パナソニックは2023年3月20日から22日までの3日間、東京都渋谷区表参道の「STUMP BASE」にて、同社の配線器具や照明器具をブラック色でそろえた「BLACK DESIGN SERIES(ブラックデザインシリーズ)」を使用したインスタレーション展示を実施しました。

  • 建築家の佐々木慧氏が担当したインスタレーション展示「BLACK LANDSCAPE」の様子

ブラックデザインシリーズは、従来は白が主流だったスイッチ類やコンセント類、住宅用火災警報器などの製品をブラックカラーでまとめたシリーズです。

  • ブラックデザインシリーズの照明

  • ブラックデザインシリーズの照明や配線器具

3月20日には、インスタレーション展示を担当した佐々木慧氏と、ブラックデザインシリーズを含めてパナソニックの広告やパンフレットを担当するインテリアスタイリストの大谷優依氏、ブラックデザインシリーズのデザインを担当したパナソニック エレクトリックワークス社 デザインセンター シニアデザイナーの近藤高宣氏とのトークセッションが開催されました。

  • トークセッションの様子。左が建築家の佐々木慧氏、右がインテリアスタイリストの大谷優依氏

パナソニックの近藤氏はブラックデザインシリーズについて、「電気設備で黒い商品は以前からもあったのですが、ブラックを軸にして照明と設備をキュレーションしたものです」と話します。

「住宅の中でも床・壁・天井、さまざまなところに電気設備を取り付けるのですが、黒を使うことで床を引き締めたり、あるいはプロダクトをより際立たせたり、さまざまな使い方ができます」(近藤氏)

  • 今回展示された「BLACK LANDSCAPE」は、パナソニックの壁スイッチや煙感知器などを使って作り上げられました。「自然界には存在しない“純粋な黒”で有機的なものを表現することで、今までなかったような風景を作れないかと考えて空間を構成しました」(佐々木慧氏)

ブラックデザインシリーズのメインビジュアルを担当したインテリアスタイリストの大谷優依氏は、黒はナチュラルな空間にも合うとします。

「黒のイメージはかっこいい、男性らしいといったイメージがあると思います。ナチュラルなオークなどのインテリアを空間に入れたやさしい空間の中にも、黒をアクセントカラーで入れるといいと考えています。また、黒はアンティーク家具など濃い色の家具にも取り入れやすいと思います」(大谷氏)

  • インテリアスタイリストの大谷優依氏

  • 黒を取り入れたインテリアコーディネート例

配線器具などの電気設備に黒が求められる背景について、近藤氏は「リフォームからリノベーションに社会が移行していること」、「インダストリアルテイストとバイオフィリックデザインが人気になっていること」の2つを挙げました。

リフォームはマイナスをゼロにするような文脈があるのに対し、リノベーションは既存のものを生かしながら、プラスの価値を作っていくというニュアンスがあります。

「既存の建物から壁や天井などを抜いてスケルトンにしつつ、配線器具は以前のようにできるだけ埋め込むのではなく、『インダストリアル(工業的)』というトレンドで露出するのがいいといったことにつながってきました。さらにコロナ禍でおうち時間を大事にする価値観が高まる中で、グリーンを家の中に取り込む『バイオフィリックデザイン』のトレンドもあり、そこにどう黒が生かされるのか――みたいな流れあるのではないかと感じています」(近藤氏)

ブラックデザインシリーズは、「図と地になること」というコンセプトで仕上げたと近藤氏は続けます。

  • ブラックデザインシリーズのコンセプトを説明するパナソニック エレクトリックワークス社 デザインセンター シニアデザイナーの近藤高宣氏

「まず『図』は主役やアイキャッチのようなもので、それがあることで空間のイメージを作るというとらえ方です。一方の『地』は床・壁・天井に調和もしくは同化し、できるだけ主張せずに背景になることです。同じブラックデザインシリーズの中でも、商品によって役割が分かれてくると考えています」(近藤氏)

「図」になるのはペンダントライトやシーリングファン、フロアスタンドなど、それ自体が目立つ製品で、「地」になるのはダウンライトや煙感知器や配線器具、ダクトなどです。

  • 「図」はペンダントライトやシーリングファン、フロアスタンドなど

  • 「地」はダウンライトや煙感知器や配線器具、ダクトなど

例えば白い空間でも、壁の4面のうち1面だけをグレーなどの色でアクセントにすることは多いそうですが、そのときに壁の配線器具が白いままだと、配線器具の枠が主張してしまいます。そこでブラックデザインシリーズの配線器具を使うと、背景になじむというわけです。

  • 黒い壁の中で、ドア横にある白い配線器具(コンセントと壁スイッチ)が目立つのが分かります

  • 配線器具を黒くすると目立たなくなります

天井を黒くして上に空間があるように見せるインテリアの場合も、ダウンライトや煙感知器、スポットライトなどを黒くすることで天井になじむと近藤氏は説明します。また、今回のブラックデザインシリーズの開発に当たっての苦労については、次のように述べています。

「今まであった商品を統合しながら提案することもあり、配線器具はできるだけ『黒い黒』を作ろうと考えました。そこで樹脂の調達部門に頼み込んで、樹脂でできる限界の黒を追求して商品化に結び付けました。また、一番暗い黒を目指したのと、光の反射をなくすためにシボ(しわ模様)処理をしています。それでも配線器具の厚みやスイッチの形状などを認識できるようにしっかり面を取るなどにこだわりました」(近藤氏)

  • ブラックデザインシリーズの壁スイッチ

  • ブラックデザインシリーズのコンセント

部屋を明るくする照明器具はさておき、壁スイッチなどの配線器具は“縁の下の力持ち”的な存在ともいえます。日々の生活の中で意識することは少ないかもしれません。しかし、実際に白い壁の上に黒い配線器具があると目立ちますし、逆にグレーの壁の中では目立たずに溶け込むということがよく分かります。

家を新築する、もしくはリフォームやリノベーションのタイミング以外では意識することの少ない配線器具ですが、それらを予定している人はブラックデザインシリーズのようなものがあることを意識しておくとよいのではないでしょうか。