ファーウェイのスマートグラス「HUAWEI Eyewear」が登場しました。オーディオに特化したスマートグラスで、スマートフォンと接続してメガネから音が流れる――という製品です。
機能的にはワイヤレスイヤホンでも十分なのですが、それとは異なる新たな体験を提供してくれます。ファーウェイ純正の「HUAWEI Eyewear」に加えて、メガネショップ「OWNDAYS」とのコラボレーションモデル「OWNDAYS × HUAWEI Eyewear」も用意されています。オーディオグラスとしての機能は同等ですが、メガネとしての機能に一部違いがあります。どちらも、両社の公式オンラインストア価格は32,780円です。今回はこちらのコラボモデルを紹介しましょう。
自然に装着できるメガネ型デバイス
メガネ型のデバイスはいくつかありますが、日常生活に溶け込むような製品はまだまだ多くありません。VRゴーグルのような密閉型はともかく、たとえばARグラスの「Nreal Air」は普通のメガネに近づいていますが、日常的に装着するとなると個人的にはちょっとためらいます。
それに対して、音声のみに対応したオーディオグラスは、比較的メガネに近しいデザインになってきています。これは、ARグラスが大型化する原因のひとつであるスクリーン部が存在しないから。音だけならBluetoothでスマートフォンなどと接続できるので、コンパクトに収められます。
こうした製品はすでにいくつか出回っており、音響メーカーのBose、周辺機器メーカーのAnkerなどがリリースしています。「日常遣い」という観点からすると、メガネに近いサイズとデザインであること、サングラスではなくレンズ交換ができること(度付きレンズが入ること)、という点が重要です。
特にデザイン面は、日本人にも似合うデザインであってほしいところ。今回取り上げるOWNDAYS × HUAWEI Eyewearは、見た目は普通のメガネでツルが少し太いくらい。日本人にとって違和感のないデザインです。
OWNDAYS × HUAWEI Eyewearは、ベースとなるファーウェイ版と比べて少しデザインが異なるほか、フロント部分のカラーでグレーも選べます。OWNDAYSモデルを購入したのは、フロントにマグネットで装着するサングラス「SNAP LENS」があったことが一番の理由。これで車の運転にも活用できます。
ファーウェイ版のHUAWEI Eyewearは、ラウンドフレームのボストン型フルリムタイプ、台形フレームのウェリントン型フルリムタイプおよびハーフリムタイプという合計3種類をラインナップ。OWNDAYS × HUAWEI Eyewearコラボモデルは、スクエア型とウェリントン型ともにフルリムタイプです。
コラボモデルには度付きレンズも入り、店頭で購入するときはその場で度付きレンズに変更できます。私自身はメガネが必要な視力ではないので、度のないブルーライトカットレンズをチョイスしました。ブルーライトカットレンズも数種類ありましたが、無料のものを選んでいます。
実際にかけてみると、普通のメガネを装着するのと同じ感覚です。比較対象がたまにかけるサングラスだけなのですが、特に違和感はありません。試しに一日中装着してみても問題なし。
「メガネをかけたまま出歩けるし、一日中かけたままにできる」という感覚だったので、購入前の目論見は間違っていなかったようです。メガネが似合っているかどうかはまた別の問題なので、そこは気にしないようにします。
まずはスマホとペアリング
OWNDAYS × HUAWEI Eyewearは、Bluetoothでスマートフォンやパソコンと接続して使います。最初のペアリングは、付属の充電ケーブルをつないでボタンを長押しするか、身につけた状態で左側のツル(OWNDAYSロゴのあたり)を指で上下に挟んで5秒間維持すると、ペアリングモードになります。
Bluetoothイヤホンをペアリングするのと変わらないので、このあたりは問題ないでしょう。「AI Life」アプリを使ってペアリングすることもでき、同時接続は2台までです。ここではAndroid用のAI Lifeアプリを使っています。
なお、2台の機器に同時接続したあとは、AI Lifeアプリでその2台の接続を解除しないと、ツルを長押ししてのペアリングはできないようです。ただしその状態でも、充電ケーブルに接続してボタンを長押しすればペアリング作業が行えます。
ペアリング自体は2台以上のデバイスを設定でき、AI Lifeアプリでは1ボタンで接続端末を切り替えられます。AI Lifeアプリからは、ペアリング以外にも便利な機能が利用できます。
AI Lifeアプリでは、装着状態を検出してオーディオを一時停止する設定や、ジェスチャー設定も可能。両方のツルにタッチセンサーを内蔵しており、ダブルタップ、長押し、スワイプという3種類のジェスチャーに対応します。ダブルタップは再生/一時停止、音声アシスタント起動、通話応答/終了のいずれか。長押しは着信拒否、スワイプは音量調節か曲送り/戻り、となります。
スワイプ動作は、OWNDAYSロゴのあるあたりから前後にスワイプするのですが、ゆっくりなぞるのではなく、すばやくスワイプするほうが反応しやすいようです。なぞる感じだとなかなか反応せず、最初は悩んだ部分です。
音楽だけでなくオンライン会議にも
というわけで、肝心のオーディオ機能。音質に関しては想像以上でした。雑踏や電車内だと低音が響きにくいのですが、自宅で音楽を聴いているぶんにはまったく問題なし。低音がもう少し強いとよかったのですが、下手なイヤホンよりは音質的には優れている印象です。オンライン会議でも相手の声がよく聞こえます。
仕組み的には、指向性のスピーカーで耳に向かって音を流しているのですが、ツルの反対側にもスピーカーがあり、逆位相の音波を使って周囲への音漏れを減らしています。スピーカー位置が耳に近いため、騒音下でなければ十分な音量です。
それでいて、外部への音漏れは想像以上にありません。音を大きくすればするだけ、耳に近づけば近づくだけ音漏れは大きくなりますが、「中程度の音量で1mも離れればほぼ聞こえない」というぐらいの感覚です。
満員電車の中で他人の耳が自分の耳に密着するほど近づく――という状況だと、聴いている音楽は知られてしまうでしょう。座席の隣に座っているくらいの距離でも、「少し音漏れしているかな?」と感じる人がいるかもしれません。
とはいえ、地下鉄の走行音に負けない音量にしようとすると、けっこう派手に音漏れします。正直なところ、このデバイスでそこまでして音をしっかり聞こうとするほうが間違い。素直にあきらめましょう。また、動画内の人物の声は、騒音下でも意外と聞き取れる場合もあります。背景音は難しいですが、映像の内容をざっくり追うなら可能でしょう。
音漏れを気にする場合は、スマホ側で音量ゲージの半分を上回らないようにして、少し音が小さいかなという程度が無難。もっとも、カフェのように色々な声や音があふれている場所では、音漏れに気付く人は少なそうです。
少し裏技的ですが、ヘッドホンを両手で押さえるDJのように、手のひらでツルと耳を覆うと、内部で音が反響するせいか音量が上がって聞こえます。音漏れ自体は特に変化しないようですが、片耳側だけでも手で覆えば騒音下でも聞き取りやすくなります。
また、マイクを内蔵しているのでハンズフリー通話にも使えますが、マイク性能はちょっと気になったところです。まれに発話の一音目を取りこぼすことがありました。はっきりと発声すると取りこぼしは少ないようですが、このあたりは少し慣れが必要かもしれません。
バッテリー持続時間にもう少し余裕があるとよかったのですが、使い方でカバーできるでしょう。丸一日装着して、たびたび音楽再生やオンライン会議で使用していると、夜にはバッテリー切れになります。
充電ケーブルの形状的に、首の後ろを通すようにして本体と接続すれば、充電しながら使用することは可能です。せっかくのワイヤレスが有線になってしまいますが、マグネットで簡単にケーブルが外れるため、ケーブル接続したまま移動して破損するという心配はなさそうです。
音をまとって世界にBGM
OWNDAYS × HUAWEI Eyewearはメガネ型ということで、最大のメリットは耳をふさがないことでしょう。オーバーイヤー型のヘッドホンは暑い時期にはツラいですし、インナーイヤー型のイヤホンは耳の穴に差し込むのが苦手です。
そんな私がほしかったのは、常に装着していて再生ボタンを押せばすぐに音が聞けるという環境。加えて、人に話しかけられたらすぐに反応できたらいいのに思っていました。こういう希望からすると、違和感なくずっと装着できていつでも音を聞けるHUAWEI Eyewearは、自分の使い方にピッタリとはまっています。
ソニーの「LinkBuds」をはじめ、耳の穴に入れないワイヤレスイヤホンも増えており、用途としては近しいことができそうです。ただ、常時装着した状態での自然さは、メガネ型デバイスが有利でしょう。
メガネ型デバイスは耳が完全にオープンなので、外界の音を阻害することもありません。常に音を流せるOWNDAYS × HUAWEI Eyewearは、まるで「音を着る」というイメージです。音量を下げれば、リアル世界に映画のBGMが流れているような感覚になります。自然な日常の中で音に触れられる新しい体験を実現できるデバイスです。