ASUSTeKの14型ビジネスモバイルノートPC「ExpertBook B9」に2022年モデル「ExpertBook B9 B9400CBA」が登場した。CPUをIntel第12世代Coreにアップデートしパフォーマンスを高めながら、オンラインビデオ会議やセキュリティなど現在のビジネスシーンに求められるスペックを盛り込んだ。ラインナップには1kgを切る880gを実現したモデル、20時間の長時間駆動を実現したモデルがある。BYODが浸透し、これまで以上にビジネスモバイルの選択肢が広がった今、生産性の高いプレミアムモバイル
ASUSでビジネスノートPCというイメージはまだそこまで浸透していないかもしれないが、実際に触れてみると完成度は高かった。
高性能&長時間駆動のCore i7モデル、軽量&コスパなCore i5モデル
ExpertBook B9 B9400CBAのラインナップは6モデル。Core i7-1255Uを搭載する3モデルとCore i5-1235Uを搭載する3モデルで展開されている。モデルごと。CPUによる性能、メモリやストレージの容量に違いはあるが、Core i7搭載モデルとCore i5搭載モデルで決定的に異なるのがバッテリーと重量だ。Core i7モデルは66Whバッテリーを搭載し、20時間という長時間駆動を実現。一方Core i5モデルのバッテリー容量は33Whと半分ほどだが重量880gの軽さを実現している。Core i7モデルも重量1,005gなのでそもそもExpertBook B9自体が軽い。ただし1kgを切るというのはマーケティング的なインパクトが大きいと言えるだろう。
サイズ(W×D×H)は320×203×14.9mm。狭額縁ベゼルを採用していることもあり、30cm少々の幅に収まって、ビジネスカバンとの相性もよい。奥行きが20cm少々とかなり小さいのは、キーボードとディスプレイの間の距離が近いためだ。一体感も高まっている。厚みも公称で15mmを切るスリムさだ。14型の中でも本製品はよりコンパクトなモデルと言えるだろう。
天板と底面にはマグネシウムリチウム合金を採用し、14.9mmのスリムさながら堅牢なボディを実現。米軍軍用規格MIL-STD 810Hに準拠していると言う。パネル圧迫テスト、衝撃テスト、落下テストといったASUSTeKの独自テストも行なっているとのことで、安心感が高い。
筐体カラーはスターブラック。ブラックとあるがラメも入っており濃紺のようにも見える。非光沢、マットなので指紋などは目立ちにくい。気になると言えば爪などを擦ってしまうと跡がつくところだが、クリーニング自体は簡単だ。
充実のインターフェース。社内ネットワークを考慮したLANにも注目
ディスプレイ解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)。もちろんノングレアだ。パネルスペックはとくに言及されていないが、ビジネスに十分な発色、視野角がある。
ディスプレイ上部ベゼルに92万画素Webカメラを搭載。AIカメラ機能を備え画質や明るさなどが自動調整されるほか、モーショントラッキングテクノロジーを利用すれば利用者を画面中央に据えてくれるので位置調整などが不要になる。IR対応でWindows Hello機能も利用可能だ。手動のスライド式プライバシーシャッターも備える。さらにその横にはマイクもあり、こちらは双方向AIノイズキャンセリングも利用でき、発信者、参加者ともクリアな音声でのビデオ会議が行なえる。ディスプレイ上部ベゼルにはほかにも接近センサーが搭載されており、たとえば離席した際にディスプレイ輝度を落としロック、戻った際には輝度を戻すといったことができる(同機能の有効/無効はMyASUSから設定可能)。
スピーカーはDOLBY ATOMOS対応。昨今ではビデオ会議の頻度も増え、ビジネスPCだからと音質に無頓着とはいかなくなってきている。
インターフェースはThunderbolt 4×2、USB 3.2 Gen2×1、HDMI×1、オーディオコンボジャック、そして有線LAN(1000BASE-T)専用端子。ビジネス用とあってUSB Type-AもHDMI出力も備えている。変換アダプタを必要としないところは便利だ。また、Thunderbolt 4はUSB Power Delivery(USB PD)およびDisplayPort Alt Modeにも対応している。Thunderbolt 4対応ドックなどを活用すれば、事務所から外回りへ、外回りから事務所へといった際、USB Type-Cケーブル1本を抜き差しするだけですむ。
有線LANはアダプタによる提供となるが、専用端子を用いている。端子形状はmicro HDMIで、実はExpertBook B9旧モデルも同じだ。こうした有線LAN専用端子は目的を持って採用されるものだ。USB接続では実現し得ないもの……たとえば他製品の例を挙げればIntel vPro対応などが挙げられる。ただし、ExpertBook B9 B9400CBAの仕様を見てもvPro対応の記載はない。代わりにMACアドレスパススルー機能を備えているとされる記述があった。ビジネスでは固有のMACアドレスを参照し、それを識別して認証するシステムを利用している場合もある。この有線LAN専用端子はこの機能に対応するために採用されたのではないかと考えられる。
ACアダプタはASUSTeKのほかのノートPCでも採用例のある横から見て正方形タイプ。USB PD規格のもので出力は65W。急速充電にも対応しており44分で60%まで充電可能だ。比較的コンパクトなのでこれを携行してもよいが、より小さなUSB PD対応充電器が欲しいという場合、65W以上の出力に対応するモデルを選ぶことになる(急速充電については66W以上との表記があるが、社外品のUSB PD充電器で同機能に対応しているのかどうかは不明)。
キーボードはクセあり、日常よく使うキーを把握したい
ExpertBook B9 B9400CBAのキーボードは、Intel第11世代Coreを搭載する前モデルとほとんど同じと思われる。ただし刻印に変更があったようで、若干異なる。レビューでスクリーンショットを撮る際、「PrtSc」を多様するのだが、これと「Insert」といった一部の刻印が見当たらず面を食らった。また、そのほかにも若干のクセがある。
キーボード配列自体は86キー日本語で、主要なキーのレイアウトはパッと見よくあるものだ。たとえば今季モデルのZenbookではEnterの右隣にさらに1列追加されているが、ExpertBook B9 B9400CBAにはその1列がなくスッキリしている。そして主要なキーのピッチは十分にあり、キーストロークもスリムモバイルとしてはしっかりとられている。モバイルノートPCとしてならば、打鍵感はまずまずだ。
一方、気になったのは一部のキーの幅が狭いところだ。まず最下段の左右Alt、無変換/変換、カタカナひらがなローマ字キー。次にEnterの左の列にある2つの括弧キー。その上にある「¥」は幅が狭いだけでなく右隣のBackSpaceとのスペースがない。そして右下十字キーも高さが通常の半分だ。こうしたレイアウトは本製品に限ったものではないが、もちろん使い続ければ慣れることもある。キーマップをカスタマイズして対応できることもある。しかし即戦力を求める方は、日常よく使うキーを把握しシミュレーションしたうえで検討するのがよいだろう。テキスト入力だけでなく、ショートカットキー、カーソル移動など。各指の幅、移動距離など、条件的にはけっこうシビアだと思われる。
なお、ビジネスで重要なところで同製品のキーボードは防滴加工が施されている。防水ではない点で過信は禁物だが、安心材料の一つとなるだろう。
パームレスト右上には指紋認証センサーがある。同社コンシューマー向けモデルでは電源ボタン兼用センサーが採用されているが、本製品が独立タイプを採用しているのはわかりやすさのためだろうか。ExpertBook B9 B9400CBAは顔認証も備えていることから、利用しやすいほうを選べる。
タッチパッドは大きめで、ここを10キーとしても利用できるNumberPadにも対応している。タッチパッド右上のアイコンで素早くON/OFF切り換えが可能だ。10キーレスのExpertBook B9 B9400CBAだが、実質的に10キー付きキーボードとして利用できる。もちろんタッチとキーでは打鍵感が異なるが、慣れてしまえばミスも減らせ、素早い入力が可能になるだろう。
メモリは最低16GBへ、ストレージも超高速
今回お借りした評価機はCore i5を搭載する中では最上位のモデル「B9400CBA-KC0282WS」だ。下位モデルとの違いはストレージ容量と、Microsoft Office Home and Business 2021のバンドル。それでは内部スペックを見ていこう。
まずCPUはCore i5-1235U。第12世代Coreの高性能コア(Pコア)が2基4スレッド、高効率コア(Eコア)が8基8スレッド、合わせて10コア12スレッドのCPUだ。Turbo Boost時の最大クロックは4.4GHzで、キャッシュは12MB、CPUのベースパワーが15W、最大ターボパワーが55Wといったスペックとなっている。Pコアの数はやや少なめだが、Eコアは第12世代Coreの最大数で、一般的なモバイルでの業務では十分なパフォーマンスを示してくれるだろう。なお、Core i7モデルが採用しているのはCore i7-1255U。コア/スレッド数やキャッシュ、パワーは変わらないが、より高クロックで最大4.7GHzというスペックだ。
グラフィックス機能はCPUに内蔵された統合GPU機能を利用する。Intel Iris Xe Graphicsだ。
メモリはLPDDR5-5200。容量は16GBだ。すべてのCore i5モデルと、Core i7を搭載する2モデルが16GB。Core i7の最上位モデルではさらに大容量の32GBだ。このように大容量メモリを搭載していれば、通常の作業中、急にタブ切り換えが遅くなったりアプリケーションの起動に普段より時間がかかったりといったメモリ不足のストレスを感じる心配が少ない。
ストレージも注目のスペックだ。評価機B9400CBA-KC0282WSおよびCore i7搭載最上位モデルは2TB×2基、計4TB搭載している。また、ほかのCore i7搭載2モデルは512GB×2基の1TB。ただし残るCore i5搭載2モデルは512GB×1基の価格を抑えた構成となっている。まず、ExpertBook B9 B9400CBAは、内部に2基のM.2 SSDスロットを搭載している。2基のM.2 SSDスロットを搭載しているモバイルノートPC自体はそこまでめずらしくないが、BTOモデルではなくスペックが固定された通常販売モデルでSSDを2基搭載するラインナップというのは多くない。B9400CBA-KC0282WSのSSDは2基とも同型番&スペックで、評価機はPCI Express 4.0 x4接続のSAMSUNG MZVL22T0HBLB-00B00。RAIDは構成されておらず、それぞれ単独のドライブとして認識されていた。
モデルによって異なるのが統合オフィススィートのバンドルだが、Core i7、Core i5それぞれ上位2モデルがMicrosoft Office Home and Business 2021、下位モデルがWPS Office 2 Standard Editionとなっている。OSはWindows 11 Homeを採用しており、Pro版採用モデルはない。社内ネットワーク次第ではPro版へのアップグレードが必要になると思われるが、そうした場合は各自が行なうしかない。
ベンチマークテスト、3D以外なら幅広くカバーできる高性能
それではIntel第12世代Core搭載となって生まれ変わったExpertBook B9 B9400CBAのパフォーマンスを見てみよう。評価機はCore i5搭載モデルなので、Core i7搭載モデルと比べるとクロックは抑えめ。その点で、Core i7搭載モデルは今回紹介するスコアよりも高いスコアになると思われる。
ExpertBook B9 B9400CBA | |
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ディスプレイ | 15.6型、1,920×1,080ドット、ノングレア、非タッチ |
OS | Windows 11 Home 64bit |
CPU | Core i5-1235U(Pコア2基4スレッド+Eコア8基) |
メモリ | LPDDR5-5200、16GB |
GPU | CPU内蔵 Intel Iris Xe Graphics |
ストレージ | 2TB M.2 NVMe SSD×2 |
インターフェース | Thunderbolt 4×2、USB 3.2 Type-A×1、HDMI×1、専用LAN端子×1、オーディオ入出力×1 |
無線LAN | Wi-Fi 6(Bluetooth 5.1搭載) |
センサー | 指紋認証、接近センサー |
Webカメラ | 92万画素、IR対応 |
サイズ | 320×203×14.9mm |
重量 | 約880g |
また、ベンチマーク前に計測時の設定を紹介しておくと、電源設定を「最適なパフォーマンス」とした上で、MyASUSからファンの制御を「パフォーマンスモード」としている。どうやらパフォーマンスモードを指定することでcTDPの値が変更されるようで、たとえば最適なパフォーマンス、MyASUS側がスタンダードという組み合わせでは、CINEBENCH R23時で最大パフォーマンスの6割程度に抑えられていた。ここぞというパフォーマンスが欲しい際はここに注意したい。なお、注記もあるがパフォーマンスモードはACアダプタを接続した状態でなければ有効にならない。この点では安全と言える。
まずはCINEBENCH R23。CPU(Multi Core)は6367pts、CPU(Single Core)は1534pts。モバイルノートPCとしてはコア数が多く12スレッドも扱えるためマルチコア側のスコアは高い。また、シングルスレッド側でも1,500ptsを超えているのは評価できる。
PCMark 10(Standard)はOverallが5214。ホーム用途のEssentialsは10,155というスコアだ。高速SSDによりApp Start-upのスコアが高く、ここがEssentialsスコアを引き上げていると思われるが、Video Conferenceingも8,501と高いスコアなので、ビデオ会議などでm高いパフォーマンスが期待できる。ビジネスシナリオのProductivityは6,818。SpreadsheetもWritingも十分なスコアだ。統合GPUモデルなのでコンテンツ制作シナリオのDigital Content Creationは5,556だったが、Photo Editingは9,216と十分に高スコアだ。3D関連のヴィジュアライゼーションは不得意としても、写真補正やある程度までのビデオ編集も実用的と言えるだろう。
3DMarkはFire Strikeが4119、Time Spyが1474。統合GPUとして見れば高いスコアだが、ゲームについては軽いタイトル限定だろう。カジュアルなゲームを楽しむ、それも従来の統合GPUと比べれば快適に楽しめるというのがよいところと言える。
ではその3D性能をファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークで計測してみた。1,920×1,080ドット、標準品質(デスクトップPC)(※標準品質ノートPCより若干フレームレートが高くなる傾向だった)のスコアは7325で評価はやや快適。フレームレートでは43.9fpsといった結果だった。プレイは可能だがややフレームレート不足気味といったところだろう。ビジネスモデルとあってゲーム性能を求めるシーンは少ないが、軽めのタイトルでの息抜き程度ならできそうだ。参考までに、1,280×720ドットとした同設定ならスコアは10,337、「快適」評価となり平均75fpsが得られた。
最後にPCMark 10のバッテリーベンチマーク(Modern Officeシナリオ)を試してみた。ディスプレイ輝度は100%、Wi-Fiは接続状態、電源設定はバランス、MyASUS側はスタンダードで計測している。およそ、購入後とくに設定をせず、ディスプレイ輝度も最大のままそのまま持ち出すようなイメージだ。
さて結果だが、まずパフォーマンスでは4623で先の5214からはやや下がるがバッテリー駆動という点では十分な性能だ。そしてバッテリー駆動時間は6時間16分を記録した。一般業務においては1日問題なく稼働できると見てよい。その上で、より長時間駆動を望むならディスプレイ輝度を調節し、電源設定を「トップクラスの電力効率」、MyASUSからファンモードをウィスパーモードと設定を詰めていけばよい。とくにディスプレイ輝度は電力が大きいので、これだけでも駆動時間を伸ばすことが可能だろう。
高スペックでプレミアムな高性能ビジネスモバイル
ExpertBook B9 B9400CBAのCore i5搭載モデルを試してきたが、ビジネスで求められる機能をしっかり備えた製品だ。いくつか指摘してきたところはあるが、全体としてビジネスモバイルとしての完成度は高いと言えるだろう。今回の評価はCore i5モデルで最上位というわけではなかったが、第12世代Coreによりマルチスレッド性能が上がり、かつ本製品はメモリ搭載量も十分、ストレージも高速でキビキビ動く。生産性を向上させたい、ストレスから解放されたいといった願いを叶えてくれるだろう。堅牢性、セキュリティ機能も備えているので、リモートワークから出勤へと切り換わっても安心だ。
プレミアムモバイルなので高価だが、それはストレージが2基でMicrosoft Office付きという点も影響しているかもしれない。たとえばストレージが1基のモデルであればCore i7モデルを含め20万円台、Core i5の最廉価モデルならギリギリ10万円ぢの199,800円だ。Officeライセンスが会社から支給されるような企業なら、こうした選択ができるだろう。