また、rs671多型のAアレルと飲酒が組み合わさることにより、リスクがより高くなる効果(遺伝子・環境要因交互作用)の評価では、これまでの先行研究と同様に、今回の研究でも有意な交互作用は認められなかったとのことで、これは飲酒の膵臓がん発がんに対する効果はrs671多型のAアレル保有者と非保有者との間で変わらないことを示すものであり、rs671多型のAアレル保有者の飲酒によるアセトアルデヒド曝露量増加は膵臓がんの発がんに関与しないということを意味するという。そのため、飲酒と膵臓がんとの関連には、酸化ストレスや飲酒による膵炎といった別の要因が考えられ、これは、ほかのがんで明らかになっているような、アルコール由来のアセトアルデヒドによるDNA損傷ではないことを示唆するものであるとする。

そこでrs671多型のAアレルの、ALDH2が本来の働きをしないことにより発がんリスクを上昇させる効果(直接効果)と、飲酒行動を抑制し発がんリスクを低下させる効果(間接効果)の相反する2つの効果を、媒介分析という疫学的手法を用いて区別して評価することを試みたところ、rs671多型のAアレルにおいて有意差の認められなかった総合効果は、有意な発がん効果と有意な保護的効果に分けられることが明らかになったという。

  • 膵臓がん

    rs671多型と飲酒行動と膵臓がんの因果関係図 (出所:プレスリリースPDF)

飲酒によるアセトアルデヒド曝露量の増加が、膵臓がんの発がんリスクに関与しない可能性があるにも関わらず、ALDH2遺伝子のrs671多型のAアレル保有者に直接的な発がん効果が高いという結果が出たことは、アルコール由来のアセトアルデヒド以外のALDH2が代謝する物質が膵臓がん発生に関与する可能性が示唆されており、今後そのような物質の特定が重要であると考えられると研究チームでは説明しているほか、rs671多型のAアレル保有者が飲酒行動の抑制によって膵臓がんの発がんに対して保護的効果を併せ持つことが明らかになった結果から、rs671多型のAアレル非保有者についても、飲酒を控えることで膵臓がんリスクを低下させうることが示されているとしている。

  • 膵臓がん

    rs671アレルの総合効果・直接効果・間接効果 (出所:プレスリリースPDF)

なお、今後については、今回の研究成果をもとに、膵臓がん発がんメカニズムのさらなる解明や、日本における遺伝的背景を考慮した膵臓がんの個別化予防促進を目指すとしている。