バルミューダは5月13日、2022年12月期 第1四半期決算説明会をオンラインで実施しました。売上高は40億9,200万円(対前年比10.5%増)と堅調に推移したものの、円安やサプライチェーンの混乱で製品原価率が上昇。営業利益は大きく圧迫を受けて、1億7,200円(同62.0%減)という厳しい状況となりました。

  • 調理家電関連で業績に大きく貢献したコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」

引き続き予断を許さない状況ながら、特に2021年から取り組みを始めたTechnologiesカテゴリへの挑戦については、バルミューダ代表取締役社長の寺尾玄氏は「フルパワーでやっていく」と決意の強さを伺わせました(現在のところ、BALMUDA Technologiesで展開する 製品はスマートフォン「BALMUDA Phone」のみ)。

  • 「引き続き厳しい状況」としながらも「攻めの姿勢を忘れず、フルパワーでやっていく」と語る寺尾玄社長

売り上げは堅調も、原価や輸送費、販管費が利益を圧迫

バルミューダの2022年12月期決算(連結・サマリー)は、2022年1~3月の売上高が40.92億円(対前年比+10.5%)、営業利益が1.72億円(同▲60.0%)、売上原価率は63.5%(同-5.8p)、販管費率は32.3%(同-2.2p)、営業利益率が4.2%(同▲8.1p)となりました。売上原価と販管費が利益を圧迫している構図です。通期見しに変更はありません。

  • 2022年12月期1-3月の主要指標の前年比較。売上高は伸びましたが、営業利益は大きく落ちました

業績サマリーを詳しく見ると、空調関連は7.4億円と対前年で6,000万円伸びています。これはおもに欧米市場での伸びが貢献したもの。

キッチン関連は伸びが大きく、27.32億円で前年の21.67億円から5.65億円も伸長しています。国内だけでなく、韓国、北米などでも好調と言って良い推移です。

  • 空調関連とキッチン関連の業績サマリー

携帯端末関連は昨年(2021年)のこの時期はなかった事業であり、1.77億円の純増。

一方、クリーナーや照明のといった「その他」が、前年の8.54億円から4.41億円へと大きく落ちています。これは2020年末に発売したクリーナーが2021年の1~3月の売上を引き上げていたものの、2021年は後継機やこのジャンルで他製品の投入がなかったための落ち込みです。

特に韓国での落ち込みが大きく見えますが、これも2021年はドンと納品できて伸びた分。今年(2022年)は納品できていないためと説明しています。

  • 携帯端末関連とその他の業績サマリー

続いて販管費の推移を見てみます。先ほど売上原価率や販管費率の増加が利益を圧迫していると書きましたが、部品不足や物流の停滞、輸送費の高騰はワールドワイドの現象であり、昨今の円安基調もここに影響します。

ある程度は織り込んで計画を立てているとはいえ、向かい風であることは間違いありません。バルミューダは、製品設計の微調整や変更などを含めて、部材の調達難への対応を図っています。また人件費については、BALMUDA Technologiesでエンジニアを採用したことによる増加であり、寺尾氏は「健全な投資」と表現しました。

  • おもな販管費推移。人件費が対前年で約1億円増えています

  • バルミューダの人員数推移。この一年でエンジニアが25人増え、全体の構成比も上げていることがわかります

次の4-6月期(2Q)では、重点ポイントを「粗利率の改善」「Appliance商品の拡充」「Technologiesカテゴリへの挑戦」の3つに絞って事業を進めていくとしています。

粗利率の改善に向けては、2022年4月上旬から家電製品の一部で販売価格を値上げしています。これについて、寺尾社長は「製品群を一気に上げるのは大変心配していましたが、3月の駆け込み需要もそれほどなく、4月の出荷台数減も明らかなものとしては認知していません」と述べ、大きな影響はなかったと言えそうです。

販売価格の引き上げは、それまでその価格で売れていた実績を変えることになるので、事業者からすれば非常に怖く、「できれば今度限りとして、今後は数量を伸ばすほうでがんばりたい」(寺尾社長)とします。そのうえで「今後も原価率低減のために努力していく」(寺尾社長)と述べました。

Appliance製品の拡充は、5月16日週に新製品の発表を控えており、そちらで詳しく語りたいとのことでした。

Technologiesカテゴリへの挑戦については、「正直、厳しいスタートを切った」とし、BALMUDA Phoneの値下げやSIMフリー対応モデルの追加によって、ユーザーはだいぶ増えてきたととらえているそうです。「ソフトウェアのアップデートや改善、専用アクセサリーを継続的に出し、ユーザーに体験価値を提供していく」と寺尾社長。これまで手がけてきた家電製品と異なり、BALMUDA Phoneは発売後もソフトウェアのアップデートで体験価値を向上していける点が非常に面白いと表現しました。

  • FY2022 2Qの重点ポイントは大きく3つ

北米市場での販売活動についても簡単に触れました。継続的な広告宣伝活動によって、現地メディアの記事やSNS投稿が増加して、売上高は1.6億円と対前年比で70.1%の伸びを示しています。北米市場はまだ投入していない製品も多く、今後はさまざまな製品をリリースすることで売上も拡大していけるとの考えです。

  • 北米市場での認知が向上してきています

逆風の中、投資は継続して挑戦を忘れず

1-3月期(1Q)を振り返ると、「売上は堅調、原価は悪い、投資は引き続き」と要約できるでしょう。円安や物流の停滞など、市場環境が悪化する中、売上は堅持しつつ、投資は止めず、新製品を出し続けるという姿勢は、なかなか難しい舵取りが必要です。それだけに、今回の成績は前向きに評価して良いように感じます。

とはいえ、数字は数字。営業利益の低下は、企業が取れる選択肢を確実に狭めていきます。ここからどう巻き返しを図るのか、バルミューダの次の一手に期待したいところです。新製品のリリースも控えており、テコ入れとなるかどうか注目です。