そこで研究チームは今回、市販の安価な3Dプリンタを使用し、イオンが高速で移動できる経路を人工的に設計した多重細孔炭素電極を作製し、スーパーキャパシタ電極の厚膜化を試みることにしたという。
具体的には、複雑な形状に設計した樹脂をステレオリソグラフィ(光造形)型3Dプリンタを用いて印刷し、さらに樹脂を焼成。その上で活性化処理を行うことで、直径150μmの規則的マクロ孔と、直径2~3nmのナノ孔の多重細孔構造を持つ炭素材料の作製に成功。これにより、従来の蓄電デバイスに対して10倍以上の厚みを有する電極でも、高速なイオン移動が可能となったとした。
また、炭素表面をマンガン酸化物の層で覆った材料を作製することにも成功。この多重細孔マンガン酸化物電極と多重細孔炭素電極と組み合わせることで、電極面積あたりで世界最大級のエネルギー密度と出力密度を併せ持つスーパーキャパシタの作製に成功したという。
なお、今回の研究で電極面積あたり世界最大級のエネルギー密度・出力密度が達成されたとするが、研究チームでは、電極の三次元構造をより精密に設計することにより、さらなるエネルギー密度・出力密度の向上が見込めるとしており、3Dプリンタ技術(解像度)が進めばスーパーキャパシタの性能向上も期待されるとしている。
また、今回作製された電極材料はミリメートルサイズだが、より大きなスケールでの3Dプリントプロセスを開発できれば大規模エネルギー貯蔵デバイスへの応用にも期待でき、今回の研究成果を広く社会に実装することが可能になるともしている。