シャープが発表したハイエンドスマートフォン「AQUOS R7」。ハイスペックだけでなく、独ライカカメラと協業したカメラ機能がさらに強化され、懸案だったAF性能を大幅に向上させました。今回は、そのAQUOS R7の実機に触れる機会を得られたので、インプレッションをご紹介します。
なお、今回触ることができた機材は、注目のカメラ機能が「シャッターが押せない状態」。AFまでは確認できるものの、実際の撮影ができない状態でした。それでもある程度、その性能のチェックはできました。
位相差AF対応の新しい1インチセンサーを搭載
AQUOS R7は、高級コンパクトデジカメと同等の1インチという大型センサーを搭載したスマートフォンです。1インチセンサーは前モデルのAQUOS R6でも搭載されていましたが、そのセンサーはソニーのデジタルカメラ「RX100」シリーズに搭載されていた有効画素数2,020万画素センサーをそのまま採用したものでした。
センサーの世代としては恐らく8年近く前のカメラに採用されていたものと同等で、昨今は一般的になっている像面位相差AFのような仕組みは搭載されていませんでした。そのため、AFはコントラストAFのみで、ほかのスマホカメラに比べてピント合わせに時間が掛かるという欠点がありました。
今回、新たに採用されたのは同じ1インチセンサーながら、「全画素Octa PD AF」を搭載しています。少しややこしいのですが、センサー自体は1つの画素に2つの位相差センサーを備えています。AQUOS R7では、この画素4つを組み合せて1画素として扱うピクセルビニングによってピクセルピッチを大型化していますが、この時、ビニングした1画素内に8つの位相差センサーが備わることになるため、「Octa PD AF」と名付けられています。
センサーの有効画素数は4,720万画素ですが、通常撮影時はピクセルビニングによって1,180万画素で記録されます。画素数は減少しますが、その結果、ピクセルピッチは3.2μmを実現しました。AQUOS R6と比べても1.8倍となり、ダイナミックレンジの向上、ノイズの低減が期待できます。
レンズはライカとの協業によって開発された「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」。レンズ保護のためにレンズ前面に配置されたカバーのコーティングを変更してナノオーダーの低反射処理をしたことで、光の反射を60%削減したと言います。レンズ自体は、微調整は行っているものの基本的にはR6と同じものを搭載しているそうです。
レンズユニットも変更がなく、レンズを駆動させるアクチュエーターも同じもの。そのため、AQUOS R6に対するハードウェアレベルでのAF性能の違いは、ほぼ全画素Octa PD AFの性能差ということになります。位相差AFセンサーの採用によって、AQUOS R6比では約2倍という高速化を実現したそうです。
AFの動作は確実にスピードアップ。コンティニュアスAFも使える!
実際にAFの動作を見てみると、人の顔を検出した瞬間にピント合わせが行われ、スッとピントが合います。「モグラ叩き」のように人の顔が現れるデモでは、即座にAIが人物を検出し、その位置にピントが瞬間的に合っていました。現時点では撮影まではできなかったため、実際にピント精度の高さは確認できませんでしたが、少なくともピントが合ったという表示は即座に出ていました。
位相差AFは、その構造上ピント位置まで一直線にレンズを駆動させるため、動画撮影にも適しています。そのため、動画撮影時に被写体にピントを合わせ続けるコンティニュアスAFも実用的に動作していました。当然、コンティニュアスAFでピント位置を探すためにレンズが前後に動くウォブリングも発生しません。
測距用カメラ搭載とAI活用で、ポートレートモードの画質が向上
ちなみに、レンズの焦点距離は19mm(35mm判換算)ですが、カメラのUI上は周辺をわずかにクロップして画素補完をした24mmが「1倍」として設定されています。これはAQUOS R6でも同様の仕組みで、そこからワイド側に「0.7倍」にしたときに19mmの画角になります。
レンズは1つのため、そこからはデジタルズームになりますが、面白いのは倍率が「2.0倍」になった時点で、自動的にピクセルビニングを解除(リモザイク)して、47MPのセンサーの中央11.8MP分を使用して撮影するところ。この倍率に合わせてクロップするとちょうど2倍の画角になるためで、単純なクロップになるのでデジタルズームより画質が向上すると考えられます。その代わり、リモザイクが行われるため、ピクセルピッチはビニング時の3.2μmから1.6μmに低下することから、多少の画質影響はありそうです。
2.0倍以降は、中央11.8MP分のセンサーを使ってデジタルズームをするそうです。UI的には最大6倍までのデジタルズームをサポートします。中央だけを使うのは、センサーの一部を使うため、消費電力的に有利になるからとのことでした。
なお、AQUOS R7で通常の撮影に使うカメラは1つだけですが、今回新たに190万画素のカメラも搭載しています。これは測距用センサーとして使われており、ポートレートモードで被写体との距離を測定して背景ボケをより自然に表現するために動作します。従来は、コントラストAFの補助としてToFセンサーを使っていましたが、AFは位相差AFに任せ、それより高精細なセンサーで髪の毛などの微細な被写体の距離も測定するために、測距用カメラを採用したそうです。
測距用カメラに加え、AIによる演算処理も刷新しており、同社はAQUOS R7のポートレートモードを「AQUOS史上最高のポートレートモード」とアピールしています。髪の毛、まゆ毛、目、肌、歯、それぞれのトーンを分離して演算処理することで、より自然な処理をしてくれるそうです。
AIの活用も広がっており、AQUOS R6にはなかったAIによる被写体検出によって被写体の顔や瞳を検出してピント合わせをしたり、動物を検出してピント合わせをしたりするなどの機能も搭載しています。
今回、シャッターを切れなかったので実際の撮影動作は確認できませんでした。前モデルではシャッターを押してから実際に撮影されるまでのシャッタータイムラグも長かったのですが、AQUOS R7では、バックグラウンドで常に画像を記録し続け、シャッターボタンを押した瞬間の画像を最終的に保存する、という手法によってラグを抑えているそうです。そのため、連続でシャッターを押してもテンポ良くシャッターが切れる、とのことでした。
今回は実際の動作が確認できなかったので、このあたりは実機で是非とも検証したいと思います。
今回もライカによる画質調整が行われており、カメラの性能が大幅に向上したことでさらに完成度が増したようです。発売は7月以降ということで、実際の発売を期待して待ちたいところです。