AMDは6月13日にRyzen Pro 7000シリーズを発表したので、その概要をご紹介したい。

今回発表されたのは、Ryzen 7000シリーズをベースとしたもので、Mobile向けが6製品(Photo01)とDesktop向けが3製品(Photo02)の合計9製品となる。どちらの製品も、基本はConsumer向けの製品と同じであり、ただ動作周波数やTDPなどが微妙に変更されており、倍率もロックとなっている。その一方でAMD Proが有効にされている形だ。

  • Photo01: ベースはRyzen 7040シリーズ。TDP 35~54WのHSと15~28WのUがそれぞれ3製品づつである。ちなみにこのMobile向けは基本的にPro無しのConsumer向けと同一スペック。

    Photo01: ベースはRyzen 7040シリーズ。TDP 35~54WのHSと15~28WのUがそれぞれ3製品づつである。ちなみにこのMobile向けは基本的にPro無しのConsumer向けと同一スペック。

  • Photo02: こちらは全製品TDP 65Wに統一されている。流石に16core製品は65W TDPでは出しにくかったようだ。

    Photo02: こちらは全製品TDP 65Wに統一されている。流石に16core製品は65W TDPでは出しにくかったようだ。

そんな訳で特徴、といっても特に目新しいものは無い。勿論競合であるIntelのvProプロセッサと比較した場合、特にMobile向けは4nmプロセスでの製造とかRDNA 3及びRyzen AIの実装が特徴ではある(Photo03)。これはDesktop向けも似たようなもので(Photo04)、性能/消費電力比の面ではまだ結構なアドバンテージがあるため、これをCommercialに持ち込むことで更にシェアを獲得したいとしている。ちなみにこのCommercial DesktopのTAM、次第に頭打ちとは言え現状からまだ4百万台位上振れすると同社は見ており、この上振れ分を獲得したいという訳だ。

  • Photo03: Intelの側は4nmはともかくとしてRDNA 3に競合できるGPUや専用AI Co-Processorの搭載はMeteor Lakeまでお預けであり、その意味では一歩進んでいるとは言える。

  • Photo04: Ryzen 7000は5nm世代だが、競合するRaptor LakeベースのvProはIntel 7/7+で、実質10nm世代であることを考えると、まだ結構なアドバンテージがあると言える。

  • Photo05: とはいっても、Commercial Desktopのマーケットそのものは結構頭打ちであることは間違いないが、まだシェア的には低いからむしろ伸びる余地がある、という見方も出来る。

さてこういう状況であるから、武器となるのは当然性能と機能ということになる。まず性能についてだが、Ryzen Pro 7040 Mobileに関しての性能評価がこちら(Photo06~11)。Mobileの場合はそれを実装する製品の都合で色々制約が出る関係で、ちょっと苦しい比較もあるが、性能そのもので言えば確かに競合となる製品よりも高速であることが判る。ついでに言えば、M2 Proは(確かにBusiness用途で使うケースがあるのは事実だが)Commercial Mobileという扱いではない気もするのだが。

  • Photo06: CPU性能比較。もっともGeekBench v5とかPassmark 11/PCMark 10などが混在している事を考えると、純粋なCPU性能比較智言いにくいが。

  • Photo07: Core i7-1370Pと比較して12%高速で15%省電力としている。ちなみにこれはTeamsを動かしながら、UL BenchmarkのProcyonを実施した場合の結果との事。

  • Photo08: Teamsだけをひたすら動かす場合、内蔵バッテリーでどれだけ電池寿命が持つかの比較。昨今では動画鑑賞よりは現実的な比較な気はする。

  • Photo09: Apple M2 ProとのCPU性能比較。ただCineBenchの1 ThreadとMulti-Threadsに関しては、アーキテクチャが違うだけに素直に受け取り難い部分もある。

  • Photo10: ハイエンド製品比較で、確かに性能が高いのは判るのだが、V-RAYくらいならともかくNAMDはそもそも現実的では無いだろう、と言う気も。

  • Photo11: こちらは内蔵GPU性能の比較。RTX A500と比較しても十分Professional Graphicsでは利用に耐えるというものだが、どうせならSPECViewperfをやってほしかった気も。

このRyzen Pro 7040 Mobileの搭載製品としては、HP及びLenovoが既にラインナップを用意している(Photo12)他、HPがMobile Workstation向けへの採用を行う事も明らかにされた(Photo13)。

  • Photo12: 一瞬"Ryzen Pro 7030 Mobile?"と思ってしまうが、7030の方はPro無しモデルである。

  • Photo13: Dellの製品が無いのが気になるところ。

一方のDesktop向けだが、まずRyzen 5 Pro 5650GとRyzen 5 Pro 7645のCPU性能比較がこちら(Photo14)。またCore i5-13400との比較がこちら(Photo15)。CPU性能のみの比較なのは、ことRyzen 7000シリーズにに搭載されているGPUは1WGPの本当に最小限の構成で、実際第13世代Coreと比較しても劣るし、Mobile向けコアを転用したRyzen Pro 5000Gシリーズには勿論敵わないからだ。今のところAMDとしてはGPUを強化した(≒Mobile向けのコアを転用した)Desktop向けのSKUは考えて居ないそうで、なのでWorkstation用途には別途Discrete GPUを組み合わせる必要がある。ただOffice Productivity程度であれば現状のもので十分という判断であろう。

  • Photo14: テストの選択が今一つな気はするが、性能がこの程度上がるであろうことは間違いない。

  • Photo15: TDPこそ同じ65Wだが、PL2だと154Wまで跳ね上げる事もあって、性能そのものの差はそれほど大きくない。

AMDは現在、Datacenter部門は好調な一方、Client向けが赤字になるなどちょっと苦しい状況にある。理由は景気の動向と構造的な問題の両方があり、どちらも一朝一夕に解決できるものではないのだが、Zen 4アーキテクチャの投入で少しでもテコ入れしたいというあたりが今回の発表のポイントであろう。