実際に、蛍光発光スペクトルの観察が行われたところ、青と黄のスペクトルが観測できるとともに、これらの蛍光寿命が異なっていることも確認された。この時の白色光の色座標は(0.31,0.30)で、純白の値(1/3,1/3)に近く、純度の高い白だったという。また、蛍光量子収率も0.12と実用レベルといわれる0.1を超えていることも確認したとする。

さらに結晶のX線構造解析から、1arには2種類の回転異性体(外側のフェニル基と中央の多環芳香環の間の回転角が異なる)があり、それらが“開きにした魚の骨”のような模様のへリンボーン状に積み重なっていることが判明。この2種類の回転異性体AとBとし、それぞれの特徴が調べられたところ、Aの分子間の重なりは少なく、分子間の距離も離れているため、単分子的な青色蛍光を発する一方、Bの分子間では重なり部分が大きく分子間距離も小さいため、2分子的なエキシマー発光を示すことになり、これが合わさって白色の発光が示されていることが示されたとする。

  • 結晶状態で白色蛍光を発する多環芳香族化合物1arの分子構造

    (a)結晶状態で白色蛍光を発する多環芳香族化合物1arの分子構造。(b)その溶液を用いてRの文字を書き乾燥させ、可視光で見たのが左図。365nmの紫外光で見ると、右図のように白く発光する。(c)白く見える理由は、結晶中で青色蛍光と黄色蛍光が出ているため (出所:龍谷大Webサイト)

なお、研究チームでは、このような構造が結晶成長時に自発的に形成され、白色の発光が得られることは興味深い現象としており、今後、有機ELディスプレイなどへの応用が期待されるとしている。