スマートフォンなどを対象としたワイヤレス充電規格「Qi」の国際標準化を推進する業界団体WPC(Wireless Power Consortium)は1月3日(米国時間)、2023年にQi仕様の次期バージョン「Qi2」(発音は"chee two")を発表することを明らかにした。Appleの「MagSafe」の技術を採り入れて、より安定して効率的なワイヤレス充電を実現する。今年のホリデーシーズンにQi2認証を受けた携帯電話や充電器が登場し始める見通し。
独自規格が林立していたワイヤレス充電の問題を解消するために2008年にWPCが立ち上げられ、挿せば充電できるUSB充電のように相互利用が可能なワイヤレス充電標準の実現を目指して「Qi」が策定された。当初は最大5Wだったが、2015年に最大15Wの供給に対応。Andoridスマートフォンから普及が進み、2017年の「iPhone 8」でiPhoneもQiに対応した。
ワイヤレス充電は充電器に置くだけの手軽な充電を可能にするが、位置ずれの影響を受けやすい。充電位置がずれると充電速度が遅くなったり、充電に失敗することもある。そこでAppleは2020年にiPhone 12/12 ProシリーズにMagSafeを搭載した。マグネットを用いて充電ケーブルや充電器とiPhoneの充電位置を合わせて固定することで、非接触の手軽さと位置ずれのない安定して高速な充電を実現した。
WPCによると、Appleが同社のMagSafeテクノロジーをベースに構築した技術基盤を提供し、他の加盟企業とともにQi2の核となる新しい「Magnetic Power Profile」を開発した。Qi2をサポートするAndroidスマートフォンで既存のMagSafe対応アクセサリーを使用できるようになるかは現段階で不明だが、MagSafeがiPhoneユーザーにもたらした快適なワイヤレス充電体験を幅広いモバイル機器の間で相互利用できる環境が実現しそうだ。
WPCによると、Qi2によって位置ずれに起因するエネルギーのロスを低減できるようになり、効率性が向上し、不安定な接続によるバッテリーの消耗も避けられる。一部の機器ではより高速な充電が可能になるという。また、安定して充電できる平面が必要な今日の規格では実現できない新しいアクセサリーが可能になり、ワイヤレス充電市場のさらなる拡大が期待できる。抜き挿しの際に端子やコードにストレスがかかる有線接続に比べてワイヤレス充電の機器は長持ちし、有線からワイヤレスへの移行を促す新規格の登場は電子廃棄物の削減にもつながるとしている。