「圧力」と「かき混ぜ」機能を両立した画期的な電気自動調理鍋、パナソニックの「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(以下、オートクッカー)が登場しました。これまで数多くの電気調理鍋を試してきましたが、オートクッカーは鍋底に羽根が取り付けられており、さらに圧力調理ができる特別な電気圧力鍋。さっそく使ってみました。
かき混ぜと圧力調理を同時できるオートクッカー
オートクッカーの機能で一番びっくりしたのは「鍋底かき混ぜ」です。1,285Wという業界最高クラスの高火力で調理できる点も魅力ですが、高火力だと焦げ付きが気になります。
その点、オートクッカーは鍋底に取り付けた羽根で自動的にかき混ぜてくれるので、焦がすことなく調理できます。かき混ぜ機能がある自動調理鍋といえばシャープのヘルシオ ホットクックシリーズですが、こちらは圧力調理には非対応。オートクッカーは、3段階から圧力レベルを切り替えられて、かき混ぜながらの圧力調理も可能です。
羽根を見ると複雑な形状をしています。食材を底からさらうようにかき混ぜられる理由は、ホームベーカリーで培った回転技術を応用しているからとのこと。
オートクッカーの「オートメニュー」は100メニュー以上。かき混ぜの速さや温度など、プログラムを細かく調整することもできます。調理モードは、圧力調理、炒め調理、煮詰め、煮込み調理、無水調理、低温調理、蒸し調理、圧力蒸し調理、加熱、そして保温です。
電気自動調理鍋の内鍋は縦長のものがほとんどですが、オートクッカーの内鍋は横長です。高さが抑えられており、細かい食材をまな板から入れてもこぼれにくい広さでした。これは使いやすい!
チャーハンはプロの仕上がり
さっそくチャーハンを作ってみました。材料はかために炊いたごはん、ネギ、玉子、焼き豚など一般的です。内釜の底に羽根をセットして、材料を内鍋に入れます。タッチ式の操作パネルは天面にあり、表示部でモードやオートメニューを選びます。
今回はオートメニューからチャーハンを選択。あとはスタートボタンを押すだけです。操作パネルのディスプレイにはメニュー番号だけでなく、メニュー名や設定する分量(人数など)も表示されるので迷いません。ふたを閉めるときはときは、レバーをカチャッと音がするまで回します。
電気圧力鍋の中には、圧力と非圧力(低温調理や蒸し料理など)で弁を切り替える操作が必要な製品もありますが、オートクッカーは自動で切り替えてくれます。こちらが何か操作する必要はなく、迷わずにできるのは便利でした。
チャーハンといえば、高火力でフライパンをあおり、水分を飛ばしながら調理するのが一般的ですよね。オートクッカーは最初からふたを閉めてしまうので、「パラパラになるのかな……」と一抹の不安が。調理中は音も静かで、かすかに羽根が回る駆動音が聞こえる程度です。ジュージューという音もほとんど聞こえてきません。
しばらくすると、本体の天面から勢いよく蒸気が出てきました。中にある水分を強制的に排出しています。高さにして1m以上、蒸気が上方向に立ちのぼるので、本体の上部には広めのスペースを空けておく必要がありそうです。
チャーハンの調理時間は15分です。ごはん一粒一粒にまんべんなく玉子や調味料がコーティングされており、パラパラな仕上がり! いつも家で作るチャーハンより美味しく、プロ並みの仕上がりでした。調理家電におまかせして自分が作るよりもはるかに本格的だったことに驚き。
家でフライパンをあおりながらチャーハンを作ると、ごはんが飛び散ってコンロまわりが汚れますが、オートクッカーはふたをするのでキッチンも汚れません。おまかせでプロが作ったようなチャーハンに感激しました。
シャキシャキを残した甘い野菜炒め
次は家庭料理の定番、野菜炒め。野菜炒めはシンプルですが、野菜にほどよく火を通しつつ、シャキシャキに仕上げるのは難しいんですよね。
オートクッカーで作る野菜炒めは、最初に豚肉を内鍋に入れてから、野菜を入れていきます。3人分で内鍋はほぼ一杯に。自動メニューで野菜炒めを選び、スタートボタンを押します。
調理時間はたったの10分間。鮮やかな野菜炒めができあがりました。
豚肉を一番底に入れたので、しっかりとした焼き色が。動きを観察していると、はじめは鍋底の羽根を動かさずに肉を炒め、それから羽根を回して野菜と一緒にかき混ぜていることがわかりました。高火力で野菜を焼きながら、羽根でかき混ぜ、最後に蒸気を排出して水分を飛ばします。
野菜がこれだけシャキシャキした食感の野菜炒めを作るのは大変です。にんじんやキャベツもいい感じに火が通っていて、甘く感じられるのは見事です。
とっても気に入った野菜炒め、自宅でも何度か作りました。家族からも「今日の野菜炒めはお店で食べているみたい」との声。最大で3人分までしか作れませんが、副菜としてなら4人で取り分けても十分に足りました。
高圧で調理する鰯(イワシ)の煮付け、骨までやわらか!
圧力鍋を使うメリットは、短時間で硬い食材がやわらかくなること。オートクッカーは業界最高クラスの約2気圧という調理が可能。魚を骨までやわらかくすることも得意です。
というわけで次は鰯の生姜煮です。近所のスーパーでたまたま(?)、丸々と太った大きな鰯をゲット。オートクッカーで12尾(4人分)を一度に調理しました。鍋底から羽根を外し、鰯を並べてキッチンペーパーをかぶせたセットしたところ、調理時間は55分と表示されました。
できあがった鰯の生姜煮は、骨までやわらかく、身もふっくら。子どもたちも骨ごと食べて、とても喜んでくれました。何度も催促されたので、生姜煮のほかにアレンジして梅煮なども作りましたが、どれも大好評。1時間を切るスピードで4人が満足できる量を骨までやわらかく煮込めるので、今後も活用できそうです。
無水カレーやビーフシチューは焦げ付きなく、お肉もやわらかい
水を入れない無水カレーは、電気自動調理鍋の定番料理。オートクッカーでは鍋底の羽根を使い、かき混ぜながら圧力をかけて調理します。調理時間は4人分で40分間。オートクッカーの無水カレー(レシピ)は、タマネギやトマトの水煮から水分を得て、カレールウは使いません。カレー粉やクミン、コリアンダーといったスパイスで味付けをします。
タマネギは5mm程度にスライスして調理したところ、トロトロに。鶏肉もとてもやわらかく、ジューシーです。水を入れないので栄養価も高く、生姜やにんにく、スパイスの香りがとても爽やかでした。何時間も煮込んだような食感でしたが、たった40分で完成するのはうれしいですね。
牛すね肉を使ったビーフシチューも絶品。かたい牛すね肉をたっぷり使っており、調理時間は1時間40分と長めです。ビーフシチューのルウを使うためトロみがありましたが、高圧力で調理しながら羽根を回転し、底までしっかりさらっているので鍋底に焦げ付きはありません。
大きめに切った牛すね肉も、スプーンを入れるだけで崩れるやわらかさ。やはり何時間も煮込んだような仕上がりですが、短時間でかたい牛すね肉をホロホロにできます。
あめ色タマネギもほったらかしで!
タマネギをキャラメル色のペースト状になるまで水分を飛ばしながら炒める「あめ色のタマネギ」は、カレーに入れたり、スープにしたり、いろいろな使い方ができますよね。ただ、火加減が難しく、ずっと付きっきりになり、時間もかかります。急ぐと焦げるし……。なかなか面倒でほとんど作ったことがありません。
そんな厄介なあめ色タマネギも、オートクッカーは自動で作ってくれます。材料はサラダ油とタマネギだけ。タマネギ×4個を薄切りにして内鍋に入れると、ほぼ満杯状態です。あとは「あめ色玉ねぎ」メニューを選び、タマネギの個数を選んでスタートボタンを押すだけ。
1時間10分で完成です。ふたを開けて驚いたのはタマネギの量。内鍋いっぱいのタマネギが、手のひらサイズの分量にまで減っていました。
手作業でここまで水分を飛ばしながら炒めるのは大変ですが、見事なあめ色タマネギがほったらかしで作れるのはありがたい! 火加減を調整する必要もなく長時間炒めてくれるので、本当にラクでした。これがカンタンにできるなら、家庭でもワンランクアップした料理を作れそうですね。
アプリの使い勝手もよく、できあがりのタイミングも教えてくれる
オートクッカーはIoT機能を搭載しており、スマートフォンの専用アプリ「キッチンポケット」と連携すると便利です。キッチンポケットからは、メニュー(レシピ)をオートクッカー本体に送信して追加できます。
また、調理を開始するときに「オートクッカーへ送信」を押すと、アプリで選んだメニューの設定がオートクッカーへと送信され、そのまま本体の「スタート」ボタンを押すだけになります。本体の操作パネルを何回もタッチして設定する必要がありません。
アプリでレシピを検索して、見ながら材料を準備して、アプリから設定するほうがラク。しばらく使っているうちに、オートクッカー本体では操作をしなくなりました。本体に収録されている以外の自動メニューが使えるので、手動調理モードでなくてもいろいろな圧力調理を楽しめます。レシピも検索しやすく、購入したらアプリと連携することをおすすめします。
お手入れはカンタン、ただし食洗機は不可
調理後にふたを開けると、内ぶたに付いた蒸気が冷えて、パッキン部分に水が溜まります。そのままふたを閉めると、溜まった水がバシャッと料理にかかってしまうのが少々気になりました。お皿でその水をキャッチしてみたところ、大さじ3杯ほど。露受けにも水がかなり溜まるので、取り外しができる水受けのようなものがあると便利だと感じました。
お手入れは、内ぶたと羽根を外して洗います。蒸し板を使った場合も同様です。また、内ぶたを外したあとのパッキンと内側のくぼみは拭いておきます。
本体の操作部は指で何度もさわるので指紋が目立ちます。ふきんなどで拭くと取れますが、スマホアプリを使うと操作パネルをさわる機会が減るため、掃除の頻度も下がります。操作部を何度もタッチして設定するよりも、スマホアプリから送信(レシピや調理設定)したほうが早くてラクなのでおすすめです。
なお、内鍋や羽根などは食洗機で洗うことはできません。我が家は食洗機のヘビーユーザーなので、その点は残念でした。
おうち料理がランクアップ!
かき混ぜと圧力調理の両方ができる電気調理鍋を使ったのは、オートクッカーが初めてです。かき混ぜ機能を持つ電動調理鍋(非圧力)はありましたが、かき混ぜるためのユニットはふた側に付いていました。オートクッカーは羽根が鍋底にあり、回転しながら鍋底をさらうように食材をかき混ぜるので、焦げ付くことはほとんどありません。パナソニックが開発してきたホームベーカリーの回転技術を応用しており、鍋の側面に配置した突起(リブ)によって、食材をひっくり返しながら下からムラなく加熱できています。
また、浅い内鍋は高火力調理にも有利なのでしょう。食材の水分も、短時間で飛ばしやすい形状です。隅々まで計算された内鍋で高火力とムラのないかき混ぜを実現していることは、実際に使ってみてよくわかりました。高火力で圧力をかけながら調理をすると焦げてしまいそうなカレーやチャーハンも、「短時間」かつ「ほったらかし」で作れることに感激です。
すべてのメニューではありませんが、予約調理に対応したメニューも数多くあります。予約調理をすると、予約開始後に食材の衛生面を配慮してすぐに加熱が始まります。その後、設定した時刻に合わせて食べ頃へと仕上げています。通常調理のできあがりと比べると、野菜がやわらかくなったりすることもありますが、煮込み料理などは気になりません。
電気圧力鍋はよく時短家電といわれ、食事を準備する時間の短縮を目的に使いたいというユーザーも多い家電です。オートクッカーは時短につながるだけでなく、料理の仕上がりも文句なし。日々の料理をランクアップできます。
料理で大事なのは火加減やかき混ぜタイミングということは、主婦歴20年の経験からよくわかっています。とはいえ理解はしていても、ここまでうまく調理はできません。私のように家庭料理のみで毎日ただ作ることに追われ、仕上がりに自信がないという皆さんにはぜひ注目してほしい製品です。実勢価格が88,000円前後と安くはありませんが、毎日使うとなればモトは取れそう。とても魅力的で、我が家も欲しくなっています。自信を持っておすすめできる製品なので、ぜひチェックしてください!