いまやコードレススティッククリーナーの軽量化は当たり前ですが、そんな「軽量コードレス」の先駆けとなったのはシャープのRACTIVE Airシリーズです。このRACTIVE Airシリーズが、昨年(2022年)モデルで打ち出したのが「低騒音化」という付加価値。

7月26日にシャープは、RACTIVE Airシリーズの新製品(3モデル)を発表。最上位の「EC-SR9」は低騒音化技術をよりブラッシュアップし、別ラインの「EC-PR9」「EC-AR9」にも低騒音化機構を搭載しました。価格はいずれもオープン、推定市場価格は最上位のRACTIVE Air POWER「EC-SR9」(以下、SR9)が99,000円前後、RACTIVE Air POWER「EC-PR9」(以下、PR9)が88,000円前後、RACTIVE Air「EC-AR9」(以下、AR9)が73,000円前後です。3モデルとも8月24日の発売を予定しています。

  • より進化した低騒音化技術を備える最上位モデルのRACTIVE Air POWER「EC-SR9」を手にするマイナビニュース +Digitalの林編集長。SR9の本体サイズは幅221×奥行き267×高さ1,030mm、重さは1.7kg

モーター音、排気音、駆動音の3つに低騒音化対策を実装

RACTIVE Airシリーズにはパワフルな掃除力のRACTIVE Air POWERと、軽さを重視したRACTIVE Airの2シリーズがあります。2023年の新モデルは、RACTIVE Air史上最強パワーかつ低騒音のSR9と、パワー重視のPR9という2モデルを「RACTIVE Air POWER」シリーズとしてラインナップ。

一方で「RACTIVE Air」シリーズの新モデルは、1.2kgという軽さが魅力のAR9と、エントリー機のFR9です。なお、RACTIVE Air POWERはパワー重視と書きましたが、PR9は1.6kg、最上位モデルのSR9でも1.7kgというように、十分「軽い」といえる重さです。

  • 写真右から、最上位モデルのSR9、パワータイプのPR9、軽量タイプのAR9、そして軽量コスパモデルのFR9。FR9のみ5月に発売済みです

前述したように、2022年モデルのもっとも大きな注目ポイントは、最上位モデルだけが備えていた「低騒音化」でした。これは大きく3つの技術をまとめたもの。

1つめは「モーター音の低減」。音が出るモーターを、防振素材を配置した円錐(ファンネル)形状の樹脂カバー「ファンネルサイレンサー」で覆うことで音を抑えています。新製品のSR9は、このカバーに配置された防振材素材を見直し、より低騒音化しています。

  • SR9のカットモデル。ビール瓶を横にしたような形状の樹脂カバーがモーターを覆っています。明るいグレーのパーツには、2022年モデルよりも柔らかい素材の防振素材を採用。防振性能がアップしました

  • 本体からファンネルサイレンサーを抜き出したもの。本体をぐるりと囲んでいるの防振材にも、より遮音性の高い素材を用いています

2つめは「排気音の低減」。風の出口である(ファンネルサイレンサーの)細くすぼまった部分に、風の流れを整える網を配置。さらに、風の出口すぐ外にスポンジのようなパーツを置いて音を吸収します。

最後の3つめが「駆動音の低減」。ヘッド各所に防振吸収剤を配置することで、ヘッドを動かしたときの音を減らします。

  • 「ファンネルサイレンサー」の風の出口。網のようなパーツで風の方向を整えています。出口外にはスポンジのような吸音材があり、漏れ出た音を吸音する仕組みです

  • ヘッドには防振吸収剤を配置し、ヘッドを前後したときの駆動音を減らします

気になる動作音ですが、もちろん無音になるわけではありません。耳につく音が減って「不快な音」と感じにくくなる……というのが実際に音を聞き比べた印象です。言い換えると、人間が不快に感じる音の成分を大きく減らすことで、体感音を小さくしています。

【動画】メディア向けの体験会で行われた動作音の比較デモ。最初に低騒音技術を採用していない2021年モデルのSR7、次に新製品のSR9を動かしています(大きな音が流れます。ご注意ください)

  • 2021年モデルのSR7と、新製品のSR9を比較したグラフ。掃除機が動くときの、音の周波数をあわら下ものです。SR9では特定の音(周波数)のピークがなくなり、おもに高周波成分(甲高い音)が減っています

RACTIVE Airシリーズは、コスパモデル以外の全モデルが低騒音化に

2022年モデルはフラッグシップのSRだけが低騒音仕様となりましたが、2023年モデルはパワータイプのPR9と軽量タイプのAR9も低騒音化。ただ、この2モデルで導入されたのはモーター音と駆動音の低減技術のみ。SR9に採用している排気音の低減技術は省かれています。

  • AR9のカットモデルと、モーター音抑制用のカバー。排気音の整流機構などは持たないので円錐型ではありません。そのぶん、モーターはカバーを含めても比較的コンパクトなサイズ

このほか、新モデルではスタンドに3つの付属品を収納できるアタッチメント収納機能を設けました。スタンド台の素材には再生プラスチックを使用しています。

  • SR9の標準付属品「コンパクトふとん掃除ヘッド」と「はたきノズル」を収納した新スタンド台。スタンド台のサイズは幅257×奥行き268×高さ269mm。収納機能を追加しても、従来モデルと比べてコンパクトになりました

掃除機としてのパワーや使いやすさも見逃せない

ここまでRACTIVE Airならではの「低静音性」にフォーカスしましたが、掃除力の高さや使い勝手のよさも魅力です。吸引能力やヘッドの取り回し、わかりやすいバッテリー残量など、よく考えられています。

【動画】SR9の吸引力を簡単にテスト。壁ぎわとフローリングの溝に粉をまいて吸い取ってみました(大きな音が流れます。ご注意ください)

  • 操作部には、以前から好評だった7セグLEDを搭載。バッテリー残量を分単位でチェック可

  • 着脱式のバッテリーも人気です

筆者が気に入っているのは、Ractive Airの「新スグトル構造」。ヘッドを外してブラシ掃除するときや、ハンディクリーナーにするときに、ヘッドのパイプが自立したままという仕組みです。パイプが立ったままなので、腰をかがめずにヘッドを着脱できます。言葉で書くと地味に思えますが、実際の掃除ではとても便利。

【動画】パイプが自立するため、ヘッドを外して隙間掃除~ヘッド装着、本体からパイプを外してハンディ掃除機~元に戻す……といった動作がラクです

繰り返しになりますが、今回の新製品は「低騒音」に注目。2022年モデルで低騒音化機構を実装したSRシリーズは、2023年モデルでますます低騒音性をアップ。さらに、2023年モデルはミドルクラスまで簡易的ながらも低騒音機構を搭載しました。掃除機の静音性がよくなるのはうれしい進化。一方で、静音性以外の要素は2022年モデルとそれほど変わりません。

ちなみに、2022年モデルのSR8は、購入理由の第1位が「運転音が静か」だったとのこと。シャープは「掃除の音をストレスに感じやすいペットのいる家庭では、とくに需要があるのではないか?」と見ています。

  • 「ネコが掃除の音を嫌がらない!」と、ネットでバズったシャープのTwitter動画

  • シャープ初の「低騒音」掃除機となったEC-SR8(2022年モデル)は、購入理由の半分以上が「運転音が静か」でした。それだけ掃除機の音が気になっている人が多いのでしょう

もちろんペットのいない家庭でも、現在は共働き世帯が増えたことで、帰宅後の夜に掃除をせざるえない状況もあるでしょう。より静音性がアップしたRACTIVE Airは、ユーザーの掃除ストレスを減らしてくれるのではないでしょうか。