そこで今回の研究では、この方法を用いて100nmのCu2Oキューブを有機モノマー溶液中で反応させることが試みられた。その結果、キューブ表面に対し、平らに数nmの有機膜が成長していることが確認されたという。またレイヤーの成長に伴い、Cu2O表面の疎水性が向上したとする。これらの有機レイヤーを修飾したCu2Oを炭素電極上でのCO2還元に用いると、水素発生が抑制され、高い効率でメタンが発生することが確認されたとする。
有機レイヤーがこれらの還元性能にどのように影響するかについて研究チームでは、有機膜が銅表面にアプローチする物質を選別しているということが考えられるという。水中のCO2還元では、CO2の水溶性が低いために、圧倒的に多い水の還元による水素発生が競合することが問題になる。しかし、表面の有機レイヤーの疎水性が高いために、銅表面から水が排除され、CO2還元を有利にしていることが推測されるとしている。
また、Cu2OはCO2還元の進行とともにCuに還元されもとの構造を失って融合する一方、有機レイヤーで被覆されるとキューブ状の構造を維持することが判明。このことはCO2還元の際の触媒のサイズ、銅原子の配列および価数が有機レイヤーによって維持されることが示されているとした。
今回の研究を受けて研究チームでは、有機レイヤーの構造にはさまざまな有機骨格を導入することが可能であり、より選択的なCO2還元が期待できるとするほか、有機レイヤーによる触媒の構造維持を用いることで、より長寿命・大電流の触媒構造の作成に応用することを考えているとしており、これにより実験室系での高純度CO2だけでなく、産業的に排出される低純度・低濃度のCO2のリサイクル利用にも適用可能な触媒開発が期待されるとしている。