今回は双眼鏡の売れ筋を知りたくて、ヨドバシカメラ マルチメディア横浜を訪ねました。

双眼鏡といえば、かつては野鳥や星空の鑑賞、ホエールウォッチングなど、アウトドアで使われることが中心でした。しかし、最近は活躍する場面の主流が大きく変わっているといいます。

同店のカメラ専門チームのグループリーダーを務める三好孝征氏は「いまはライブイベントでの需要が全体の9割を占めるほどの勢いがあります。屋外需要も以前から減ってはいないのですが、屋内需要の増大があまりにすごくて、相対的に主流が移っている感じです」と言います。

ライブに双眼鏡を持ち込む動きは数年前から高まっていましたが、コロナ禍からのイベント復活の機運が重なったことでより大きな潮流になったそうです。「開催が難しい時期を経たことで、『せっかくのライブに行くのだからステージに立つ“推し”を少しでも大きく鮮明に見たい』という思いが強まったところはあると思います」

  • ヨドバシカメラ マルチメディア横浜の双眼鏡売り場。三好孝征氏にナビゲートしてもらった

下記の「双眼鏡選び 三カ条」を踏まえて、直近の売れ筋ベスト5を見ていきましょう。

<双眼鏡選び 三カ条>

  • 屋内の人工光は日光と比べると光量は抑えめ。その環境で鮮明に大きな映像を見るため、25mm以上の大口径レンズが人気。
  • 同じレンズ系なら低倍率のほうが明るいので、倍率は大きいほど良いとは限らない。ステージとの距離を計算して最適な倍率を把握しておこう。
  • より上質な環境を求めるなら、手ぶれ補正内蔵モデルや、多彩な環境でも鮮明に表現できるレンズを採用したモデルなどもある。

※本文と写真で掲載している価格は、2023年2月8日14:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。

第1位:32mm径ながらコンパクトな「アトレックII(32WP)」

一番人気に挙げられたのは、32mm径レンズを採用したビクセンの「アトレックII(32WP)」シリーズとなります。8倍モデルの「HR8×32WP」と、10倍モデルの「HR10×WP32」があり、会場の環境などによってそれぞれ選ばれているそうです。取材時の価格は順に22,620円と26,280円でした。

「32mm径の双眼鏡では、このシリーズが一番コンパクトです。390gと軽いうえ鏡筒が小さいので、手が小さい人でも中央のピントリングが扱いやすいという強みもあります。ライブ用の双眼鏡として指名買いされる方が多い定番ですね」

  • ビクセン「アトレックII HR8×32WP」(左)と「同 HR10×WP32」(右)

第2位:映像の鮮明さを追求する人に人気の「ウルトラビューEXコンパクト」

続く2位は、ケンコーの32mm径モデル「ウルトラビューEXコンパクト」でした。8倍モデルの「8×32」と、10倍モデルの「10×32」があり、価格は順に30,800円と31,900円でした。

「映像の鮮明さに定評があるモデルです。アトレックIIと比べると少し大ぶりになるものの、見え方に重きを置く人はこちらがよく選ばれますね。サイズ的な面もあって、どちらかといえば男性人気が優勢という印象があります」

  • ケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」

第3位:価格を抑えたい層に人気の「SGEX(26mm径)」

満を持したライブ需要もあって、直近では高性能モデルが人気の上位を占めます。そのなかでコストパフォーマンス重視の人によく売れているのが、3位に入ったケンコーの「SGEX(26mm径)」です。8倍モデルの「SGEX 8×26 OP WP」と10倍モデルの「SGEX 10×26 OP WP」があり、価格は順に15,400円と16,500円でした。

「数万円をかける予算はないけれど、できる限り大きな口径のレンズがほしい、という需要にちょうどぴったりはまるモデルですね。口径が小さくなると自然とコンパクトにもなりますし、取り扱いやすいメリットも増します」

  • ケンコー「SGEX 8×26 OP WP」(左)と「SGEX 10×26 OP WP」(右)

第4位:大きな倍率で手ぶれが抑えられる「ATERA II」

4位以降には、さらに高い性能を求める人に人気のあるモデルが並びます。4位は、ビクセンの防振双眼鏡「ATERA II」がランクインしました。21mm径の10倍モデル「ATERA II H10×21(グレージュ)」は82,500円、30mm径の12倍モデル「ATERA II H12×30(チャコール)」は85,800円となります。

動く対象を追いかけるのに向く「V1モード」と、止まった対象を見るのに向く「V2モード」という2種類の防振モードを備えているのが特徴です。

「注文をいただいても1カ月くらいかかってしまうほどの人気があります。もとはホエールウォッチングなどを想定して開発されましたが、ライブ需要でも重宝します。高倍率になるほど手ぶれがつきものになりますから。それを経験して防振モデルに行き着く方は少なくありません」

  • ビクセン「ATERA II H10×21(グレージュ)」(左)と「ATERA II H12×30(チャコール)」(右)

第5位:画質重視の人が行き着く「MONARCH M5」

5位は、ニコンの42mm径シリーズ「MONARCH M5」でした。価格は8倍モデル「MONARCH M5 8×42」が41,800円、10倍モデル「MONARCH M5 10×42」が44,000円、12倍モデル「MONARCH M5 12×42」が46,200円でした。

「画質重視の人が行き着くモデルですね。EDガラスという色のにじみを抑えるレンズを採用していて、強い照明のなかでも鮮明に見えます。MONARCHはもともと野鳥などをきれいに見ることに定評のあるシリーズで、それが転じてライブ用途でも注目されるようになった感があります」

  • ニコン「MONARCH M5 10×42」(中央)

はみ出し情報・・・エントリー志向でも25mm径需要が目立っている

ランキング外になりますが、ここでエントリー需要も見てみましょう。3位のSGEX(26mm径)よりもさらに価格を抑えたい層には、5,000円前後から8,000円前後で選べる21mm径のモデルもあります。ビクセンの8倍モデル「STLIVE M8×21」は4,730円、ケンコーの8倍モデル「ウルトラビューH 8×21DH FMC」は8,360円でした。

「反射防止のマルチコートを施したレンズを採用しているものが多くありますし、ある程度光量に恵まれた環境であれば21mm径でも見られなくはないと思います」

  • 21mm径の双眼鏡

ただ、エントリー級でも一回り大きい25mm径に人気が集まっているそうです。「暗転や明転が頻繁にあるライブでは21mm径だと厳しく感じることが多く、25mm径を最低ラインに据える人が増えます。5,000円ほど足して1万円前後から選べますから」

たとえば、ケンコーの8倍モデル「ウルトラビュー M 8×25FMC」なら8,510円、10倍モデル「ウルトラビュー M 10×25FMC」なら9,590円となっていました。

  • 25mm径の双眼鏡