一軒家や賃貸住宅、あるいは離れて暮らす両親や祖父母などの住まいにて、家電を防犯に役立てて被害に遭う可能性を下げるにはどうすれば良いのか――。パナソニックが開催したメディア向けの「防犯家電セミナー」から紹介します。

  • 防犯カメラは必須の時代。録画できるだけでなく、プラスアルファのカメラが求められます

警察手帳を見せられても信用してはいけない!

セミナーの冒頭では、防犯事情に詳しい犯罪コメンテーターの佐々木成三氏が講演を。佐々木氏は元埼玉県警の刑事で、空き巣や窃盗といった侵入犯罪、放火、少年犯罪などの取り締まりを22年間にわたって経験。空き巣に狙われやすい家や、詐欺に合いやすい人物の性格も熟知しています。

  • 刑事歴22年の犯罪コメンテーター、佐々木成三氏

佐々木氏は、現代は一昔前と比べて「起こり得ないことが起こる時代になっている」と指摘します。昔よりも犯罪件数は減っているものの、以前では考えられなかった悪質な犯罪が増えているそうです。振り込め詐欺やフィッシング詐欺では手口が巧妙化し、未成年を巻き込む犯罪が増えているのも特徴とのこと。

特殊詐欺の被害に遭う人の多くは「だまされない自信があった」という人。たとえば本物の警察手帳を実際に見て覚えている人は少なく、偽物の警察手帳を見せられると、少しくらい違っていても普通の人は気が付きません。写真やバッヂまで用意して警察手帳の偽物を作り、わざわざ自分をだましに来る人間がいるとは、なかなか考えないのが普通なのです。

  • 警察手帳を見せられただけでは、もはや本物の警察関係者かどうか分からない時代。「手帳だけで信じてはいけない」と佐々木氏は言います

一方、窃盗などの侵入犯罪対策としては、まず「侵入が難しい家である」と印象付けることが重要。

警察庁が公表する統計によれば、侵入に5分以上かかると約7割の侵入者が諦め、10分以上かかるとほとんどが断念します。侵入場所(住宅)を選ぶ段階では、6割以上の侵入者が留守かどうかを確認し、5割以上が入りやすさと逃げやすさを確認しています。

そして、侵入者がターゲット宅の留守を確かめる方法は、約半分がインターフォンでの呼び出し。家の中に動きがないかしばらく様子を見たり、電話をかけたりすることもあります。こうした傾向から、玄関や窓には侵入しにくい防犯セキュリティが重要であり、留守だと思われないための工夫が有効であることがわかります。

佐々木氏の「防犯カメラは警察が利用するものという意識を変え、隠すような設置ではなく、赤外線センサーなども備えた防犯カメラをあえて見せつけるように設置することが、犯行を断念させることにつながります」との言葉が印象的でした。

スマホや宅配ボックス、開閉センサーなどと連携して安全を守るドアホン

家庭の防犯性能を高める家電として注目したいのが、ドアホンと固定電話機です。まずは、侵入犯罪の防止に役立つドアホンから見ていきましょう。

パナソニックが2022年9月15日に発売した「外でもドアホン SWZ700シリーズ」は、モニター親機、ワイヤレスモニター子機、カメラ玄関子機がセットになった製品。スマホと連携し、家の中でも外出先からでも、来訪者の対応をスマホから行えます。留守番中の子どもの代わりに対応したり、宅配便に再配達を依頼したりと、なかなか使い勝手がよさそう。スマホは4台まで登録可能です。

  • 上が従来モデルのVL-SWH705シリーズ。下が新機種のVL-SWZ700シリーズの画面

新型のSWZ700シリーズは、夜間の視認性が向上した「カラーナイトビジョン」に対応しました。7型の大きなインターフォン画面で、訪問者の顔をしっかりチェック。別売のSDカードに録画や録音も行え、ドアホンが自動対応する「あんしん応答モード」も備えています。

  • 暗い屋外灯の明かりだけでも来訪者の顔までしっかり見えます。画面内はマネキンと親しげに肩を組むマイナビニュース・デジタルの林編集長

パナソニック ハウジングソリューションズが提供する宅配ボックス「COMBO(有線)」、もしくは「COMBO-LIGHT(無線)」との連携もサポート。インターフォンのボタンを押したあとの30秒間と、宅配ボックスに荷物を入れて扉を施錠した直後の30秒間を自動で録画します。

  • 宅配業者が宅配ボックスに荷物を入れて施錠すると、スマホに通知してドアホンのカメラで録画

SWZ700シリーズは、窓の開閉を感知して警告音を発する「開閉センサー」とも連携します。たとえ留守でも近所の人が気付きやすいし、警備会社と連携して通知しているかもしれないと思わせる効果もありそうです。室内に動作検知タイプの防犯カメラも設置しておけば、警察に捜査の手がかりを提出でき、侵入者に録画していることを悟らせれば何も盗まず逃走する可能性も高くなるはずです。

  • 窓に装着する開閉センサー「KX-HJS100」

  • 動作検知での録画に対応する屋内スイングカメラ「KX-HC600」(右)

VL-SWZ700では防犯だけでなく、緊急安全確保情報や自然災害警戒情報などを表示する防災に役立つ安心アラート機能や、地域の天気やゴミの日などをお知らせしたり、荷物の配達状況や家電の動作状況を知らせたりする日常生活に役立つ音声プッシュ通知などの機能も搭載しています。

  • このほか、賃貸などの工事が難しい環境に導入しやすい、後付のドアモニター「VS-HM400」も紹介。こちらはドア上部に引っ掛けるようにして使います。電源は単3乾電池×4本。充電池の「エネループ PRO」を使う場合、満充電からの動作時間(待受時間)は約5時間です。スマホには標準対応しませんが、ホームユニット「KX-HJB1000」をハブにすれば、SWZ700シリーズと同じようにスマホと連携させられます

迷惑電話防止機能付き固定電話機のユーザーは詐欺に遭わない

続いて特殊詐欺対策に有効な固定電話機/FAXの紹介です。パナソニックが10月13日に発売した「KX-PD750DL/DW」と、3月に発売した「VE-GD78DL/DW」は、かけてきた相手に対して呼び出し音が鳴る前に通話録音すると警告。着信中は呼び出し音と共に「迷惑電話にご注意ください」と音声で注意喚起し、電話に出ると通話内容を録音する迷惑防止機能が自動で作動します。もちろん、かけてきたのが電話帳に登録したなじみの相手であればこれらは働きません。

  • 怪しい電話の撃退や、受け手側に注意をうながす機能が充実したFAX電話機の「KX-PD750DL/DW」

これに加えて迷惑電話相談機能も搭載。通話後に怪しいと感じて警察や親族などに相談するとき、通話中に「相談」ボタンを押すだけで、録音した電話を再生して通話の相手に聴かせられます。「詐欺かもしれない」と思っているときは冷静さを失いがちなので、どう怪しかったのか咄嗟の説明が困難になる人が多くなります。第三者にありのまま聴いてもらえれば、冷静な意見が聞けて落ち着いて対応できそうです。

【動画】パナソニックの電話機(一部を除く)が搭載する「迷惑防止機能」のデモンストレーションです。まずは着信音を鳴らさずに自動応答し、それから着信音を鳴らします。電話を受けたあとは自動録音。万が一のとき、録音した内容は警察へ提供できます
(音声が流れます。ご注意ください)

パナソニックでは2016年から佐賀県と鹿児島県を除いた全国45都道府県の県警と連携して、防犯イベントを開催したり、防犯チラシを配布したりする活動に取り組んでいます。

この中で、福岡県警の担当から「(パナソニック製以外も含めた)この手の迷惑電話防止機能を備えた固定電話機のユーザーが振り込め詐欺の被害に遭ったという報告は、少なくとも福岡県警の管轄内からは上がっていない」との話を聞いたそうです。振り込め詐欺などの特殊詐欺対策として、迷惑電話防止機能搭載の固定電話機は大変有効だと言える事例ではないでしょうか。

特殊詐欺や空き巣などの手口は年々巧妙さを増しています。振り込め詐欺などは何年も前から啓蒙されているのに未だに被害は拡大する一方です。犯罪者のテクニックは冷静になればおかしいとわかるはずのことが、わからなくなってしまう、人の心理の隙間を突くものです。

そういう手口に対抗するために、人間の心理が介在しない家電の「機械力」にフォローしてもらうのは理に適った考え方でしょう。もちろん、機械は機械で万能とは言えないので、自分だけは大丈夫と過信せず、機械を使いながら人間も注意する、そんな付き合い方こそが防犯家電の上手な使い方かもしれません。