第13世代CoreプロセッサはEコアが2倍に
米国時間の2022年9月27日、日本時間で28日深夜にスタートしたIntel Innovation 2022にあわせて、インテルは日本国内向けのオンライン会見も実施しました。
今回、発表の目玉となるのは第13世代Intel Core プロセッサ(Core i9-13900K/i7-13700K/i5-13600Kとそれぞれ末尾にFが付く内蔵GPUなしバージョンの全6SKU)ですが、それ以外にも興味深い発表がありました。日本向け会見の内容を中心に、Intel Innovation 2022の内容も交えてお伝えします。
インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木国正氏は改憲の冒頭、インテルの2022年のコンシューマー向け認知促進活動の現状を紹介しました
ほぼ一年前に発表した第12世代Coreプロセッサとあわせ、その搭載システムやEVOプラットフォームの認知度向上や主要小売店と協力強化、PCメーカーとの連携強化に加え、「EVOプラットフォームでゲームを」という利用例を紹介しています。
PCゲームへの対応強化はここ数年行っており、TGS2022はかなり大きなインテルブースを設置していました。鈴木社長は「(目標としているのは)ゲーム市場の活性化とすそ野を広げる事で、PCはハイエンドからエントリまでゲーム市場を活性化する幅がある」とゲーム市場がPC軸で動き出したとアピール。また先日のBlue Carpet Projestにも触れており、ハイエンド製品としてゲームとクリエイティブの二軸で活動を行っている状況を紹介していました。
インテルの戦略として「リーダーシップ製品の投入」があり、今回の第13世代Coreプロセッサがそこに該当する製品です。
今後デスクトップだけでなくモバイル版も投入する計画です。第12世代で投入したハイブリッドアーキテクチャーが、今回の第13世代Coreのデスクトップ製品であるRaptor Lakeで、そしてこの後に続くMeteor Lake、Arrow Lakeにて確実に進化、リーダーシップ製品の骨子になると説明していました。
最高5.8Ghz動作のi9-13900Kは前製品比で最大41%の性能向上
第13世代Coreプロセッサの詳細を、インテル株式会社 第二技術本部 部長 工学博士 安生健一朗氏が説明してくれました。第13世代Core、Raptor Lakeの特徴として、「(Raptor Coveへと進化し)最大5.8Ghz動作のP-Core」、「E-Coreが二倍の規模になった(最大16×E-core、8×P-Core)」、「L2キャッシュを増大(P-Coreはコア当たり1.25MB→2MB、E-Coreは4コアのクラスター当たり4MB)」といった要因により、前世代製品と比較して最大シングルスレッドが15%向上、マルチスレッドで41%向上、世界最速のデスクトッププロセッサと呼ぶに相応しい性能アップを果たしたそう。
第13世代Core(Raptor Lake)では、前世代のAlder Lakeと同じハイブリットアーキテクチャーを採用しつつ、P-Coreはかなりの改良を加えたRaptor Coveへと進化しました。半導体の製造プロセスはAlder Lakeと同じIntel 7ですが、プロセスに細かなチューングを行ってスイッチング速度をアップさせ、同じ電圧なら動作が200Mhz向上、同じ周波数なら50mV低い電圧で動作します。Raptor Coveではさらに、動作周波数を最大600Mhz向上させました。
E-Coreに関してはアーキテクチャはGracemontで前世代と同じですがL2キャッシュを倍増。さらに全コアターボ時で600Mhz早くなり、最大4.3Ghz動作。そしてL2キャッシュのプリフェッチアルゴリズムをP-Core同様にスマート化することで高速にしています。
チップセットは従来の600シリーズも使えますが、新しくZ790をリリース、PCIe Gen4のレーン数を12→20を増大(その分Gen3のレーン数が減ってトータル28レーン)。USB 3.0 Gen2x2は4→5に増強。そしてL2キャッシュの増大で「特にゲームに効く」速度アップを実現。そしてダイナミックプレフェッチアルゴリズムを採用し、機械学習を利用したスマートなキャッシュの利用を行っています。
DDR5に関しては1チャネル当たり1枚のDIMMだと最大5600MT/s(2枚なら4400MT/s)と高速化するとともに内部のリングバス速度を全コアターボ時で最大900Mhz高速化、最大5Ghzと内部通信のボトルネックを減らしました。L3キャッシュを最大36MB備えると共に、インクルーシブ、ノンインクルーシブをワークロードによって切り替える新しい動的キャッシュを採用しています。
またPL2の設定を変更することで前世代製品(12900K-241W)と同等の性能を(計算上)65Wで達成可能。115Wでも+21%、同じ241Wならば+37%と高い電力性能が得られると言います。
ハイブリッドアーキテクチャーも拡張。CPU内部のインテルスレッドディレクターが拡張され、さらにWindows 11(22H2)によってユーザーがバックグラウンドに置いたプログラムとOSのバックグラウンドサービスを区別して、ユーザーにやさしい最適化。
なお、今回発表されたのはデスクトップ向けで、モデルナンバーの後ろに「K」がつく、高い性能上限が期待できる「アンロックバージョン」となります。Core i9/7/5の三製品で、それぞれGPU有り無しの6SKUのラインナップですが、安生氏は「i5でも5Ghz越え」と下位製品でもパフォーマンスをアピールしていました。
このプロセッサ、おススメしたいのはハイエンド性能を求めるゲーマーとクリエイターです。ゲームに関しては幅広く前世代よりも良いフレームレートを出せるとアピール。コンテンツ制作についても単独のアプリだけでなく、制作のワークフローを通じて時短となると紹介していました。
オーバークロックに関してはエンスージアスト向けと一般向けに二種類のツールを提供し、わかりやすさと簡便性両方に配慮していると言います。
なお、日本の会見では特に言及はありませんでしたが、Intel Innovation 2022では、特別なオーバークロック操作なしで、最大6Ghzで動作する限定版モデルを来年発売するとアナウンスしました。
インテルが全コア5Ghzでブースト動作する限定版CPU「Core i9-9900KS」を発売したのは2019年11月のこと(5Ghz動作への到達はシングルコアならばCore i7-8086K Limited Editionが先です)。わずか3年後に6Ghz製品をアナウンスするとはと驚きました。その時の型番からすると、今回の限定版の型番は「i9-13900KS」となるのでしょうか?
UCIeによってマルチファブで一つのユニット作成可能に
インテルは今後の社会に必要な「4つのSuper Power」として、コンピューティング、コネクティビティ、インフラストラクチャー、AIを挙げていましたが、これはデータが入力されてからの演算・推論処理に必要なものです。Pat Gelsinger氏は今回5つめの要素としてセンシングを追加。データ入力の自動化も重要な要素として加えることになりました。
今回のはIntel Innovationの基調講演では多くの発表がありましたが、日本の会見では土肥氏がこれを4つに絞って説明しました。
まずは発売前製品の開発・テストをサポートする「Intel Developer Cloud」を紹介。これは以前から発表されていましたが、今回対象製品に第4世代 インテル Xeon スケーラブルプロセッサ(Sapphire Rapids)とインテル Data Center GPUがサポートに加わりました。続いては第13世代Coreプロセッサですが、この説明は先に安生氏がたっぷりやったと省略。
三つ目がGetiプラットフォームで、以前はSonoma Creekのコードネームで紹介されていたものです。企業向けのコンピュータービジョンAIを迅速かつ容易に開発・展開できるもの。コンピュータービジョンAIを行うには特別な技術と環境が必要でしたが、全体に簡易になったうえ、一番手間のかかるトレーニング作業が簡略化できるのがポイントのようです。
最後は半導体パッケージの話です。最近はパッケージの中に一つのシリコンダイが入っているだけとは限らず、複数のシリコンダイをインターコネクトで接続する方法が使われつつあります
このパッケージ内のインターコネクトをオープン規格「Universal Chiplet Interconnect Express」によって標準化することで、Intelの工場で作ったシリコンダイだけでなく、TSMCやSamsungのシリコンダイを組み合わせたパッケージを作れるようになります。
最後に、シリコンフォトニクスについてのデモも公開されました。インテルは従来から、チップから直接光通信を行うシリコンフォトニクスを研究していますが、今回、研究室レベルのデモをリモート公開しました。パッケージに光コネクタと思しきものを脱着して、信号が伝達されることを示していました。
具体的な利用等に関しての言及はありませんでしたが、NTTと共同で開発中のIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)などでの応用が予想されます。