独立行政法人 国民生活センターは3月15日、糖質を低減できるとうたった電気炊飯器(いわゆる「糖質カット炊飯器」)6製品について、通常炊飯と比較した糖質カット効果を検証したと発表しました。具体的な検証製品は、次の6製品です。

  • 糖質カット炊飯器(AX-RC3)/販売元:AINX、輸入元:アジアインフォネット
  • IHジャー炊飯器 5.5合(RC-IJH50-W)/アイリスオーヤマ
  • ヘルシーライスクッカー(RHR-1)/販売元:ウィナーズ
  • 糖質カット炊飯器(SY-138)/ソウイジャパン
  • LOCABO(JM-C20E-W)/販売元:forty-four
  • 糖質カット炊飯器(VS-HI01BE)/輸入元:ベルソス

国民生活センターでは検証の結果、「糖質カット炊飯のご飯のほうが糖質の割合は低かったが、メーカー・販売事業者がうたう低減率は満たさないと考えられる。また、同じ量の米を炊いた場合、含まれる糖質の総量に大きな差は見られなかった」と結論付けました。メーカーがうたう糖質カットに関する記述は、「健康保持増進などに効果があると受けとれる記載があり、消費者の誤認を招いたり、景品表示法上問題となる恐れがある」とも注意を呼び掛けています。

  • 国民生活センターの検証結果。上の図は、ご飯100g当たりの糖質(でん粉)の量の比較。すべての銘柄で、「通常炊飯」より「糖質カット炊飯」の飯の方が糖質の割合は低かったものの、5銘柄中4銘柄で、広告などでうたわれていた糖質の低減率を満たさないと考えられるとした。また、下の図は、同量の米(合)から炊いた飯の重量および糖質(でん粉)の総量。同じ量の米から炊いたご飯は、「通常炊飯」よりも「糖質カット炊飯」の飯の方が約1~3割重かったが、含まれる糖質(でん粉)の総量に大きな差はみられなかったとした

同センターではメーカー・事業者に対し、糖質の低減率を広告・表示する際には炊飯条件を明示したり、健康保持増進に関する記載が誤認を招く恐れがあるため改善したりするよう要望するとしています。また、消費者庁に対しても、メーカー・事業者を指導するよう、要望を送るとしています。

この発表を受け3月16日、テストに使われた製品のメーカー・販売事業者がそれぞれコメントを掲出。各メーカー・販売事業者のコメントの要旨をまとめました。なお、1社(ベルソス)のみ商品ページがなく、告知も出していません(2023年3月17日15時時点)。

AINX

当社としては複数回の低糖質炊飯、検証テストを行ったうえで最大値のカット率を明記している。国民生活センターの試験結果は、検査時のお米の品種および炊飯合数が、当社の試験とは異なるため、数値が異なるものであると同センターに回答する予定。製品としては問題ないので、販売を継続する。(該当PDF

  • AINXの発表PDF(一部)

アイリスオーヤマ

国民生活センターによるテストで、当社製品が広告などの表示よりも糖質低減の割合が低いかのような報道がされているが、そのような事実はない。国民生活センターが実施したテストのうち、当社製品では、広告などで表示している低減率を満たしている結果になっている。(該当ニュースリリース

  • アイリスオーヤマの発表文に掲載されていた図(同社ニュースリリースより)

ウィナーズ

国民生活センターから製品の表示について、改善要望があった。これを受け、糖質カット炊飯に関する表示を改善する。炊飯条件を明示するほか、「糖質の低減比較は炊飯後に同重量(100g)を比較した数値になります。炊飯後の全量を比較したものではありません。食べるごはんの量に注意してください。」「本製品は疾病の治療、予防を目的としたものではありません。」といった注意書きを追加する。(該当ニュースリリース

  • ウィナーズの発表文(一部)

ソウイジャパン

糖質カット率については、SGS香港(SGSは検査、検証、試験、認証サービスを提供する外部機関)で検証テストを行っており、表記内容は当社で複数回の炊飯テストを行ったうえでの最大カット率を明記している。当社が実施した検査方法と国民生活センターが実施した検査方法、炊飯条件などが異なることが数字の違いの要因と考えられる。(該当発表文

  • ソウイジャパンの発表文(一部)

forty-four

該当製品でうたう糖質低減率「最大45%カット」は、外部の検査機関4社で、この表示を上回る検査結果が確認できているため、表示に誤りはない。国民生活センターの結果は慎重に評価するが、お米は収穫する地域、環境、品種、保存条件、精米時期などにより含有成分が異なり、糖質カット率に影響するため、炊飯条件次第では最大低減率に至らない場合もある。今後は注記を記載するなど改善策を実施する。(Makuakeにおける発表文製品サイトにおける発表文

  • forty-fourの発表文(一部)

使用する際は食べるご飯の量に注意

国民生活センターが検証を実施した背景には、糖質カット炊飯器に関する相談の増加があります。センターに寄せられる相談などを収集するシステム「PIO-NET」(全国消費生活情報ネットワークシステム)には、「表示どおりに糖質がカットされるのかが疑わしい」「糖質カット炊飯器を使用しているが血糖値に変化がない」「説明書どおりに炊いたが、お粥だった」など、2017年度以降の約6年間で250件の相談が寄せられたといいます。

検査結果を受け、国民生活センターから消費者へのアドバイスとして、次の2つが挙げられています。

  • 同じ量の米から炊いたごはんに含まれる糖質の総量は、通常の炊飯の場合と大きな差はみられません。使用する際は、食べるごはんの量に注意するようにしましょう

  • うたわれている低減率にするにはどう炊いたらよいか、事業者に確認するようにしましょう