スコットランドのヘリオット・ワット大学の研究員であるIldar Rakhmatulin氏は、自動的にゴキブリを検知・追尾しレーザーで無力化する装置を開発。学術誌Oriental Insectsに9月21日付けで発表した。
一般的に害虫を駆除する方法と言われれば、殺虫剤を思い浮かべる人は多いだろう。しかし殺虫剤は本来駆除対象でない種や、環境に影響を与えることが問題になることがある。そこで本研究では、撮影した画像を解析し、解析した結果に基づいて機器を動作させる技術「マシンビジョン」によって自動化されたレーザーシステムを用いて、特定の害虫だけを無力化する方法および、行動制御の可能性を示した。
今回の装置は、Rakhmatulin氏が2021年に、シングルボードコンピュータ「Raspberry PI(ラズベリーパイ)」と、レーザー照射を利用して、蚊を駆除するプロジェクト「Raspberry PI for Kill Mosquitoes by Laser」の一種を改良したものだそう。
仕組みとしては、NVIDIA社が提供するシングルボードコンピューター「Jetson nano」を使って、2台のカメラからのデジタル信号を処理し、3次元空間におけるターゲットの位置を算出。その後、反射鏡を利用してレーザーの方向を変えながら、ターゲットに照射するというものだ。装置の総製作費は250ドル(日本円で約36,000円)だそう。ソフトウェアなどの詳細に関しては、GPL-3.0ライセンスによるオープンソースで、GitHubデータベースで公開しているとのこと。また、この装置のシステムは容易に調整可能で、様々な状況や蚊、イナゴなど異なる種類の昆虫に適用することができるそうだ。
実験には、室内害虫として知られるチャバネゴキブリ(Blattella germanica)の、幼虫と成虫(性比1:1)からなる150匹を使用。ランダムに選んだチャバネゴキブリを1グループ4匹として、レーザーを照射するレーザー群(15グループ、60匹)と、レーザーを照射しない対照群(5グループ、20匹)とに分けた。使用したレーザーの出力は300mWと、1,600mWの2種類だ。
また、12時間自由に行動できる対照群5グループと、ゴキブリがシェルターの下に隠れているのを検知するたびに低出力レーザーを照射する実験群5グループで実験を行った。レーザーの抑止効果を測定するために、暗いシェルターに侵入した回数を測定し、実験開始時と12時間のレーザー照射後のデータを比較した。
結果としては、300mWと1,600mWのどちらのレーザーもゴキブリを無力化することに成功したという。全体としては1,600mWは300mWのレーザーよりもゴキブリを無力化するのに有効だったそう。これは、300mWという低出力のレーザーだとゴキブリに2~3秒ほど照射し続ける必要があり、その間に逃げてしまうためだそう。また、レーザーとゴキブリを入れた箱の距離が遠いほど、レーザーがゴキブリを無力化するまでの時間が長くなることがわかったという。このほか、レーザーからの距離が遠くなると、検知精度や発射精度が大きく低下することも判明した。
また、レーザーの抑止効果を測定する実験結果としては、対照群のゴキブリは実験中、箱内の他の場所よりも暗いシェルターで過ごす時間が長かったのに対して、レーザー群のゴキブリは顕著に異なる傾向を示したという。実験開始時は、レーザー群は対照群と同様、暗いシェルターに集合していた。しかし、レーザー照射を開始してから12時間後、レーザー群は暗いシェルターに集合しなくなったという。
同研究チームは、本研究は、自由に動く昆虫を制御するための効果的かつ低コストのアプローチであることを証明するものだが、レーザーを用いた害虫駆除には安全性の問題があり、さらなる検討が必要だとしている。
ネット上では「ルンバに搭載すれば移動型ゴキブリ迎撃マシンが…?」「鬼欲しい」「有能すぎ!!」などの声が寄せられた。