IHIは6月16日、2000kW級ガスタービンで液体アンモニア(NH3)のみを燃料とするCO2フリー発電を実現し、燃焼時に発生する亜酸化窒素(N2O)などのCO2以外の温室効果ガスも99%以上削減することに成功したことを発表した。

今回の研究開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「燃料アンモニアのサプライチェーン構築」(2021~2030年度予定、予算598億円)の支援を受けて実施されたものだ。

NH3は炭素(C)を含まないため、燃焼時にCO2を排出する心配がない。既存発電設備の改良や調整により、燃料として利用することが可能なほか、大気圧・室温環境では気体だが、-33℃で液化するほか、8.5気圧弱の圧力をかければ室温(20℃)でも液化させられる。大気圧・室温環境で同じように気体であるCO2フリー燃料の水素と比較した場合、液化して貯蔵や運搬するのに必要なエネルギーが少なくて済む点が期待されている。

しかし、同じアンモニアでも液体アンモニアの場合は、天然ガスやアンモニアガスよりも燃焼性が低く燃えにくいという課題がある。しかもCO2排出の心配はなくても、燃焼がうまくいかないと、CO2の約300倍という極めて強力な温室効果を持つN2Oを排出してしまう危険性があり、アンモニアの混焼率を高めるとその危険性が高まるため、安定的なアンモニア燃焼と排気ガス中のN2Oの排出抑制を実現することが重要となる。

IHIが取り組んでいる液体アンモニアを用いた燃焼方式は、ガスタービンの燃焼器内に液体アンモニアを直接噴霧するというもの。貯蔵タンクからガスタービンまでの供給システムの簡素化や制御性向上など、社会実装に向けた利点を有することがその理由である。