パナソニックは、モバイルノートPC「レッツノート FV」(Let's note FV)シリーズの2022年夏モデルを発売した。基本的な仕様は従来モデルをほぼそのまま受け継ぎつつ、CPUが第12世代Coreプロセッサーに刷新されたことで性能が大きく向上している。

今回は、タッチ対応ディスプレイ搭載の最上位モデル「CF-FV3DDPCR」を取り上げ、性能面を中心にチェックしたいと思う。

  • レッツノート FV3の2022年夏モデル(CF-FV3DDPCR)

堅牢性や軽さ&薄さは従来モデルを継承

「レッツノート FV3 CF-FV3DDPCR」(以下、CF-FV3DDPCR)は、レッツノートシリーズの中でも特に人気の高い「レッツノート FV」シリーズの最新モデルだ。

冒頭でも紹介したようにCPUに第12世代Coreプロセッサーを採用し、性能が大きく強化されているが、シリーズ初となるアスペクト比3.2の14型ディスプレイの採用や、薄型軽量ながら圧倒的な堅牢性を実現するボディなど、FVシリーズの特徴はそのまま受け継がれている。

  レッツノート FV3 CF-FV3DDPCRの主なスペック
CPU Core i7-1260P
メモリ 16GB
ストレージ 512GB
OS Windows 11 Pro 64bit
ディスプレイ 14型、2,160×1,440ドット
カメラ 約207万画素
無線機能 Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.2
生体認証 顔認証カメラ、指紋認証センサー
インターフェイス Thunderbolt 4×2、USB 3.0 Type-A×3、ギガビットイーサネット、HDMI、アナログRGB、SDカードスロット、オーディオジャック
サイズ/重さ 308.6×235.3×18.5mm/1.204kg

凹凸の施されたボンネット構造の天板の採用や、キーボード手前に円形のタッチパッド「ホイールパッド」を採用する点など、ひと目でレッツノートシリーズとわかるデザインや機能の特徴も、従来モデルから変わっていない。

  • 本体デザインは従来モデルから全く変わっていない

本体サイズは308.6×235.3×18.5mmとなっている。今回の試用機はタッチ対応ディスプレイ搭載のため、タッチ非対応モデルと比べると0.3mm厚くなっているが、それでも十分な薄さが実現されており、薄型のブリーフケースにも余裕で収納できるだろう。

そのうえで、シリーズおなじみの優れた堅牢性もしっかり実現。76cm落下試験や100kgf加圧振動試験をはじめとして、様々な堅牢性テストを実施し、堅牢性が確認されているため、シリーズ同様安心して持ち運べそうだ。

  • 天板

  • 天板はシリーズおなじみのボンネット構造を採用しており、優れた堅牢性を実現

重量は約1.204kg。実測では1,180.5gと、公称をわずかに下回っていた。モバイルノートPCとしてはもう少し軽いと嬉しいが、まずまず軽快に持ち歩ける重量だ。なお、標準付属の「バッテリーパック(L)」ではなく、別売の「バッテリーパック(S)」を利用すれば約100g軽量化が可能だ。

  • 正面

  • 左側面

  • 背面

  • 右側面

  • 底面

  • 重量は実測で1180.5g。モバイルノートPCとしてはもう少し軽いと嬉しいが、別売の「バッテリーパック(S)」を利用すれば約100g軽量化が可能

ディスプレイはアスペクト比3:2の14型

ディスプレイは、2,160×1,440ドット表示対応の14型液晶を採用している。レッツノートシリーズで、アスペクト比3:2の14型ディスプレイ採用は従来モデルのFV1が初だったが、FV3でもそのまま受け継がれている。

  • 従来モデル同様に、2,160×1,440ドット表示対応の14型液晶を採用。試用機はタッチパネル搭載で、タッチによる直感的な操作が可能だ

一般的なフルHDディスプレイと比べて縦の表示領域が広く、Web閲覧はもちろんOffice文書の閲覧や編集といった作業でも縦の情報をより多く表示でき、快適に作業が行える。また、今回試用したCF-FV3DDPCRではタッチパネルも搭載しており、画面をタッチして直感的な操作が行える点も、快適度を高めていると感じる。

ただし、タッチパネル搭載も影響してか、ディスプレイ表面は光沢処理となっている。そのおかげで発色の鮮やかさはなかなかのものではあるが、外光の映り込みがやや気になる。レッツノートシリーズは一般ビジネスユーザーも多く利用するため、タッチパネル搭載でも非光沢処理を実現してもらいたいところだ。

  • パネル表面は光沢仕様のため、外光の映り込みは少々気になるが、発色は非常に鮮やかだ

キーボードやタッチパッドは、従来モデルと同等。指が引っかかりにくく快適にタイピングできるリーフトップ形状のキーボードは、約19mmフルピッチの確保と標準的な配列で、非常に扱いやすい。キーボードバックライトも引き続き搭載しているので、暗い場所でのタイピングも快適。また打鍵音も比較的静かなので、よほど強くタイピングしない限り、打鍵音が気になることもないだろう。

シリーズの特徴でもある円形タッチパッドのホイールパッドは、他のシリーズよりも面積が広く、操作性が向上しており、こちらも利便性は申し分ない。

  • キーボードも従来モデルから変わりがない。標準的な日本語配列で、キーピッチは19mmフルピッチ。打鍵音も比較的静かで扱いやすい。バックライトも備えるため、暗い場所でも快適にタイピング可能

  • タッチパッドも、シリーズおなじみの円形のホイールパッドを採用。パッド面積が大きくなっていることで、操作性が高められている

側面に非常に豊富なポートを用意する点も従来同様だ。左側面にHDMI、Thunderbolt 4×2、オーディオジャック、USB 3.0 Type-Aを、右側面にはギガビットイーサネット、USB 3.0 Type-A×2、SDカードスロット、アナログRGBを用意。

なお、左側面には丸形の電源コネクタも用意され、従来までのACアダプタを接続して利用できるが、付属のACアダプタはUSB Type-C接続タイプで、Thunderbolt 4に接続して利用する。

生体認証機能は、左パームレストに指紋認証センサー、ディスプレイ上部に顔認証カメラを搭載しており、双方を使い分けることで優れたセキュリティ性と利便性を両立できる。

  • 左側面には丸形電源コネクタ、HDMI、Thunderbolt 4×2、オーディオジャック、USB 3.0 Type-Aの各ポートを配置

  • 右側面には、ギガビットイーサネット、USB 3.0 Type-A×2、SDカードスロット、アナログRGBの各ポートを配置

  • 左パームレストに指紋認証センサーを搭載

  • ディスプレイ上部には顔認証カメラも搭載し、指紋認証センサーとの使い分けが可能

Webカメラにテレワークで便利な機能を追加

FV3では、Webカメラに新たな機能が追加されている。それは、背景ぼかしや、周囲の明るさに応じて人の顔の明るさを自動補正する機能だ。また、カメラで捉えた人物が常に中央付近に来るように自動トリミングする機能「顔位置自動補正」も用意。顔の位置が前後左右に動いても、パンやズームに相当するトリミングが自動的に行われ、顔が常に中央付近に来るようになっている。

そして、これら機能はカメラを利用するアプリ全てで機能するようになっている。独自ユーティリティ「Panasonic PC設定ユーティリティ」内に設定メニューが用意されており、そちらで背景ぼかしや明るさ補正をオンにしておくと、カメラ機能を利用する全てのアプリで背景ぼかしや明るさ補正、自動トリミングが有効となる。利用するWeb会議アプリごとに背景ぼかしなどの設定を行う必要なく利用できる点は非常に便利だ。

  • カメラには、背景ぼかしや、周囲の明るさに応じて人の顔の明るさを自動補正する機能を用意。「Panasonic PC設定ユーティリティ」で設定しておけば、アプリを問わず効果を利用できる

実際に試してみたが、確かにアプリを問わず、背景ぼかしや顔のトリミングが行われることを確認した。また、明るさ自動補正では、背景に明るい窓があるような環境でも顔が暗くならず撮影できるため、こちらも便利。そして、カメラ自体が約207万画素と高画質なため、顔位置がトリミングされても画質が低下しない点も嬉しい部分と感じた。

この他、従来モデルでも搭載していた、音質に優れるボックス型スピーカーや、音響効果ソフト「Waves MaxxAudio」、タイピング音やバックグラウンドノイズを低減する「インテル GNA に対応するAIノイズ除去」といったオーディオ機能も引き続き搭載。新たなカメラ機能と合わせ、テレワークをより快適にこなせるだろう。

  • 明るさ補正がオフの状態。背景が明るく、顔が暗く見づらくなっている

  • 明るさ補正をオンにすると、顔が明るく撮影できるようになった

  • AIノイズ除去機能などのオーディオ機能も引き続き搭載。カメラの新機能と合わせ、テレワークをより快適に行えるようになった

Core i7-1260P搭載で大幅な性能強化を実現

では、肝心の性能をチェックしていこう。今回は、CPUにCore i7-1165G7を搭載する従来モデルの「レッツノート FV1 CF-FV1KDPCR」を用意して、ベンチマークテストで性能を比較してみた。

まずはじめに、PCMark10の結果だ。下に示したのが結果だが、従来モデルの結果が4,783だったのに対し、CF-FV3DDPCRでは5,747と、大幅なスコア向上が確認できた。細かな結果をチェックしてみても、全ての項目でスコアが上回っている。

従来モデルでも、パナソニック独自の「Maxperformer」によってCPU性能が最大限に引き出されていた。しかしCF-FV3DDPCRでは、従来を大きく上回るスコアが得られている点に大きく驚かされる。

  • 現行モデル「CF-FV3DDPCR」の結果

  • 従来モデル「CF-FV1KDPCR」の結果

  • CF-FV3DDPCRの結果が全ての項目でCF-FV1KDPCRを大きく上回っている。Core i7-1165G7の優れた性能がこの結果からもしっかり伝わってくる

続いてCINEBENCH R23の結果だが、こちらもCF-FV3DDPCRが従来モデルのスコアを大きく上回った。特にマルチコアのスコアは約1.65倍となっている。もともと第12世代Coreプロセッサーではマルチスレッド性能が大きく高められているが、ここまで性能が上がると、性能面では全く違う印象を受けるはずだ。

  • 現行モデル「CF-FV3DDPCR」の結果

  • 従来モデル「CF-FV1KDPCR」の結果

  • マルチコアのスコアは、CF-FV3DDPCRがCF-FV1KDPCRの約1.65倍と圧倒しており、こちらからもCore i7-1260Pのマルチスレッド性能の高さがよくわかる

3DMarkのWild LifeとTime Spyの結果もCF-FV3DDPCRのほうがスコアが上回っている。レッツノートはビジネスモバイルPCなので、3D描画能力がそこまで重要視されることはないが、実際にはさまざまなアプリで3D描画機能が利用されており、ビジネスモバイルPCでも3D描画能力の向上によって、普段の作業効率の向上が見込める。そういった意味でも、3DMarkのスコアが優れる点は大きな魅力となるだろう。

3DMark・Wild Life

  • 現行モデル「CF-FV3DDPCR」の結果

  • 従来モデル「CF-FV1KDPCR」の結果

3DMark・Time Spy

  • 現行モデル「CF-FV3DDPCR」の結果

  • 従来モデル「CF-FV1KDPCR」の結果

  • 3DMarkの2種類のテストも、CF-FV3DDPCRが圧倒。3D描画機能を利用するビジネスアプリも多く存在しており、3D描画能力の高さもビジネスシーンでの作業効率を高めてくれる

最後に、バッテリー駆動時間を計測してみた。今回は、PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%で計測してみた。

結果は10時間10分だった。公称の駆動時間は約17時間なので、やや短い印象もあるが、公称の駆動時間はJEITAバッテリ動作時間測定法 2.0ベースのもので、そもそも負荷が違いすぎる。そういった意味で、ベンチマークテストで10時間超を記録したのは、十分納得の結果と言える。

また、レッツノートの場合、他のモバイルノートPCと違いバッテリーが着脱式となっている。もしさらに長時間の駆動が必要な場合でも、別途バッテリーパックを購入して持ち歩くことで対応可能で、この点もレッツノートシリーズの魅力と言える。

  • バッテリ駆動時間のテストでは10時間10分を記録。モバイルノートPCとしてまずまずの駆動時間を確保できている

  • FV3も従来モデル同様に着脱式バッテリーを採用しているので、複数のバッテリーを持ち歩くことで大きく駆動時間を延ばせられる

高性能モバイルPCとしての魅力が大きく高まった

今回見てきたようにCF-FV3DDPCRは、従来までの特徴はそのままに、CPUを第12世代Coreプロセッサーに強化したことで性能が大きく高められている。これによって、動作の重い作業もより効率良くこなせるようになるだろう。それでいて、申し分ない軽さと、毎日安心して持ち歩ける優れた堅牢性、十分なバッテリー駆動時間が備わっており、ハイエンドモバイルノートPCとしての魅力がさらに高まったと感じる。

ただし、気になるのは価格だ。スペックが充実していることもあるが、実売価格は358,000円前後と、モバイルノートPCとしてもかなり高価な部類となっている。もう少し安ければありがたいところで、このあたりはもう少し頑張ってほしいと感じる。

それでも、毎日安心して持ち歩ける軽量かつ頑丈ボディにこれだけの高性能が詰め込まれている点は、非常に惹かれるものがある。ややコストがかかっても、実用性や性能重視でビジネスモバイルPCを探しているなら、ぜひチェックしてみてもらいたい。