DELLの個人向けメインストリーム機Inspironが16:10画面と縦に広く!

筆者がノートパソコン環境を一変すべくAMD RyzenモデルのInspiron 14を(10万円のコロナ給付金で)買ったのは約2年前。この際、製品到着数日前に新型がアナウンスされて筆者を絶望のどん底に突き落とした。しかし時の流れは止まることなく、すでに2世代Inspironは進化した。

デル・テクノロジーズ(DELL)の個人向けノートパソコンのメインストリーム製品がInspironシリーズだ。Intel CPU版以外にAMD CPU版もあり、AMD版の方がリーズナブルな価格で提供されている。AMD Ryzen 5000シリーズCPUのパワーアップ版を使用したのが、今回紹介するInspiron 14/16 AMDとなる(今回レビューするのはオーソドックスなクラムシェル型で、2-in-1は別レビューで扱われている)。

  • 兄弟機のすみわけは? Zen 3世代Ryzen搭載のInspiron 5000(AMD) 14/16レビュー

    富山出張のついでに某ビジネスホテルでInspiron 14/16。並べてみると大きさの差は歴然としている

筆者的な今回のInspiron 14/16(AMD)の三大アピールポイントの一番目は「FullHD(1,920×1,080)ではなくWUXGA(1,920×1,200)である!」ところだ。筆者はWindows XP時代にUXGA(1,600×1,200)のノートパソコンを愛用していており、自宅環境モニターもいまだに(10年以上前のモデルとなる)UXGA+WUXGA構成で利用している。なぜかというと「縦が長いのでWebブラウザもテキストエディタも上下に広く使えて便利」だからだ。

4:3液晶時代にあった縦1,200製品は一時期駆逐された。その理由は液晶TVが強かったため。ハイビジョン放送が16:9というアスペクト比を基本としている以上、液晶TVをリーズナブルに製造するために16:9製品を前提とした液晶パネル量産製造ラインになったためだ。

一方、最近のスマートフォンの液晶サイズは16:9なんてどこ吹く風と多様化しており、パソコンディスプレイも曲面ウルトラワイドが出るご時世。ノートパソコンでもマイクロソフトのSurfaceは3:2アスペクト比のパネルを採用しており、DELLもディスプレイ製品でもワイド製品をすでに発売しており、ノートパソコンもハイエンド機種(XPS)から16:10のWUXGAやUHD+(3,840×2,400)のディスプレイを使用しつつある。液晶パネルメーカーも16:9だけ製造していればよいという時代が過ぎ去ったのだろう。

本製品の発表会時に「これまでハイエンド機種に採用されていたWUXGA製品が(メインストリーム製品で)Inspironにも採用されたのは今後もこのような流れになるのか?」と比較的直球の質問をぶつけてみたところ「そのような決定は現時点ではないが、今回(プレミアム製品のXPSに加えて)メインストリーム製品での採用が行われた事で16:10液晶製品の出荷数は大きく増えることになる」と回答された。筆者的には「とうとう来たなこの時が!」と感動している。

従来の16:9の14インチから16:10の14インチに変わったということで、本体のサイズも変化した。筆者の所有するRyzen 3000シリーズ時代のInsripon14(5485)はオーソドックスなヒンジを備えた「3辺狭額縁」だった。その後のRyzen 4000を採用したInspiron 14(5405)はチルトアップヒンジと「3辺狭額縁(ただし、4辺目も大幅に狭くなった)」で、キーボード面も全体に奥に配置されて、タッチパッドが大型化されていた。

しかし、今回のInspiron 14/16(AMD)は液晶の縦が大きくなった。本体サイズ的には元に戻った感じで手元の「某13インチ製品用」パソコンケースに5425が程よく収まる。また、特に14インチノートパソコンはタッチパッドの大型化に各社苦労しており、液晶の縦方向が大きくなったことで下ベゼルを大きくすることなく奥行きを自然に大きくでき、タッチパッドの大型化にも寄与している。

  • 筆者手持ちの「3世代前のInspiron 14 AMD(5485)」の場合、「某13インチ用ケース」に入れるのは本当にギリギリでスレを気にしなければいけないほど

  • 現在のInspiron 14 AMD(5425)の場合は、奥行き幅共にジャストフィットと言いたくなるほどの寸法感。逆に言うと2世代前の製品よりも奥行きが増えている

  • Inspiron 14のタッチパッド。2つ前、3つ前の製品と比較すると、パームレスト部の素材が非常に薄くなっているのがわかる

  • 各社ともにタッチパッドの大型化が進んでおり、Inspiron 14/16も例外ではなく大型化

アピールポイントの二番目はCPUアーキテクチャがZen 3になった事。AMDは2017年に発表したZenアーキテクチャ発表後、順調に市場地位を向上させている。Zen 3アーキテクチャは前世代のZen 2比で19% IPC(Instructions Per Cycle:サイクルあたりの命令実行数)を向上させた。

一つ前のInspironもAMD Ryzen 5000シリーズを使用していたが、搭載CPUがRyzen 5-5500U/7-5700UとZen 2アーキテクチャの「Lucienne」だった。今回はRyzen 5-5625U/7-5825UとZen 3アーキテクチャの「Cezanne」でプロセッサが進化しているのが特徴だ。一方GPUの方はRadeon Graphicsのままだ(次のRyzen 6000シリーズでRDNA2に進化する予定)。IPCが向上したことで同じ性能をより低いクロックxコア数で実現できる。当然ながらクロックを落としたほうが消費電力も減る。

  • 今回のInspiron 14/16(AMD)で選択できるCPUはAMD Ryzen 5 5625UまたはRyzen 7 5825U。どちらも今年1月に発表された追加SKUとなる最新モデル。一つ前のInspiron 14/15(AMD)と異なりCPUのアーキテクチャが進歩した

アピールポイントの最後はテンキーレスのInspiron 16が登場した事。筆者的にはキーボードと画面に正対するポジションがよいと考えている。しかし大抵の15インチ以上のノートパソコンにはテンキーが付いており、ディスプレイの中央とキーボードの手の中央が一致しない。

「ノートパソコンにテンキーはイラナイ(必要なら外付けで対処)」というのが筆者の考えで、それに重いが加わると15インチ以上の大型ノートパソコンに購入意欲がわかなかった。しかし、今回の5625はこのクラスの製品としては珍しくテンキーレスとなっている。左右の空きスペースはスピーカーグリルとなっており、音的にも少々期待が持てる。

  • Inspiron 16(AMD)。この手のノートパソコンではテンキーが付いている製品が普通ゆえにテンキーレスモデルは筆者的にはうれしい

今回のモデルチェンジでInspironシリーズラインナップに変化が起きた。従来はInspiron 15が兄弟機だったがインチアップしてInspiron 16となった。14インチと15インチだと選択選択が微妙だったと思うが、14インチと16インチだとすみわけができるだろう(元々13インチが狭額縁化で14インチ製品になったので、15インチ製品が16インチにアップするのは自然だ)。

この手のレビューでは一機種のみとなるが、今回は同時レビューと相成った。以下モデルナンバーを使いInspiron 14(AMD)を5425、Inspiron 16(AMD)を5625と略記する。

到着した評価機はプラチナシルバーカラー(他にペプルグリーンがある)で5425はCPUがAMD Ryzen 5 5625U(6コア/12スレッド)、メインメモリ8GB、ストレージ SSD 256GB。5625はCPUがAMD Ryzen 7 5825U(8コア/16スレッド)、メインメモリ16GB、ストレージ SSD 512GBの構成だった。Webサイトで5425はプレミアム、5625はプラチナと記載されているモデルだと思えばいいだろう(評価機にはOffice H&Bはプレインストールされていないが、注文時に追加可能)。ちなみにWi-Fi6対応だ。

これは現在のInsripon 14/16の注文構成とすると非常に都合がよく、5425/5625共にこの両方の構成で注文できる(Ryzen 7の場合はメインメモリを8GBにダウングレード可能)。ちなみに5425/5625共にBIOSコードが同じで、その意味でも兄弟製品だ。

  • 今回の検証機Inspiron 14(AMD)はAMD Ryzen 5625U搭載でメモリは8GBシングルチャネル。写真整理時に気づいたがスロット1が空きだった

  • 今回の検証機Inspiron 16(AMD)はAMD Ryzen 5825U搭載でメモリは16GBデュアルチャネルだ。Inspiron 14の16GBモデル、Inspiron 16の8GBモデルも購入可能