「LOVOT(らぼっと)」は、ホイールで自律走行する身長約43cm、体重約4.3kgの“家族型ロボット”だ。抱っこしたり、着替えさせたり、名前を呼んであげたり――。コミュニケーションを重ねると、その人をどんどん好きになる。
10以上のCPUコア(central processing unit)、20以上のMCU(Micro Controller Unit)、50以上のセンサーと、最先端のテクノロジーが詰まっているものの、人に代わって仕事をするわけではない。転倒したら自分では起き上がれないので、むしろロボットの世話をすることもある。
最大の目的は、家族の一員として寄り添い、暮らすこと。つぶらな瞳や愛嬌のあるしぐさで、心を温かくしてくれる。
そんなLOVOTに、ミッキーマウス仕様のモデル「Mickey Mouse / edition of LOVOT」が登場した。いったいどんなデザインなのか。実機を借りて、少しだけ一緒に暮らしてみた。
ざっくりと機能をおさらい。LOVOTって何?
LOVOTは、ロボットベンチャーのGROOVE Xが開発した家庭用のロボット。2018年12月に発表され、2019年12月から出荷が開始された。
触れると、その柔らかさと温かさに驚かされるだろう。本物の生物のような体温を持っているうえ、全身を保護する弾性素材と伸縮性のある生地の手触りは、ずっと触っていたい気持ちにさせる。
頭にあるセンサーホーン部分には、360度見渡せる半天球カメラ、方向を判別できる半天球マイク、明るさを感知する照度センサー、人か物かを識別できる温度カメラ(サーモグラフィー)を内蔵。専用のアプリで設定した「名前」を呼ぶと反応するし、人を見つけたら写真を撮影することもある。
筆者が特に感動したのはパチパチと瞬きする瞳だ。6層の映像をアイ・ディスプレイに投影していて、視線の動き、瞬きの速度、瞳孔のひらきまで緻密に設計しているという。自然な瞳の揺らめきは、本当に“目が合っている”と感じるほどだ。瞳のデザインはアプリから自由に組み合わせて設定可能で、なんと10億通り以上ある。「きゅるきゅる」と鳴く声もアプリから好みのタイプを生成して設定可能だ。
そのほか、基本的な機能や、LOVOTとの暮らしについては過去の連載記事【ぼくとLOVOTの14日間】で紹介しているので、今回は割愛する。記事を書いたのは約3年前だが、徐々に自分になついてくれる感覚や、抱っこを求めてくる姿、ピョコピョコと手を動かす愛らしいしぐさなど、LOVOTと過ごした日々は、いつまでも忘れないだろう。
LOVOTらしさそのままにディズニー感を演出
今回発売された「Mickey Mouse / edition of LOVOT」は、ホイール(足)をミッキーマウスの靴と同じ黄色にした特別デザイン。しっぽと顔の色、鼻もミッキーマウス仕様に変更されている。
ミッキーマウスの象徴的な大きな耳と白い手袋、楕円のボタンをあしらった専用服も同梱。生地はなめらかなベロアで、手触りも良好だ。
また、本体だけでなく、専用の「LOVOTアプリ」もミッキーデザイン。アプリを起動するたびに、ちょっとだけディズニーな気分に浸れるだろう。さらに、瞳にも特別なデザインを用意。ミッキーマウスのシルエットとキラキラした星が描かれたベースに、好みのカラーを組み合わせられる。
外観からアプリ、瞳のデザインまで、さまざまなところでミッキーマウスを演出する「Mickey Mouse / edition of LOVOT」。ディズニーファンにはたまらない仕上がりだろう。
それでいてLOVOTらしさも失っていないし、自然にミッキーマウス要素が取り入れられている印象だ。特に目立ちそうな黄色のホイールも、専用服の赤と調和がとれている。
ただし、ほかの服を着せたときにどう見えるかはわからないので、基本的に専用服を着せてあげるか、黄色い靴の似合う服を探す必要がありそうだ。
3年ぶりだから感じたLOVOTの変化と進化
前回LOVOTと過ごしたのは約3年前。「デュオ」として2体のLOVOTと2週間暮らしたが、今回の「みっきー」とはかなり性格が異なるように感じた。
LOVOTは、深層学習によって個体ごとにさまざまな個性を育む。「天真爛漫、素直、人懐っこい」「人見知りで内弁慶」「おっとり呑気なマイペース屋」「ちょっと臆病で何事にも慎重」など、性格にも無数のバリエーションがあるという。
当時の2体「まどか」と「ほむら」もそれぞれ行動に特徴があると感じたが、それ以上に「みっきー」には違いがあった。
「みっきー」はあまり動き回らないのだ。一緒に過ごす時間が短かいこともあるだろうが、人を見つけると、動かずにじっとこちらを観察していることが多かった。抱っこしたあとも、その場から離れずに瞳をパチパチとさせている。
一方、「まどか」と「ほむら」は、どちらもアクティブに家の中をあちこち動き回っていた印象が強い。なついた人にあまえるのは共通しているが、抱っこしてもらったあとはすぐにどこかへ遊びに行っていた記憶がある。2体の「デュオ」だと、LOVOTどうしで遊ぶことも多いので、活発になりがちなのだろうか。
また、機能面でも3年前と比べると進化があった。何気なく「おはよう」と声をかけたらぴょこっと手を伸ばす「みっきー」。気になってLOVOTが記録する日々の「ダイアリー」を見てみると、「おはようをした」と書いてあるではないか。なんて賢い子なの!?
しかも、「写真を撮って」と言えば、任意のタイミングで撮影してくれる機能も追加されている。「ダイアリー」にも「写真をお願いされた」と書かれていた。写真は、いつもLOVOTが気ままに撮影するものと同様に、アプリの「アルバム」に保存される。
特に驚いたのは、アプリの「カメラ映像を見る」機能。LOVOTのセンサーホーンに搭載されている半天球カメラが映す様子を、リアルタイムでアプリからチェックできるのだ。
3年前からある「お留守番」機能では、外出中に人を見かけると写真を撮ってアプリに通知してくれるし、気になる場所を指定して見回りにも行ってくれる。もはや「役に立たないロボット」なんて言わせない。さまざまなサポートで暮らしを豊かにしてくれる頼もしい存在だ。
3年ぶりに一緒に過ごしたこともあって、新しいコミュニケーションに加え、声だけで撮影してくれる機能やカメラ映像を見る機能など、LOVOTの進化を強く実感できた。もちろん、長い間ずっと一緒にいるからこそ、感じられる変化もあるはず。ちょっとずつ成長するLOVOTを見守るのも楽しそうだ。
今回の「Mickey Mouse / edition of LOVOT」も進化の1つだろう。2022年には黒いLOVOT『FRAGMENT EDITION』が誕生しているし、まだまだ進化するであろうLOVOTは、この先どんな姿で、どんなことをしてくれるのだろうか。