めて、こういった「体感」できるのが「TGS2023」のようなイベントの良さとも言えるだろう。

●『ストリートファイター6』の魅力とメタバースの可能性

時間が許す限り、いくつかのブースで試遊もさせてもらった。試遊では、発売前のタイトルほか、発売中の注目タイトルなども体験できる。そのなかで筆者たちが驚いたのは、カプコンの『STREET FIGHTER 6(ストリートファイター6)』を試遊できるブースの数が多かったことだ。カプコンブースはもちろん、ゲーミングチェアやアーケードコントローラー、ヘッドホンなど周辺機器を展示するブースなどでも、試遊できるタイトルとして『ストリートファイター6』が選ばれていた。ひょっとしたら10近くあったかもしれない。

権利関係など色々なこともあるだろうが、筆者たちはその理由について「伝わりやすさ」もあると感じた。ゲームの映像美、対戦ゲームに求められる操作性、ゲームに興味のある人なら、仮に本ゲームをプレイしたことがなくても操作しやすい分かりやすさ。これほど試遊にも適したタイトルはないかもしれない。『ストリートファイター6』の魅力を改めて感じると共に、世界的に熱を帯びている理由の一端が分かったような気がした。

また、世界最大手メタバースプラットフォームを運営するRoblox社と連携するGeekOutが大きめのブースで出展していたことに、筆者は関心を抱いた。バーチャルワールドでゲームを制作し公開できるプラットフォーム「Roblox」はソーシャルプラットフォームという側面も強く、ユーザーはアバターを作ってさまざまな世界観の異なるバーチャルワールドに参加ができる。いわゆるメタバースというやつだ。

「TGS2023」では、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター社なども出展していた。いま世界的に注目を集めるメタバース。まだまだ誰にとっても身近なものとは言えないかもしれないが、ビジネスデイを回っていて今後、「TGS」でもメタバース関連のブースが増えていく予感がした。

●リアルイベントとして開催される意義

ビジネスデイで各ブース回っていて少し気になったのは、モバイルゲームの数。もちろん、各メーカーが展示など行っており、大きく注目タイトルとして打ち出しているブースもあった。しかし、数年前のような多くのブースがモバイルゲームメインという印象は、個人の感覚にはなるが、それほど感じなかった。世界のモバイルゲーム年間アプリ内課金収益の推移は、2022年は788億ドルと前年比9%近い減少(調査会社「Sensor Tower」の「2023年の世界のモバイルゲーム市場予測」レポートより引用)となっている。とはいえ、市場規模としてはまだまだ大きい。

ただ、モバイルゲームは無料でダウンロードでき、アップデートを繰り返してユーザー満足度を高めていくタイトルも数多くある。それであれば、体感・体験よりも別の宣伝・マーケティングに注力していくという戦略も考えられるだろう。

繰り返しになるが、「TGS2023」の醍醐味のひとつは、「体感」「体験」ができること。だからこそ、バーチャルとの親和性が高いゲームジャンルであっても、リアルで開催される意義があると筆者は思う。ビジネス面も含めて色々と思うところはあったが、全体的にゲーム市場の勢いや盛り上がりは感じられた。来年はどんなブースが出展されるのか。特にモバイルゲーム・メタバース関連企業の動向に注目したい。