5月29日から開催中のComputexにおいて、Bluetoothの標準化団体である「Bluetooth SIG」の展示が行われていました。同イベントではかなりハードウェアの展示が多い中、Bluetoothの展示は“モノ”ではなく新機能「Auracast」の展示にフォーカス。正式提供に先駆けて、今回実際に体験することができました。

忙しい方向けにざっくりまとめると、「Bluetooth Auracast」とは“一対多”で音声伝送を行う新機能。将来的にはBluetooth 5.xに集約されるのではなく、Bluetooth LE Audioの枠組みの中で提供を予定しているとのことでした。

  • まるで“無線”みたいな新機能「Bluetooth Auracast」を体験! 青いお酒を飲む

展示場内にブースが出ているのかと思いきや、なんと入口そばの特設スペースで展示が行われている「Bluetooth Auracast」。それもそのはず、展示場内はとんでもない密度でWi-FiやらBluetoothやらが使われており、ただでさえ混線しやすい2.4GHz帯は大混雑。せっかくのデモなのに環境に問題があってうまく動作しませんでしたでは話にならないので、理にかなった設営だと感じます。

  • 外壁に出ていたAuracastの広告

  • 会場内、入ってすぐのところにあった特設スペース。展示場から少し距離を開けています

展示内ではBluetooth SIGの担当者に1人ついていただき、体験を通してAuracastについて説明していただけました。Bluetooth Auracastそのものについては上でざっくりとまとめたほか、すでにマイナビニュースではいくつかの記事で同機能について解説済み(関連記事)(関連記事)。詳細についてはこの辺りを読むとよさそうですが、かんたんに言うと“一対多”で音声伝送を行う新機能のことです。今回の体験では、どういうユースケースで便利に使えるかを広報したいという点にフォーカスしているようで、より利用者に寄り添った展示になっていました。

  • 体験用にお借りしたスマートフォンとイヤーバッズ

カウンター内にはバーを模したエリアが設けられており、2つのモニターでそれぞれ違うコンテンツが放映されています。いずれもモニターそのもののスピーカー出力はミュートされており、Auracastを用いることで聞きたいコンテンツを選んで聴取できるようになっているというわけ。筆者固有の日本人的な感覚では「バーであれこれ映像が流れているものなの?」という感じですが、海外ではよくあるのかも。

  • バーっぽい体験エリア。モニターにそれぞれバスケットボールとサッカーが映っています

  • 手元のスマートフォンを使い、Auracastに対応しているデバイスをスキャンしたのがこの写真。Bar TVが2つあります

  • ここではBar TV 1を選択。するとスマートフォンとペアリングしたイヤホンからバスケットボールの音声が流れ始めます。接続にかかる時間はかなり短く、選んだ瞬間に音声出力が始まった点も印象的でした

続いて、より一般的なユースケースを想定したエリアに移動。これまでノートパソコンで再生していたオーディオを複数人で共有するには、イヤホンを片耳ずつ分け合ったりスプリッターで分岐させる必要がありましたが、Auracastならそれぞれが持っているBluetoothイヤホンに音声を送出できるというわけです。

余談ですが、これが完全に普及した未来では、イヤホンを分け合って音楽を聴く創作物のいちシーンはかなり過去のものになりそうだなと思いました(有線イヤホン自体やや過去のものになりつつありますが)。

  • コンテンツを再生している1台のノートパソコンから、複数のBluetoothオーディオ機器に音声を送り出したい! というシチュエーションを想定

  • さっきのパブリックなバーとは違い、今回はパーソナルユース。データを暗号化し、接続にパスコードを要求することも可能です。デモでは1234がパスコードになっており、「こんな弱いパスコードにはしないでね笑」と冗談も

実はこの椅子に座って動画を見ていたマネキン氏、空港で飛行機の搭乗を今か今かと待っていた模様。そんな時にもAuracastは活躍できるそう。チャンネルを素早く「登機門 B23」にあわせることで、添乗員のアナウンスを手軽に聴取可能です。

  • いつになったら搭乗始まるんだよ…とイライラしてきても大丈夫、Auracastが普及すれば、遠くの聞き取りにくいアナウンスもはっきり耳元で聞き取れます

最後に、大規模なカンファレンスを想定したユースケースも紹介されました。登壇者のスピーチがスピーカーの配置等で聞き取りずらかったとしても、Auracastで大人数に配信することで手元のイヤホンを活用できるというわけ。これなら聴取者に合わせた同時通訳等も、チャンネルごとに配置できて便利そう。まさに“無線機(いわゆるトランシーバー)”のようにBluetoothオーディオデバイスを扱うユースケースです。

  • 登壇者のスピーチをイヤホンで聞くことができ、施設や環境の影響を排除しやすくなりそう

ひとつのデバイスから多くのデバイスに音声伝送を行えるようになる「Bluetooth Auracast」。最近は聴取側のデバイスが複数のホストデバイスと同時に接続できる例もちらほらみられるようになってきたので(関連記事)、Bluetoothの使い勝手がさらに高まる新機能には期待大です。用途によっては、これまでトランシーバーが提供してきたユースケースを完全に置き換えることもありそうだと感じました。

おまけ:標準化団体「Bluetooth SIG」のパーティに参加! 青くてキツいオリジナルカクテルを飲む

ここからは完全に余談ですが、取材同日にBluetooth SIGがパーティを開催して軽食とドリンクを振る舞いました。筆者も食事ができると聞いて大喜びで参加。取材のときは「模していた」だけだったバーが本当にバーカウンターへと変貌し、台湾ビール含む各種アルコールを提供したほか、Bluetooth SIGの首脳陣と記念撮影を楽しめました。Bluetooth規格の標準化に参画する業界大手も参加しているのに、大盛り上がりで穏やかな雰囲気。日本でのお堅いメディア向け発表会とは何もかも違うようです。

  • バーは伏線だったのか、これがやりたかっただけだったのかと邪推

  • しかも今回呼ばれたバーテン氏はジャグリングも堪能だそうで、フロアを一気に盛り上げます

  • 大歓声と拍手がおくられました

  • Bluetooth SIGでCMO(最高マーケティング責任者)を務めるKen Kolderup氏が乾杯の音頭を取りました

  • 台湾ビールで乾杯! Bluetoothにお酒をごちそうになることがあるとは思わない

  • Bluetooth、ということで青いオリジナルカクテルが提供されました。マドラーにはAuracastのロゴが入っています。ロングカクテルとは思えない度数ですが、飲みやすくて好み(照明も青いせいで色がわかりにくいですが、上の画像では見やすいです)

  • こちらはオーツミルクベースのBluetoothオリジナルカクテル。どろっとしているのに度数も高く、攻撃力の高い仕上がりでした