アイロボットジャパンは7月7日、ロボット掃除機の新モデル「ルンバ i2」(以下、i2)を発売しました。i2の大きな特徴は、マッピング機能を搭載して賢いルート設定ができるモデルながら、公式オンラインストア価格が39,800円という高いコストパフォーマンスです。ルンバのベストセラー機「e5」の後継となります。
i2の製品発表会にてアイロボットジャパン 代表執行役員社長の挽野元氏は、このi2はルンバの普及を防げていた「ルンバ パラドックス」を打破する製品だと語りました。i2の詳しい機能や、e5からの進化については別記事『ルンバ新モデル「i2」が39,800円で登場! 性能向上でロボット掃除機デビューに最適な1台』をご覧いただくとして、ここでは発表会の様子と「ルンバ パラドックス」について紹介しつつ、新しいi2によってユーザーの選択肢がどう変わったのかを解説します。
ロボット掃除機の普及を阻む「ルンバ パラドックス」って?
ルンバといえば、ロボット掃除機の代名詞ともいえるブランド。日本国内では、2022年6月までに500万台の普及を突破し、ロボット掃除機としては圧倒的なシェアを持っています。とはいえ、ロボット掃除機そのものの国内世帯普及率は、現時点で8.3%程度です。アイロボットが提唱する「ロボット掃除機を一家に1台」という目標にはまだ長い道があります。そして、この普及を阻む原因に「ルンバ パラドックス」があるといいます。
そもそもパラドックスとは、「世間一般的には正しいと認識されているものごとに対し、反対である状況や事態」――。簡単にいえば「正しそうにみえて実際は正しくないこと」「誤解されていること」などを指します。
これをルンバ パラドックスに当てはめると、世間一般のロボット掃除機(ルンバ)に対する誤解や思い込みとなるでしょう。アイロボットが2022年5月に実施した調査によると、ロボット掃除機の購入を検討していない人(800名)が挙げた「ロボット掃除機を必要ないと思う理由」は大きく以下の3点でした。
- 機能面:ゴミの吸い残しがありそう、操作が複雑そう、掃除が雑そう
- 環境面:床に物が多い、家が狭い、時間に余裕がある(自分で掃除できる)
- 価格面:高価そう、価格と機能が合っていない、安い製品は性能が不十分
そこで、実際にルンバを購入したユーザー(7,000名)を対象に調査をしたところ、ルンバを実際に使ってみると3つの不満点は誤解だった――としたユーザーが多いことがわかりました。ルンバユーザーが満足したポイントとしては、「アプリから簡単操作」「段差を回避」「(ソファやベッドの下など)手の届かないところまで掃除してくれる」といった内容を挙げています。
次はルンバユーザーの実態調査。週に5時間以上の時間的な余裕ができたという声や、ルンバを使用してからキレイ好きになったといった環境面でもメリットを感じるユーザーが多いとのこと。
とくに「家が狭いからロボット掃除機は不要」というユーザーに対して、挽野氏は国内におけるi3シリーズの平均清掃面積は20平方メートルであることを強調します。これはワンルーム程度の広さで、狭い清掃面積のユーザーでも満足度が高いとしました。
最後に価格面では、ルンバを購入したユーザーの92.1%が「価格以上の価値がある」と回答。総合満足度も95.9%と高い結果になりました。
こうした調査結果から、挽野氏は「ルンバを使っていない人が感じているネガティブな印象は、実際に使用しているユーザーにとってはまったく逆の実態」と語ります。この「ルンバ パラドックス」を払拭する新モデルとして投入するのが、性能と価格のベストバランスを実現したという今回のコスパモデル「ルンバ i2」です。
性能面では、従来の同価格モデル「e5」にはなかったマップ作成機能を搭載。部屋の形を把握して賢い動きで掃除をし、掃除後は掃除したエリアの地図をスマホアプリに送信する機能も備えています。吸引力も、従来のe5から2倍にアップ。こうした大幅な機能向上にもかかわらず、価格はe5と同じ39,800円と、驚きのコストパフォーマンスを実現しています。
見取り図のリリー氏が身体を張ってルンバ パラドックスの解消に奮闘!
発表会のゲストは、いままでロボット掃除機を使ったことがないという女優の前田敦子氏。その理由として、「部屋のすみまでちゃんと掃除できるか、本当にキレイになるか疑問」「ロボット掃除機は高い印象がある……2桁万円くらいしそう」などとコメントしました。
そんななか、自宅で実際にルンバを使っているという見取り図の盛山晋太郎氏は「それこそルンバ パラドックスです!」と、アイロボットのユニフォームでルンバの魅力を力説。相方のリリー氏はロボット掃除機「リリンバ」に扮して、ルンバの掃除力や賢い動きを実演しました。
e5の後継ながら、購入時に比較すべきはi3シリーズ
新モデルのi2が投入されたことで、日本におけるルンバのラインナップはどう変わったのでしょうか? これまでのラインナップ概要は以下の通りです。
- マップ作成機能がなく必要な機能だけに絞ったエントリーモデルの「e5」
- マップ作成機能搭載でe5の2倍という吸引力を持つスタンダードモデルの「i3」
- カメラで障害物を認識して部屋が散らかっていても賢く掃除してくれる「j7」
- i2の4倍という吸引力の最上位モデル「s9」
今回、e5の後継となるi2が登場したことで、e5は公式直販サイトのラインナップから外れました。i2がエントリーモデルの位置付けです。なお、エントリーモデルの一部として「ルンバ 600」シリーズも継続されます。
i2は従来モデルのe5と同価格のため「e5の後継機」とされていますが、機能面やデザイン、ゴミ吸引能力は、むしろi3シリーズに近い製品です。i3の価格は49,800円(クリーンベースなしモデル)と、i2より1万円ほど高い設定ですが、i2との違いは必要な分だけ充電して掃除を再開するスマート充電に対応している点と(i2は掃除中にバッテリーが少なくなると充電台に戻り、フル充電してから掃除を再開します)、掃除する部屋をアプリで指定できるかといったソフトウェア面によるもの。ロボット掃除機本体のハードウェアとしては、i2とi3に大きな違いはありません。
i2とi3で購入を迷ったときに考えるべき一番のポイントは、クリーンベース充電ステーションの有無です。クリーンベース充電ステーションとは、掃除後にルンバ本体のゴミを自動的に吸い上げて溜める充電ステーションのこと。
新ラインナップでは、i2のみ、購入時にクリーンベース付属モデルを選択することができません。クリーンベース付属モデルは、i3が「i3+」、j7が「j7+」といったように、製品名の最後に「+」が付きます。
クリーンベースは単体でも別売しており、i2もあとからクリーンベースを追加することは可能ですが、クリーンベース単体の直販価格は44,000円(2022年7月現在)です。i2とクリーンベースをそれぞれ購入すると、クリーンベース付属のi3+より高くなってしまうので注意してください。
以前から、ルンバシリーズは他社のロボット掃除機よりも少し高価格な印象がありました。しかし、ルンバの知名度と信頼性の高さから「ちょっと高くてもルンバ」というユーザーに選ばれ、普及を伸ばしてきた一面があります。いまでは、他社のロボット掃除機も高性能化・高機能化が進み、価格もそれなりに高くなってきました。
今回のi2が登場したことで、ルンバのスタンダードモデル(i3)並みの性能と機能が39,800円で手に入るようになり、価格競争力が大きく高まったといえます。これまで価格面でルンバの購入を迷っていたユーザーにとって、選びやすくなったのではないでしょうか。