Rhizomatiks(ライゾマティクス)の真鍋大度氏と石橋素氏、そして演出振付家・MIKIKO氏(ELEVENPLAY)による新作「“Syn : 身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY」が、10月6日~11月12日にかけて公開となる。
同作は会場に参加者が足を踏み入れ体験する「没入型インスタレーション」で、三者が一様に「これまでにない作品」と形容する。その概要と、使われた技術について聞いた。
「展覧会とパフォーマンスの中間」のインスタレーション
森ビルが10月6日に開業する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」。今回のインスタレーションは、その最上部に位置する「TOKYO NODE」の開館記念企画として実施される。
真鍋氏いわく、“Syn : 身体感覚の新たな地平”は「これまでにない形」を目指して制作を進めており、「展覧会とパフォーマンスの間にあるようなもの」に結実しつつあるという。
最大の特徴は、約1か月にわたって同じ会場で行われる展覧会のような催しでありながら、ELEVENPLAYのダンサーが常時24名出演していること。
また、「写真ではとらえきれない、現場に来ないと体感できない要素がある」(石橋氏)とも明かす。真鍋氏はこの作品でしか得られない体験について以下のように語った。
「今の時代、海外で撮った写真がSNSに上がってきて、 それを見て行ったような気分になれることもあるかもしれません。ですがこの作品には、(会場に)行かないと絶対にわからないような仕掛けや体験があります。
(体験者が)自分の視覚や感覚に対して疑問を覚え、自らの内面に対して問いかけるような作品になるといいなと思っていますし、完成前なので断言は難しいですが、かなり実験的な作品になっているのではないかと思います」(真鍋氏)
体験時間は約70分で、3つのスペースとそれらをつなぐ2つの通路を、鑑賞者自身の進みたいタイミングで見て回る形式。ダンサーと鑑賞者は同じ空間にいて、ある程度近づくこともできるが、「『展示の中に生身のダンサーがいる感覚』に近いと思います」(MIKIKO氏)と説明する。
「常設の箱でのロングラン公演は、演出振付家としての夢でしたので、それが叶うことになり、個人的には嬉しく思っています。生で体験していただけるパフォーマンスが行える時代がやっと戻ってきたので、この時代だからこそ生まれた作品として、発表できればと思います」(MIKIKO氏)」
ライゾマティクスといえば先端技術とアート、パフォーマンスを組み合わせる手法で知られるが、真鍋氏と石橋氏によれば、今回の作品では「最新ではない技術」と昨今話題の「AI」の両方を活用している。
「今回は新しい技術だけでなく、枯れた技術も使っています。。ただ、おそらく誰もやったことがないような使い方をしている部分もあるので、面白い見せ方ができたのではないかと。
AIに関しては普通に、いうなれば『Photoshopを使っています』というのと同じくらいツールとして普通に取り入れています。音楽、映像、テキスト、振付を生成するためにオンラインサービスからオープンソースのライブラリなど様々なものを使っています。」(真鍋氏)
会場となるTOKYO NODEに関して、真鍋氏は「(アーティストたちが)単に作品を持っていくだけではない、研究開発や表現を通じてコミュニティが生まれる場所。例えば日本だと山口情報芸術センター(YCAM)、ヨーロッパならアルスエレクトロニカのような施設が東京にはないとずっと思っていましたが、そういった可能性を秘めた場所がついにできたなと感じています」と期待を語った。
そのこけら落とし公演となる“Syn : 身体感覚の新たな地平”で見せる新たな「体験」に期待したい。
開催概要
- 期間:2023年10月6日~2023年11月12日
- 会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C (東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F)
- 所要時間:約70分(完全入替制)