「Pixel 6」3兄弟(もしくは3姉妹?)の末っ子とも言うべき、「Pixel 6a」が登場しました。これまでもPixelシリーズの「a」ラインナップはありましたが、単なる廉価版とは言いきれない製品です。
Pixel 6シリーズ3兄弟の末っ子は、スペック抑制で安価に
Pixel 6シリーズは、昨年10月に発売されたGoogle純正スマートフォンの最新モデルです。Google独自のTensorチップを搭載し、GoogleならではのAI機能を満載した製品でした。 昨年10月時点でのラインナップは「Pixel 6 Pro」「Pixel 6」の2モデルで、主に画面サイズとカメラスペックの違いで、差別化されていました。Pixel 6 Proのディスプレイは6.7型QHD+(1,440×3,120ドット)のLTPO OLED、Pixel 6は6.4型FHD+(1,080×2,400ドット)のOLEDとなっています。
カメラは、Pixel 6 Proが50メガピクセルのOcta PD Quad Bayerセンサーを搭載したメインカメラと12メガピクセルの超広角カメラ、そして48メガピクセルの望遠カメラのトリプルカメラを搭載し、Pixel 6は望遠カメラを除いたデュアルカメラを搭載していました。
この望遠カメラによって、Pixel 6 Proは強力な20倍デジタルズームを実現。ちなみに、インカメラもそれぞれ11.1メガピクセル、8メガピクセルと微妙に異なっており、インカメラで4K撮影が可能なのはPixel 6 Proだけです。
ネットワーク面では、Pixel 6 Proは5Gのミリ波対応、Pixel 6は非対応。他にも細かい点でいくつか違いはありますが、Pixel 6 Proがフルスペック、Pixel 6は少しスペックを落しつつ、コンパクトなフラットディスプレイを実現したモデルです。
さて、そして今回登場した末っ子「Pixel 6a」です。ディスプレイサイズは6.1型FHD+とさらにコンパクトになりました。スペックを見る限りはPixel 6に近いOLEDですが、リフレッシュレートが最大90Hzから最大60Hzにダウン。カバーガラスがCorning Gorilla Glass VictusからGorilla Glass 3になっています。
背面ガラスの素材もコストダウンの影響が見て取れます。結果として、防水防塵性能はIP68からIP67に少しダウンしています。ただ、一般的な利用シーンで問題になることは少ないでしょう。ハードウェア面では、ワイヤレス充電非対応になったのも違いでしょう。
ディスプレイが小型化したため、本体サイズもH152.2×W71.8×D8.9mm、178gと小型軽量化しました。特に重さは上位2モデルが200g超えだったのに対して、20~30gの軽量化を果たしています。
スペック的にはいくつか異なる点がありますが、外観デザインのベースは共通しています。前面はフラットなので、Pixel 6かPixel 6aかを一見して判別するのは難しいでしょう。背面のデザインも似ていて区別が難しいのですが、後述するカメラ機能の違いから、カメラ周辺のバー型のデザインの出っ張りが大幅に小さくなっています。
違いはいくつかありますが、デザインがトータルで変わらないため、名称は違うものの「3兄弟」というイメージです。メモリが上から12GB、8GBと来て、順調に6GBになっていたり、マイクが上位2モデルは3つだったのが2つになっていたり、スペックが下がっている面はありますが、コストと性能のバランスをとろうとした工夫が見て取れます。
変わらない部分もあって、Pixel 6シリーズでは画面内指紋センサーの認識が遅いという弱点がありますが、Pixel 6aでもその傾向は変わらないようです。
カメラ面のスペックダウンも含めて、コストを下げたことで直販価格は53,900円を実現。Pixel 6 Proが116,600円(発売時点のGoogleストア価格、現在は99,800円に値下げ)、Pixel 6が74,800円となっているので、グッと手が届きやすくなりました。
記事末尾に3機種の比較表を掲載しておりますので、そちらも参考にしてください。
安価でもAI機能がそのまま使える
Pixel 6aはお手頃価格となりましたが、上位モデルと変わらない部分もあります。むしろそれがPixel 6兄弟の心臓部と言えるでしょう。搭載しているSoCに、Google独自開発のTensorチップを採用しているという点です。
このTensorはPixel 6シリーズ共通で、Googleの得意とするAI機能を実現しています。そのため、従来のPixel 6シリーズで対応していた各種AI機能はほぼPixel 6aもサポートしています。
AI機能として搭載されているのは、主にGoogleアシスタントによる音声入力、リアルタイム翻訳、レコーダーアプリによる音声認識、スナップショットといった機能。音声を認識してテキスト化する機能が多い点が特徴的です。いずれも、Pixel 6シリーズに共通した機能で、Pixel 6a独自機能というわけではありません。
とはいえ、非常に強力な機能であり、この機能がより手軽に使えるようになる――というのがPixel 6aの真価でしょう。これらの機能はすべてPixel 6シリーズで共通して使えるため、過去のレビュー記事でご紹介した内容もぜひ参照してください。
Googleアシスタントによる音声入力は、Pixel 6シリーズや一部のPixel 5シリーズなどで対応しています。継続してアップデートされており、音声コマンドが当初より充実しています。句読点の自動認識や「消去」「削除」「元に戻す」といったコマンドに対応。「ハートの絵文字」「親指を立てている絵文字」といった音声の絵文字入力も可能です。
なお、「OK, Google、入力して」で音声入力がスタートするというヘルプはあるのですが、手元では動作しませんでした。今後対応されるのかもしれません。最後に「送信」でメッセージの送信もできます(すべてのメッセージ系アプリで試したわけではありませんが)。
音声入力の精度は高く、明示的に「読点」「句点(まる)」などと言えば句読点も入力できますし、絵文字の入力も一部ですが可能になっているので、ある程度の文章は素早く音声で入力して送信できます。個人的に音声入力は慣れが必要と感じていますが、いざ慣れればキーボード入力よりも早い入力が可能そうです。
続いては「リアルタイム翻訳」。メッセージやTwitterのDMなど、一部のメッセージ系のアプリで、受信したメッセージが外国語を認識すると翻訳するかどうかの通知が表示され、それを選択すると、それ以降のメッセージは受信時にリアルタイムで翻訳されます。
送信時も、テキスト入力欄に日本語で入力をすると、即座に外国語に変換されます。そのまま送信すれば、相手には外国語で届くというわけです。日中韓英独語など、複数の言語に対応しています。
リアルタイム翻訳では、他に「自動字幕起こし」「通訳モード」も搭載。自動文字起こしは、動画を認識すると自動で字幕を表示するというもので、日本語をそのまま音声認識してテキスト化してくれるほか、対応する外国語は日本語に翻訳して表示することも可能です。
通訳モードは、人と人の会話を翻訳してくれる機能で、Googleアシスタントから「英語(外国語)を通訳して」というと起動し、マイクボタンをタッチして話した言語をそれぞれ翻訳してくれます。ネイティブの速い会話を通訳してくれるかどうかは微妙です。ゆっくりめに短文で話せば、それなりに精度は高いようです。
現時点でPixelシリーズしか対応していない「レコーダー」アプリも強力。シンプルな音声録音アプリですが、リアルタイムに音声を認識してテキスト化してくれます。当然日本語も対応。手元のPixel 6 Proでは普段から外部マイクを使って活用していますが、同じ機能がPixel 6aでも使えます。
精度はそこそこという印象ですが、アップロードしなければローカルだけで処理が完結する日本語文字起こしという得がたい特徴は利便性が高く、できれば他のAndroidスマートフォンにも展開して欲しいところ。
Google自身はこの機能はTensorによるものだとして、ほかのスマートフォンへの展開は否定していますが、Tensorを搭載していないPixel 3~Pixel 5aでも、このレコーダーアプリの文字起こしは使えるため、他社製品でも対応は可能にも思えます。ただし、Pixel 6以降はイタリア語とスペイン語の文字起こしに対応しており、このあたりはTensor搭載端末における独自機能のようです。
いずれにしても、上位モデルと同等のAI機能が使えるというのは、Pixel 6aのメリットです。
上位モデル譲りの高度なカメラ機能
Pixel 6シリーズといえば、強力なカメラ機能も特徴。特にPixel 6 Proに搭載された望遠カメラのデジタルズームは破格の性能です。20倍デジタルズームなのですが、このクラスのデジタルズームとしては見られる画質です。
それに対して、Pixel 6aは残念ながら望遠カメラを搭載していません。Pixel 6と同様のデュアルカメラで、超広角カメラとメインカメラの2つを搭載します。加えて、カメラのスペックも異なっています。
Pixel 6/6 Proのメインカメラは50メガピクセルのセンサーを採用し、ピクセルビニングによって1,250万画素の画像を生成します。ピクセルビニング前提ですが、ピクセルピッチは2.4μm。それに対してPixel 6aは12.2メガピクセルのセンサーで、ピクセルピッチは1.4μmとなっています。
加えて、レンズの焦点距離も異なり、35mm判換算ではPixel 6/6 Proが24mmのところ、Pixel 6aは27mmと、やや画角が狭くなりました。超広角カメラについては、いずれも12メガピクセル、ピクセルピッチ1.25μm、35mm判換算焦点距離16mm(実焦点距離2.35mm)といったスペックは変わりません。
実際に撮影をしてみたところ、細かいことを言えば描写の違いはいろいろと見られます。ボケ味や細部の解像、わずかな色味の違いもありますが、スナップ写真で明らかに画質が劣るということはないようです。
Pixel 6 ProとPixel 6aでズームすると、デジタル3倍ズームまでは似たような画質ですが、4倍になると望遠カメラに切り替わるPixel 6 Proと、デジタルズームのPixel 6aでは画質に明確な差が出ます。
Pixel 6aのデジタルズームは最大7倍。Pixel 6 Proにはまだ余裕があり、Pixel 6aはPixel 6と同程度という印象です。ちなみに、Pixel 6aの7倍ズームよりも、Pixel 6 Proの20倍ズームの方が画質は良さそうです。
また、高ISO感度時のノイズ面でもPixel 6/6 Proの方が有利なようです。とはいえ、カメラとしてPixel 6aが劣るというわけではなく、Pixel 6/6 Proが優秀という印象です。Pixel 6a単体で見れば十分健闘していると言えます。
気になる点といえば、Pixel 6/6 Proには存在した「モーション」モードがなくなっています。モーションモードには流し撮りができる「アクションパン」や「長時間露光」という2つの機能がありますが、これはPixel 6aのカメラには含まれていません。もともとベータ版の機能とされていましたが、なぜかPixel 6aのカメラでは省かれているようです。
総じてみれば、センサーやレンズというハードウェアに起因する写りの違いや、一部機能の違いはありますが、単体で見れば十分扱いやすく描写のいいカメラでしょう。
撮影後の編集機能として、「消しゴムマジック」はPixel 6/6 Proと同様に利用できます。「消去」と「カモフラージュ」という2つの機能があり、人物を検出して背景で塗りつぶす「消去」は、画面内に入り込んでしまった他人を簡単に消してくれます。
カモフラージュは、Pixel 6/6 Pro向けにも最近搭載された機能で、選択したオブジェクトを周囲のカラーで塗りつぶすという機能です。撮影デモ用としてカメレオンのフィギュアがGoogleから貸し出されましたが、カメレオンのように後処理で色が変化します。
こちらはあまり具体的な用途は思いつきませんが、物体と周囲の色を認識してその物体だけ塗りつぶすという高度な処理を行っているのは分かります。
Pixel 6aは、Pixel 6シリーズの末っ子として、ハードウェア面ではコストダウンの影響を感じさせますが、デザイン性やソフトウェア面、特にTensorを活用したAI処理は変わらず、Pixel 6シリーズ特有の機能の多くは利用できることがメリットです。
Pixel 6に比べれば2万円ほど安い5万円台という本体価格でPixel 6シリーズの機能を楽しめる、コストパフォーマンスの高い機種だと感じました。
Google Pixel 6シリーズ スペック比較表
Pixel 6 Pro | Pixel 6 | Pixel 6a | |
---|---|---|---|
ディスプレイ | 6.7型QHD+ LTPO OLED | 6.4型FHD+ OLED | 6.1型FHD+ OLED |
アスペクト比 | 19.5:9 | 20:9 | |
リフレッシュレート | 120Hz | 90Hz | 60Hz |
カバーガラス | Corning Gorilla Glass Victus | Corning Gorilla Glass 3 | |
背面カバー | ふちなしのCorning Gorilla Glass Victus背面ガラスとポリッシュ仕上げ合金製フレーム | ふちなしのCorning Gorilla Glass 6背面ガラスとテクスチャ加工の合金製フレーム | 高温成形された3D合成素材とテクスチャ加工の合金製フレーム |
防水防塵 | IP68 | IP67 | |
SoC | Tensor+Titan M2 | ||
メモリ | 12GB | 8GB | 6GB |
ストレージ | 128GB/256GB | 128GB | |
カメラ | 50MP(メイン)/12MP(超広角)/48MP(望遠) | 50MP(メイン)/12MP(超広角) | 12.2MP(メイン)/12MP(超広角) |
インカメラ | 11.1MP | 8MP | |
メディア | ステレオスピーカー、マイク×3、ノイズキャンセレーション | ステレオスピーカー、マイク×2、ノイズキャンセレーション | |
Wi-Fi | Wi-Fi 6(802.11ax)/6E(6GHz) | ||
Bluetooth | 5.2 | ||
FeliCa | ○ | ||
バッテリー容量 | 5,003mAh | 4,614mAh | 4,410mAh |
本体サイズ | 163.9×75.9×8.9mm | 158.6×74.8×8.9 mm | 152.2×71.8×8.9mm |
質量 | 210g | 207g | 178g |
価格 | 116,600円 | 74,800円 | 53,900円 |