パナソニック ハウジングソリューションズの水戸工場を取材してきました。システムバス「BEVAS(ビバス)」を作っている水戸工場、清掃性と意匠性を両立させた「真空圧着工法」に注目です。
ビバスは中位クラスのシステムバス
同社の戸建て向けシステムバスは、最上位ゾーンの「L-CLASS(エルクラス)」、中位ゾーンの「ビバス」、エントリーゾーンの「オフローラ」という3シリーズ。
エルクラスは有機ガラス系の人造大理石を使うほか、最新機器を盛り込み、空間全体を上質に演出します。オフローラは、お手入れしやすい床や浴槽などを組み合わせたシンプルなバス空間が特徴的です。そして2022年8月に発売したビバスは、お手入れ性能に加えて、床材や浴槽の美しさにもこだわったシリーズとなります。
個性的な3つの柄のエプロンをベースに、浴槽色は6種類、床色柄は6種類、壁柄は28種類。274パターンから好みの組み合わせを見つけられます。
ビバスの床
ビバスの床は「3Dプロテクトクリーンフロア」。フッ素・有機ガラス系の素材を配合した特殊なシートを、床表面から排水口接続部までを継ぎ目なく覆っている点が特徴。この「3Dプロテクトクリーンフロア」製造に使われている技術が、「真空圧着工法」です。
真空圧着工法は、まず作業をする「成形ジグ」に浴槽またはエプロンの基材をセットし、特殊フィルムで覆います。その後、上型をセットしたあとボックスをかぶせ、ボックス内を真空状態に。ボックス内のヒーターがフィルムを加熱して、軟化・密着させます。
ここで上側のボックス内を圧空状態にすることで、密着力をアップ。フィルムを密着させた基材から、余分なシート部分を手作業でカットしてできあがりです。
基材に直接プリントする方法だと、リアルな質感を出すのが難しかったとか。真空圧着工法だと、石や皮のような天然素材の質感を再現できるようになり、本物志向の顧客や建築家などからの評判も上々とのこと。
また、シートで覆うため、基材そのものの色や模様などが仕上がりに左右されないというメリットもあります。パナソニック ハウジングソリューションズは今後、リサイクル材の活用も検討仲。リサイクル材は色や模様にばらつきが出ることもあるため、真空圧着工法が活躍しそうです。
シートの表面は汚れが落ちやすいようにコーティング加工し、意匠性とお手入れ性を両立しました。耐久性の面では、風呂イスを約4万3,200回こすりつける耐久試験を行い、約15年相当の使用に耐えられることを確認しています。
「以前は成形と一緒にシートをプレスする方法を採用していました。この場合、シートに剥離(はくり)が起こります。補修する作業が必要で手間がかかりました。真空圧着工法の場合、当初は気泡やシワなどが発生していましたが、真空度や温度をコントロールすることで不具合を解決しました」(パナソニック 住宅設備水戸工場 若林光博工場長)
ビバスの月産台数は300台。現在は人の手でシートの余分な部分をカッティングしていますが、今後の売れ行きしだいで自動化も検討します。
廃フィルムを「ペレット」に再生。材料としてリサイクル
水戸工場の環境配慮技術についても説明がありました。成形工程で排出されるPP(ポリプロピレン)フィルムをリサイクルしています。粉砕、乾燥・脱臭、貯蔵、押出成型、切断といった工程を経てペレットにし、バスカウンターの受け具など水まわり製品の材料として供給しています。こうした再利用化によって、PPフィルムをそのまま焼却する場合と比べて、CO2排出量を77%削減しました。
新しい真空圧着工法が使われているのは、現在のところビバス(バスルーム)の床材とエプロンのみ。リアルな質感が魅力の「ビバス」シリーズはカラーや柄の組み合わせだけでなく、手すりやライトといったオプションも豊富。新築住宅やリフォームで自分好みのバスルームを演出できるでしょう。
パナソニック ハウジングソリューションズがアンケートを実施したところ、バスルームのリフォームにあたり、デザインを重視する人は48%、お手入れ(掃除のしやすさ)を重視する人は46%という結果でした。ビバスはこうしたニーズにも応えてくれそうです。