詳細な調査の結果、アスリート群の腸内にはヒト腸内細菌叢の主要な構成細菌の1種であるB.ユニフォルミスが多く棲息することが判明したほか、アスリート群のうち3000mの走行タイムが提供された25人については、腸内細菌叢における同細菌の数(今回の研究では16SrRNA遺伝子1コピーを1菌数と定義)と、走行タイムとの関連性調査から、同細菌の数が多い選手ほど、3000mの走行タイムが良いという相関関係が見出されたという。

そこでB.ユニフォルミスが栄養源として利用しやすいα-シクロデキストリンの摂取と、ヒトの運動へ与える影響についての調査も実施。運動習慣がある20~40歳代の日本人一般男性10人が、同物質を含むサプリメントを摂取した(α-シクロデキストリン摂取群)した結果、摂取8週間後においてB.ユニフォルミスの菌数が摂取前と比較して有意に増加することが確認されたほか、α-シクロデキストリン摂取群ではエクササイズバイクで10kmを漕ぐために必要なタイムが摂取前と比較して約10%短縮し、このタイムはプラセボを摂取した群11人のタイムと比較して有意に早いタイムであったという。

また、α-シクロデキストリン摂取群ではエクササイズバイクを50分間漕いだ直後の疲労感が摂取前と比較して有意に低下していることも確認されたとのことで、これらの結果から、B.ユニフォルミスが好むα-シクロデキストリンの摂取は、ヒトの持久運動パフォーマンスや運動後の疲労感を改善させることが示されたと研究チームでは説明している。

さらにB.ユニフォルミスによる持久運動パフォーマンス向上の理由として、同細菌によって腸内で産生される酢酸とプロピオン酸が、運動中の肝臓におけるグリコーゲン分解と糖新生を促進し、運動に必要なグルコースを全身に供給している、というメカニズムが示唆されたともしている。

  • B.ユニフォルミスを介した持久運動パフォーマンス向上の推定メカニズム

    B.ユニフォルミスを介した持久運動パフォーマンス向上の推定メカニズム (出所:プレスリリースPDF)

なお、今回の研究成果について研究チームでは、同細菌をターゲットとしたプレバイオティクスやプロバイオティクス、オールバイオティクスを用いることによって、ヒトの運動パフォーマンスを引き上げることができる可能性を示唆するものだとしており、将来的には、スポーツ分野や飲食料品分野への応用が期待されるとしている。