2023年4月14日、複合型エンタテインメントゲーミングフェス「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」(以下、DreamHack Japan)の開催に向けたキックオフパーティが、スウェーデン大使館にて開催されました。

記事前半では、キックオフパーティの模様やスウェーデンで生まれた「DreamHack」について紹介し、記事後半では、駐日スウェーデン大使を務めるペールエリック・ヘーグべリさんと、スウェーデン出身で「DreamHack」の歴史を知るヨハンソンさんへのインタビューをお届けします。

1994年、スウェーデンの小学校で始まった「DreamHack」

「DreamHack」は1994年、小学校で行われた小さなLANパーティから始まりました。LANパーティとは、ひとつの会場に参加者がパソコンを持ち寄ってゲームなどを楽しむ文化のことで、「DreamHack」の根幹をなすイベントです。

そして、「DreamHack」は回を重ねるごとに多くの参加者を集め、eスポーツ大会や音楽ライブ、企業ブースなどのコンテンツを増やしながら、イベント規模を拡大。2015年には世界進出を果たし、スウェーデン以外の国や地域でも開催される、世界的なゲーミングフェスへと成長を遂げました。

2023年5月13日、14日には、東アジア圏で初となる「DreamHack Japan」の開催が決定。開催にあたり、スウェーデン大使館がサポートを行っており、今回のキックオフパーティが行われました。

キックオフパーティは、ペールエリック・ヘーグべリ大使による挨拶からスタート。「DreamHack」のフェスティバルディレクターを務めるクリストファー・メリンさんによるオンラインプレゼンなども行われました。

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    挨拶するペールエリック・ヘーグべリ大使

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    「DreamHack」フェスティバルディレクターによるオンラインプレゼンでは「DreamHack」の歴史などを説明

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    スウェーデン・ヨンショーピングで開催される「DreamHack」(Photo: Jann Lipka/imagebank.sweden.se)

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    とてつもない数のパソコンが並ぶ「DreamHack」のLANパーティ(Photo: Rodrigo Rivas Ruiz/imagebank.sweden.se)

また、スウェーデンは「DreamHack」の発祥の地であるだけでなく、『マインクラフト』や『キャンディークラッシュサーガ』、『バトルフィールド』など、誰もが知る世界的ヒットゲームを生み出した国でもあります。統計によれば、世界で8人に1人がスウェーデン産のゲームをプレイしたことがあるといいます。

会場には、アイトラッキング技術を提供するスウェーデンの企業「Tobii」のブースも設けられていました。さまざまな領域で活用されるTobiiのアイトラッキング技術ですが、ゲームでは主にプレイヤーが「今どこを見ているか」がわかるツールとして活用されています。eスポーツ大会やゲーム配信などで、見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

こうしてスウェーデン発祥のものを知ると、スウェーデンから生まれたゲームや技術などが、想像以上に身近なところにあると気づかされます。

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    プレイヤーの目線をゲーム画面上に示すTobiiのアイトラッキング

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    棒状のコンパクトなデバイスでアイトラッキングが可能になる

スウェーデン大使に聞く「DreamHack」成長の背景

この日、駐日スウェーデン大使を務めるペールエリック・ヘーグべリ大使と、スウェーデン出身で「DreamHack」に携わっていた経歴のあるヨハンソンさんにインタビューを行いました。

田舎町にある小学校の教室から始まった「DreamHack」が、世界的なゲーミングフェスへと成長したスウェーデンならではの背景や、「DreamHack」の根幹となったLANパーティの歴史などについて聞いています。

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    ペールエリック・ヘーグべリ大使

LANパーティはもともと、どこにでもある身近なもの

――スウェーデンで生まれた「DreamHack」が、世界的なゲーミングフェスに成長したのには、どのような背景があるのでしょうか?

ペールエリック・ヘーグべリ大使(以下、ヘーグべリ大使):スウェーデンはとても長い間、技術に精通している国です。私が高校に通っていた80年代の前半には、非常に基礎的なものではありましたが、プログラミング学習が導入されていたことを覚えています。政府や学校によって、若い世代が早くからコンピューターを理解し、快適に使えるようにするための取り組みが行われてきました。

ヨハンソンさん(以下、ヨハンソン):スウェーデンでは、80年代の半ばには小学校でもデジタル教育が始まっていて、僕の世代はみんな小さなころからPCに触れる機会がありました。そのため、パソコンやデジタル技術への慣れが早かったのですが、ただ触れるだけではなく、パソコンで何かをつくるという感覚も強く持っていました。

それから、部活とは別に、何かをやろうとするときに、グループをつくって取り組む考え方も根強くあります。なので、まさに「DreamHack」の始まりがそうだったように、パソコン好きな友達が集まって、学校で場所を借りて集まろうという流れになるんですね。そういった背景と、よりデジタル化が進む時代の流れもあって、「DreamHack」の大きな成長につながったと思います。

――スウェーデンでは、eスポーツやLANパーティを楽しむ文化はどれくらい浸透していますか?

ヘーグべリ大使:eスポーツに関しては、ますますスポーツと同様に認識され、観られるようになっていると思います。ニュースでも報道されています。Webのニュースメディアであれば、サッカー、アイスホッケー、eスポーツ、というようにタブが並んでいるイメージですね。

カリキュラムにこそ入っていないものの、eスポーツを課外活動として取り入れている高校もあります。スポーツと同じように、eスポーツをより一般的なものにしようと、地方自治体や政府に働きかける声もありますし、eスポーツに対する理解は、かなり深くなってきているでしょう。

ヨハンソン:僕が子どもだった80年代半ばごろから、小さなグループでパソコンを持って集まるLANパーティはよく行われていました。大人の世代でも、例えば友達と「週末に何かおもしろいことをしよう」と言って、どこかの家を借りて、みんなでパソコンを持ち寄ってゲームを楽しむことも普通です。

僕が生まれ育ったのは小さな町ですが、そこでもLANパーティは身近にあり、どこにでもあるものでした。珍しいものではなかったんです。当時はLANパーティではなく、デモパーティと呼ばれていました。

――どのような理由から、デモパーティと呼ばれていたのでしょうか?

ヨハンソン:例えば、4KBでいかに美しい3Dアニメーションをつくれるかを競うような、デモコンペティションがたくさん行われていたんです。パソコンで普段できることをはるかに超える性能を引き出して、いかにプログラミングしたり、アートや音楽をつくったりできるかを競うために集まることを、デモパーティと呼んでいました。Dream“Hack”という名称は、おそらくそこから来ていると思います。

僕が「DreamHack」に関わったのは、このデモコンペティションがきっかけでした。パソコンやネットワークの性能が良くなるにつれて、ゲームを楽しむ人も増えて、いつしか今のようにゲームがメインになったんです。スウェーデンでは、昔からこうした文化があったので、デモパーティの出身者で、現在ゲーム業界で活躍している人も多くいます。

政府がデジタル化やゲーム産業の取り組みを後押し

――スウェーデンでは、政府がゲーム産業の発展のために積極的に寄与しているそうですが、どのような取り組みが行われていますか?

ヘーグべリ大使:まず前提として、スウェーデンは地理的にはとても大きいですが、人口はわずか約1,000万人と小さな国です。そのため、スウェーデンの市場は小さく、企業はいつの時代でも、常にグローバルな市場を視野に入れなければなりませんでした。なので、今もスウェーデンのスタートアップは、グローバルなアプローチを取っています。

スウェーデンのサービス輸出は相対的に増加していて、現在スウェーデンのサービス輸出のうち4%は、ゲームおよびゲームエンターテイメントビジネスによるものです。スウェーデン政府は、これがとても重要だと捉えています。

ただ、政府はゲームなどの領域にとどまらず、デジタル化やコンピュータースキル向上を支援したいと考えています。したがって、コンピューターやゲームを、子どもから大人、お年寄りまで、幅広い人々にとって快適にアクセスでき、理解しやすいものにすることが、1つの重要な戦略となっています。

――デジタル化の遅れが指摘される日本と比べて、スウェーデンはとても進んでいるように感じます。日本との違いを感じる部分はありますか?

ヘーグべリ大使:日本では、パソコンがただのツールだというイメージが強いかもしれません。ですが、パソコンから開ける世界というのは、とても大きなものです。

また、スウェーデンには、新しいものを発見し、新しいことに挑戦し、国境を超えていこうとするマインドセットがあります。今までのルールを破り、一生懸命働く必要がないように自由な時間をつくるべく、イノベーションしていくのです。そういった考え方が、より歩みを進めている部分もあるでしょう。

――日本では、LANパーティの認知度はまだ高くありません。スウェーデンのように、LANパーティを浸透させるには何が必要だと思いますか?

ヨハンソン:個人的な印象ですが、日本ではまだゲームがあまり良いものとされていないイメージがあります。ゲームをやりすぎると、教育に良くないといった考えです。となると、もし例えば子どもが「LANパーティに3日間行きたい」と言ったとしても、親はそれをなかなか許さないのではないでしょうか。

スウェーデンのLANパーティには、子どもたちがたくさん集まっていました。親が「DreamHack」の会場まで車で送迎して、会場に集まった子どもたちは、大人がいない自分たちだけの世界に浸るんです。これを日本で実現するには、ゲームに対する見方を変えていく必要があるかもしれません。

――最後に、日本の方々に向けてメッセージをお願いします。

ヘーグべリ大使:世界は皆さんが思っているより小さなものです。そして、あなたの生活のなかには、思っている以上にスウェーデンと関連するものがあるでしょう。多くの日本の方が知らないうちに、スウェーデンで生まれたゲームをプレイしたことがあるはずです。もちろん、「DreamHack」のようなイベントもそうです。確かめてみると、きっといろいろなものがスウェーデンと関わりのあるものだと気づきますよ。

5月13日~14日、幕張メッセにて「DreamHack Japan」開催

「DreamHack Japan」は、5月13日から14日まで幕張メッセにて開催。本イベントでは、幕張メッセ国際展示場9-11ホールの「ACTIVITY AREA」と、幕張メッセイベントホールの「LIVE AREA」の2つの会場に分かれ、さまざまなステージ企画やアクティビティが行われます。

各日程で実施されるゲームイベントの内容や、ライブを行う音楽アーティストが続々と発表されていますので、公式Twitter(@DreamHackJapan)にて最新情報をご覧ください。

  • DreamHack Japan

    「DreamHack Japan」会場マップ

  • DreamHack Japan

    イベントが行われるゲームタイトル一覧

  • DreamHack Japan

    出演する音楽アーティスト一覧